忘れてた。


 

 なるほど。ふむ、なるほどね?

 

 つまり、こう言う事か。例えばお金が無くて炸薬砲で妥協したウェポンテールのテールウェポンをプラズマ砲に変えたり、背中にコンシールド加工をしたり、データの中でのみ、色々と訳か。


『しかも、ラディアは対人戦に興味があったはず。それを安全に体験出来る』

 

「…………ふむ。もう八割方説得されてるけど、続けて?」

 

『つまり、ラディアは対人戦を経験しつつ、シリアスを今後どの様にカスタムするのかを体験し、実験しつつ、配信が当たれば小銭まで稼げる。此処まで利点が揃って、やらない理由が無い』

 

「……でも、小銭稼ぐったって、その時間を使って狩りに行った方が稼げるし、何倍も早くお金を稼げるよ?」

 

『肯定。しかし、無休で稼ぎ続ける訳にも行かない。その休日の時間を使う選択肢としては、最上級の活動だと判断出来る。

 

 しかも、狩りで資金を稼ぐにしても、ハズレ装備を買って時間と資金を無駄にする確率を思えば、休日に後々の装備を確認しながら小銭を稼ぎ、対人戦の練習まで出来るVRバトルは、この上ない選択だと判断する』


 うん、反論が出て来ない…………。

 

 使い心地も知らずにパーツを買って失敗するなら、VRバトルでパーツデータを市民価格で買って試す方がずっと有意義だ。


「ちなみに、VRバトルに出て来るカスタムパーツや武装、装置なんかは、基本的に全部実在の物だよ。メーカーが宣伝がてら出資してるし。確かにライドボックスでの参加者が七割を占めるけど、三割は実機で参加してる傭兵だからね。傭兵に宣伝する為に精密なパーツデータを提供してるはずだよ」

 

「マジか…………。て言うか、傭兵も結構やってるんですね」

 

「そりゃぁ、手っ取り早く名を売れるし? 傭兵って有名になってナンボな所あるからさ?」


 セルクさんによれば、市民の支持って地味に重要らしい。

 

 市民の支持イコールその傭兵の信用とも言えるので、中にはランク六の傭兵とランク五の傭兵が仕事を取り合って、VRバトルで有名だったランク五の方に仕事が回されたってケースも有るらしい。


「ああ、そうそう。ラディアくんは、傭兵ギルドでやけに人が多いなって思わなかった?」

 

「え? えぇ、思いましたね。西区の半分は東の利用者だってカルボルトさんに聞きましたけど、もう半分は徒歩傭兵ウォーカーなのかなって思ってました」

 

「それも間違いじゃ無いんだけど、正確にはライドボックスでVRバトルしてる、半機兵乗りセミライダー徒歩傭兵ウォーカーが大半ってのが正しいかな」

 

「……せみ、らいだー?」


 なんだその中途半端な機兵乗りライダーは。


「ライドボックスってね? 陽電子脳ブレインボックスを使ってるのは間違い無いでしょ? だからある意味で、法的には立派なバイオマシンでもあるの。だから、マシンコード発行出来ちゃうんだよね」

 

「マジかッ!?」


 そう言えば、バイオマシンの本体は陽電子脳ブレインボックスなのか。でも輸送機免許と戦闘機免許が別れてる事から推測するに、免許の規制は機体その物にかかるんだ。

 

 だから、免許が無くてもライドボックスは乗れるけど、陽電子脳ブレインボックスが使われてるから法的にはバイオマシンであると。

 

 ああ、つまり、ライドボックスが免許の必要な乗機とは言え無くても、法的にはバイオマシンだから乗機持ちとして機兵乗りライダー登録が出来ちゃうのか。


「意味分かんないですね」

 

「そうだねぇ。でも、時代なのかな? 傭兵ギルドにもちゃんと、VRバトラー用の依頼とかも来るんだよ?」

 

「…………えぇ、乗機として動けないのに、どんな仕事をするんですか?」

 

「もちろん、バイオマシンの操縦訓練とか、戦闘指南とかがメインだよ」

 

「え、いや、でも、傭兵登録しててもライドボックス乗りだったら、依頼者と立場、殆ど一緒ですよね?」

 

「そうなんだけどね。やっぱり現役の傭兵ってネームバリューは強いみたいなんだ。それにほら、依頼者からすると、実機で参加してる傭兵が依頼受けてくれるかも知れないじゃない?」

 

「ああ、言われてみれば確かに…………」


 あの地獄みたいなエレベーターホールは、そんな下らない理由と実態で形成されてるのかと思うと、こう、言い知れないイライラが募るね?


「ちなみに、ライドボックスに乗ってる半機兵乗りセミライダー? でしたっけ。その人達ってギルドになんの用事で?」

 

「あぁ〜、あれはねぇ。……ほら、傭兵の一口納税って有るじゃない? あれでチマチマと受付嬢の気を引いてるのが六割、半機兵乗りセミライダー用の依頼を受付嬢自ら斡旋して貰いたいお馬鹿さんが二割、半機兵乗りセミライダーから機兵乗りライダーに成るのに、初めて買う機体を受付嬢に相談してる困ったちゃんが一割、なんか良く分からない理由で受付嬢に会いに行ってるのが一割かな」

 

「死ねよッッ……!」


 良し分かった、僕VRバトラーになる。そして馬鹿共を全員ぶっ殺してやる。

 

 マトモな奴が一割も居ないってどういう事なのさ!? 一番マシなのが機体選び手伝って貰ってる人だけど、それも受付嬢である必要無いし!


「ベテランに聞けやぁッッ……!?」

 

「ほんとにねぇ。困っちゃうね?」


 そんな、そんな下らない理由で僕とタクトはエレベーターに地獄を垣間見たのかッ!? マジで許さんからなVRバトラー共が!


「最低でも、ガーランドからアクセスしてるVRバトラーは皆殺しにします。絶対に」

 

「頑張ってね☆ でもその時のラディアくん、ディアラちゃんのはずだから、相手も喜んじゃうかもね?」

 

「……………………せやったぁ」


 僕も、シリアスに出会う前に相手の立場だったら、可愛い女の子が対戦相手なら舞い上がるかも知れないわ。ボコボコにしても「はぁ、また戦いたいな」とか思うかも知れないわ。

 

 現実は何時だって無慈悲で、ままならない。


「さて、もう結構時間使ったし、お昼でも行こうか? お姉さん奢っちゃうゾ☆」

 

「あ、良いんですか? ご馳走になりまーす」

 

「うんうん、素直な子はお姉さん好きだゾ!」


 買う物買って、僕はシリアスをおじさんに以外にベタベタされたくないからサンジェルマンに送って貰い、お昼もお店選んで良いと言われたので、安定のハンガーミートだ。

 

 ハンガーミートは複数の機体で訪れても、専用のハンガーに通してくれるので問題無い。シリアスとコルナスも仲良く並んで同じハンガーに入れた。

 

 何気にシリアスとちゃんとコミュニケーションを取って会話する旅団の人は初めてだったので、セルクさんにも楽しんで貰えたし、セルクさんとシリアスが仲良くなった。


「あ、あの! サインお願いします!」

 

「…………あ、忘れてた」


 そして、僕は前に約束した通りに、店員さんにサインをせがまれて困るのだった。

 

 サインの練習なんてしてねぇ……!


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