スッキリ。



「や、やったぞ! 言ったぞ! さぁ、俺にお前らの新しいシノギを教えろ!」


 プライドを捨てたガボットが得意げな顔で僕に言う。

 

「うん、良いよ。約束だもんね。誰でも出来るシノギだけど、言った通りに『例外』は始められないけど、ちゃんと教えてあげる」


 そして僕は、端末でライセンスを表示して見せてあげた。

 

 一口納税を使って現在、僕の傭兵ランクは二だ。これでも駆け出し扱いだけど、最低でもランクを一つは上げれるくらいに仕事をしてるって傭兵ギルドの保証その物でもある。


 だからランク一と比べたら信用度が雲泥の差だ。孤児に比べたら超スーパーエリートの証である。


「………………は?」


 ニマニマわらう僕の言葉とライセンス表示が理解出来なかったガボットが、そのままフリーズした。


 しかし僕は優しい傭兵なので、ちゃんと丁寧に教えてあげる。


「僕、傭兵なの。乗機持ちの機兵乗りライダーで、戦闘機免許持ちのランク二。これが僕の仕事シノギだよ」

 

「…………いや、は? えっ、はぁ?」


 信じられないガボット君が、間抜け面で僕の端末と僕の顔を交互に見る。


「ちなみに、俺達はまだ免許持ってないが、ラディアのお情けでデザートシザーリアを十三機貰った。あとは免許さえ手に入れたら機兵乗りライダーだ」

 

「·…………嘘だろ?」

 

「マジなんだよなぁ」


 此処は完全に歩行者用のストリートなので、シリアスは来れない。でもシリアスが居る場所まで移動したら、簡単に証明出来る。


「いや、は? だって、って…………」

 

って、僕は言ったよ? 基本的に誰でも傭兵に成れるもん。傭兵は、自分の名前と情報端末さえ有れば、とりあえず乗機が無くても徒歩傭兵ウォーカーとして登録出来るんだよ。それに徒歩傭兵ウォーカーでも大きな傭兵団にでも拾われたりすれば、乗機が貰えたりするし。現代で端末持って無くて傭兵登録出来ない人間なんて、孤児くらいだろ? ほら、立派な『例外』じゃん。僕は嘘なんて言ってないよ。『基本的には誰でも出来る』もん」


 ベロベロバーって最後に一煽り。ガボット君は顔を真っ青にしたり、真っ赤にしたり、怒ったり悲しんだりで忙しい。

 

 多分、悲しいのは無駄情報の為に生涯素人童貞宣言した事だろうか。


「つまり誰でも出来るけど端末を買えない例外キミには絶対に無理ィィイィイイイ! ベロベロバァァァアアアッッ!」

 

「煽りよる煽りよる」

 

「ぐっ、がぁぁっ、ぐぞがぁぁあっ」

 

「ブチ切れじゃんすか。顔色ヤベェぞガボット」


 へーいガボット君! 顔色が紫色だぞッ!? どうしたんだい? 死ぬのかい!?


「はぁ、スッキリした。本当は最後に札束ビンタまでしたいんだけど、まぁ長年の恨み辛みは、コレで水に流そうか。もう僕はシリアスのお陰で報われたしね。…………あ、なんなら何か奢ってあげようか? コーラ飲む? 串焼きでも良いよ。その辺の露店で買ってあげる」

 

「サッパリか」

 

「違うよタクト。言ってるじゃん? サッパリじゃ無くてスッキリだよ」


 僕の四年間分の怨みだけど、まぁ言うてコイツ、僕をグループから弾いただけだからね。何かを不当に奪われた訳でも無いし。

 

 急に全面的に許し始めた僕に、顔色紫ボーイだったガボットがポカーンとしてる。状況に着いて来れないらしい。


「ん? 要らないの? コレまでの事を水に流すけど、依然として君と僕は仲良く無いし、奢ってあげるなんて今日くらいだよ?」

 

「…………え、あっ、じゃぁ、要る」

 

「急展開過ぎてラディアの情緒が不安定なのかと思うよな。でもコイツ、最近これがデフォルトなんだよ」


 いえーい! ランダムメンタルデフォルト男でーす!


「今日はお世話に成った傭兵団を良い感じにお見送りして、かなり機嫌が良いから奢ってあげるね。何なら皆でその辺どっか入る? あ、ハンガーミート行く!? あそこならガボットの服でも文句言われないよ!」

 

「あ、良いなハンガーミート。肉が食いてぇ。前回は全然食えなかったし、リベンジしてぇ」

 

「…………ねま、おにく、すき」


 露店でちょっと摘んじゃったけど、やっと普通に食事が出来る様になって来た僕らの胃袋は食べ盛りだ! 多分!

 

 未だに意味が分からないって混乱してるガボットをタクトに任せて、僕はネマを連れてシリアスの元に。

 

 タクト達はグループ全員乗れるレンタビークルなので、一人くらい増えても問題無い。と言うか奢るって言ったけど、別に親しくも無い奴をシリアスに乗せたくない。加えてあの格好だし。


「…………らでぃあ、らでぃあ、おにく?」

 

「ラディアはお肉じゃありません! そして〝さん〟を付けろよデコスケ野郎。まぁ、でも、うん。お肉だよ。食べ放題だ。好きなだけ食べて良いよ」

 

「……ねま、らでぃあすき」

 

「現金な好意だぜ」


 駐機場に戻って来てシリアスに機乗。タラップを歩いてコックピットへ。

 

 シリアスに「お財布買ったー!」とお喋りしながら起動シークエンスを終わらせて、さっさと出発。

 

 タクトは一回行った事あるし、ハンガーミートの座標は知ってる。別々に行っても問題無い。

 

 目的地は最奥西区だから、このまま真っ直ぐメインストリートを西に向かって突っ切るだけだ。


『タクトから通信要求』

 

「うん? どうしたんだろ。ガボットが暴れでもしたのかな?」


 ならぶっ飛ばして大人しくすれば良いのに。取り敢えず通信受諾。


『おうラディア。ハンガーミートってビークルで入れんの?』

 

「……………………あっ」


 ダメじゃない? 危ないから一度ハンガーに入ったら生身で出て来るなってお店なのに、踏み潰されそうなビークルで入店とか無理じゃない?


「待ってて、確認してみる」

 

『おう、待ってるわ』


 ハンガーミートのサイトからお店に通信。確認。タクトに通信要求。


『どうだった?』

 

「ダメだった。ダング出すわ」

 

『よろしくぅ』


 ちくしょう! 僕はなるべくシリアス以外に乗りたく無いのに!

 

 だからネマに免許取らせようとしてるんだぞ! タクトグループにも、ネマも、まだ輸送機免許すら取った人が居ないので、必然的にダングを持って来るのは僕になる。

 

 もう納品はされてるので、新サンジェルマンから乗って来るだけだ。中にシリアスを格納してから来れば、ちゃんとシリアスと一緒に来れるし、一緒に食事出来る。


「ネマ。文句を言う訳じゃ無いんだけど、なるべく早く免許を取ろうね。協力するから」

 

「………………がん、ばぅ。できたら、ほめて?」

 

「〝下さい〟を付けろよデコスケ野郎。好きなだけ頭をナデナデしてあげるさ」

 

「…………えへっ。やく、そく」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る