僕は悪くない。
ネマの頭をくしゃくしゃしながら、クライアントであるロコロックルさんにも報告する。報告は大事だよ。
「お疲れ様です。賊の処理、有難う御座いました」
「いえ、お仕事ですから」
お金は貰ってるからね。あと噂のクレイジーが見れたので、ちょっとお得かなって思ってたりする。殺したけど。
「…………本当に、君を紹介してくれたサンジェルマンには感謝だ。中には殺しを躊躇ってゴタつく傭兵も、居ないじゃないので」
まぁ、それはね?
普段は狩りで稼げるし。ちょっと何時もと違う事がしたくて護衛受けて、いざって時にブルっちゃうのは仕方ないと思うよ。
むしろ、処女を切った時にもケロッとしてた僕がオカシイのだ。なんならトドメ刺したいって言ってルベラお兄さんにオネダリしたからね。
「…………しかし、やはり君の様な子供に戦わせて、殺しまでさせて、良い大人の自分はこんなに設備の良い場所でぬくぬくしてるのは、罪悪感と忌避感が凄まじいですね。倫理が壊れそうだ」
「あはは、まぁ僕はその倫理がブッ壊れてる場所の筆頭、スラムで生きてましたからね。例外って事で一つ」
「……対応も大人だね。君の様な才能ある素晴らしい人材がスラムに溺れて居たなんて、帝国は何をしてるのか」
「むしろ、僕の能力の六割くらいはスラムで磨かれたんですけどね。操縦は前からですけど、それ以外はスラムで必死でしたから。じゃないと死んじゃう場所なので」
「ああ、喋る程に
「いえ、僕は本当に気にしてないので。…………本当に、僕はシリアスに出会えた時点で報われたんですよ。残りの人生が全部幸せで確定してます。十歳でコレですよ? むしろ人よりずっと幸せな人生だと、今は確信してるんですから。一○○歳まで生きるとして、後九○年はずっとずっと幸福が続くんですよ? とんでもない幸運ですってば」
「君は、強過ぎる。その精神が硬過ぎて、
大丈夫。割れる時はシリアスと一緒だから、その時さえ僕は幸せでしかない。死ぬ時まで幸せが約束されてるなんて、僕はやっぱり世界一幸運な
「それより、お昼はどうします? ちょっとだけ培養肉と天然野菜持って来てるので、何か作りましょうか? 無難にマテリアルをプリントしても良いですけど」
「君は料理まで出来るのかい? 周りの大人は本当に何をやってたんだっ? こんな多芸で有能な人材、中々居ないだろうっ」
「あは、料理は最近覚えてるんですけどね。おじさんに習いました。知ってます? おじさんって凄い料理が上手なんですよ」
「さ、サンジェルマンが? …………えっ、サンジェルマンがッ!? と、とてもそうは見えないがっ?」
うん。それには同意する。
おじさんって、見た目だけなら『食い専』だよね。でも作る側なんだよ。
ちなみに、こう言った食事については、ロコロックルさんが滞在費を片道で五○○○シギル払う事に成ってる。
ぶっちゃけこのレベルの居住区画に使うエネルギー量と消費するマテリアル代を考慮すると、ギリギリ、若干の赤だ。しかし依頼料は弾んでもらってるので、まぁ良いかって事になった。全体的には大幅な黒字だし。
「じゃぁ、ランチは無難にハンバーグセットのプリントで。ロコロックルさんはハンバーグの種類と、パンとライス、どっちにします?」
「私はパンかな。ハンバーグはデミグラスで」
「…………ねま、らいす。きのこそーすが、よい」
「了解。一分ほどお待ち下さい」
フードプリンター起動。プリセットからハンバーグセットの一覧表示。
ロコロックルさんはデミグラスにパン。ネマはキノコのソース。…………いや多いんだが?
キノコソースの種類、山程有るんだが? まぁキノコ系ランダムで良いでしょ。詳細言わないネマが悪い。
僕はそうだな…………。このワフウオロシソースって言うのにしよう。美味しそうだ。
しかし、ワフウってなんだろう?
「はいどうぞ」
「ありがとう。…………いやぁ、本当にこのダングは設備が良いね。…………本当に良い。此処に住みたい。自分の家に帰ったら落差に絶望しそうだ」
「あははははっ」
それは精々、今回の行商で大きく稼いで家の設備を更新して下さいな。
みんなでハンバーグを食べて、一休み。その間は他愛ない話しをするけど、この二日はずっとロコロックルさんが感心し切りだ。
「しかし、ラディア君もそうだが、ネマちゃんも凄いね。こんな大きな機体を動かして、私の平均的な稼ぎよりずっと稼いでるなんて。私なんて、こんな大きな機体を動かせって言われても、恐ろしくてとてもじゃ無いが無理だよ」
「………………えっ、へん」
「ラディア君も稼いだお金は殆ど自己投資。そしてより稼いで、また自己投資。理想的な傭兵だ。そのお陰でこの暮らしと思えば、羨むのも馬鹿らしくなる程立派だ。そこらの豪遊系傭兵にも見せてやりたいね」
「いやいや、豪遊さん達も都市の経済をブン回してくれてるんですから、馬鹿にしたモンじゃないですよ。彼らも立派な都市の歯車ですからね。ロコロックルさんだって、売った香辛料とかの諸々、消費する大半は傭兵ですよ? 彼らが豪遊しなくなったら、ロコロックルさんも稼ぎが減ります」
「………………まったくその通りだね。うん、考えればそうなんだが、やっぱり心情的にね? 君がどれだけ立派でも、やはり子供なのにと言う意識が抜けないんだよ。こんなに立派な十歳が居るのに、お前ら大人は何やってんだって言いたくなってしまう」
「光栄な話ですけどね。でも、豪遊さん達が豪遊してる間に僕は、美味しい仕事をちょちょっと選り抜けると思えば、悪い事も無いですよ」
「…………でも、らでぃあ、りっぱ」
「〝さん〟を付けろよデコスケ野郎。褒めても食後のゴマダンゴを一つしかあげないぞ?」
「……………………えへっ、おぃひぃ」
「加えて、ネマちゃんの面倒も見てるんだろう? …………はぁ、立派だ。私は色々あって独身だが、もし娘が居たら君に貰って欲しいと願っただろうね」
それは困る。僕にはシリアスが居るので、断るしか無い案件を持って来られても嬉しくないのだ。
ポロンちゃんみたいなペット枠なら考えるんだけどなぁ。シリアスと一緒に育てるの、きっと楽しいぞ。
………………僕、割と本気でポロンちゃん飼ったら楽しそうって思ってるのヤバいな? 最初はちょっと冗談だったけど、最近マジで楽しいんじゃねって思ってる。
はぁーヤバい。ポロンちゃんの
うん、ヤバいのは僕じゃなくて限りなくペットっぽいポロンちゃんだね。僕は悪くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます