店内シェア三割。



「はいコレ」


 お店に来た僕は、取り敢えずセルクさんの案内で店内を物色した。

 

 中は広く、いや広過ぎる空間で、そして置いてある商品もデカ過ぎた。

 

 僕のイメージだと、コックピットに設置出来る周辺アクセサリーとかを置いてる店だと思ってたんだけど、その実態はバイオマシンに取り付ける周辺機器も豊富に置いてあり、勿論ちゃんとコックピットの中に置く様なアイテムも扱ってるんだけど、どっちかって言うと「これ、周辺アクセサリー? いやカスタムパーツじゃね?」って規格の商品が多かった。

 

 駐機場も広く、大型から小型まで専用ハンガーも充実してて、店舗で買ったアイテムはすぐにハンガーの愛機に装備して貰えるシステムになってる。

 

 勿論、信用する技師以外には任せたくないって人も居るので、望めば買った物を指定する整備屋とかに送ってくれるサービスもある。


「なんですか、これ」


 そんな店で、僕は取り敢えず最初のイメージ通りの品物を望み、セルクさんはコックピット用のアクセサリーが並ぶ場所に案内してくれた。

 そこでオススメされたのは、謎の物体。

 

 見た目は、手の平に収まる大きさの、平たいスティックだ。幅は一センチ半、長さは五センチ弱、厚みは八ミリくらいかな? 光沢がある濃紺の棒だ。


「これはね、エフェクトランチャーって言うの」


 セルクさんは「どうだ!」と言わんばかりに鼻からムフーっと息を吐くが、申し訳ないけどそうじゃない。


「あの、名称じゃなくて、出来れば用途を…………」

 

「あ、そうだよね! ごめんごめん……♪︎」


 テヘって笑うセルクさんは、お茶目な人だなぁって感想が出て来る呑気な人だった。

 

 この呑気さが、グループの男子に人気なのだろうか。


「これはねぇ、コンソールソケットに挿して使うアイテムなんだけど、コレのシステムを走らせると、ウェポンシステムが反応する度に対応した効果音を鳴らしてくれるの!」

 

「…………つまり、シリアスのシザーアームが挟めば、ズシャーとか、ギャリィーンとか鳴る訳ですか」

 

「そう! 射撃すればズキューン! とかバキューン! って!」


 な、なんて無駄を極めたアイテムなんだ……。僕は戦慄する。

 

 確かにコックピットの中って、外部マイクが拾う音を取捨選択して、必要な物も調整したりするから、戦闘音ってそこまで大きく聞こえないんだよね。

 

 歩行時のキネティックアブソーバーが出す衝撃変換音も消えるし、昨日撃った小型パルス砲は勿論、中型炸薬砲だって気にならない程度に落とされてた。

 

 完全に音を消すと逆に、射撃不良とかに気付けないから危ないんだけど、外部マイクは丁度良い音量にして調整してからコックピットに出力してくれる。

 

 それを、自分で重ねちゃうのか。遊びで、好きな音に。


「正直ちょっと面白いなって思うのが悔しいジョークグッズですね」

 

「ね! 私も最初は下らなっ! って思ったけど、後々からじわじわ効いて来るセンスだよね!」

 

「知ってから、数ヶ月くらい後に気が付いたら買ってそうなの怖い……」


 しかもこれ、価格が一二○○シギルとか地味に高いぞ。中級市民の月収の三割越えってヤバいでしょ。


「高額な賃貸ならコレだけでも代金出せちゃいますよね」

 

「そうだね! 市民向けの物件ならそう!」


 ちなみに、傭兵向けの物件はガレージ付きなのでもっと高くなる。大型機体を整備出来る立派なハンガー付きの物件とか、下手したら一万でも収まらず、一○万から一○○万単位の家賃を請求されるそうだ。設備の質によって値段は変わる。

 

 デザリア一機分のガレージで良いなら、一万から五万くらいで済むらしい。集合住宅ならって但し書きが着くけど。

 

 暴走してる古代遺跡のせいで土地が足りない現代で、立派なガレージ付きの一軒家とかそれこそ一○○万シギル単位で掛かるだろうし、購入するならもっとする。

 

 でも、集合住宅なら集合住宅で利点も有って、ハンガーを管理する専用の人員とかも居るアパートメントやマンションも有って、一々仕事終わりに整備屋に寄らなくても良くなる。

 

 まぁ僕はシリアスを任せるならおじさんが良いけど。


「他にはね、これ!」

 

「…………これは?」

 

「エフェクトランチャーの亜種! 攻撃を受けるとアハーンとか、ウフーンって効果音が鳴る!」

 

「馬鹿なの!? これ作ってるメーカーは馬鹿なの!? て言うか一つに纏めろよ!」


 なんで別売りしてんのっ!? そんな大したデータ容量じゃ無いだろっ!?


「こー言うのもあるよー?」

 

「次は、なんですか? 今度はフンヌラバーとでも言うんですか?」

 

「…………………………なんで分かったの?」

 

「まさかの正解ッ!?」


 このお店は、コメディアンの突っ込み力を鍛える施設か何かなの? だとしたら大成功だと思うよ。

 

 オチを先取りされたセルクさんが、ちょっとしょんぼりして可愛い。けど落ち込まれると困るので、他のオススメを聞く事で機嫌を治してもらった。


「同じメーカーで、こう言うのもあるよー?」

 

「なんでそんなに…………。もしかして、大手メーカーなんですか?」

 

「割とね!」


 次に見せられたのは、やっぱりエフェクトランチャーの亜種だった。

 

 今度はウェポンシステムに反応して、コックピット内にホログラムでエフェクトを散らす装置で、火花が散ったり、花弁が散ったり、色々とエフェクトを選べる商品だ。

 

 ………………ぶっちゃけちょっと欲しくなった。


「これね、実は私も使ってる!」

 

「マジですか」

 

「お花が散ったり、プリズムが散ったりするの綺麗だよ!」

 

「…………まぁ、効果音よりはだいぶ良いですよね。ハートとか、天使の羽根とか散ったらシリアスに似合いそう」

 

『疑問。視界を潰して戦闘に支障が出る可能性を示唆する』


 途中、端末を倒して僕をモニタリングしてるシリアスから指摘が入る。

 

 でも、セルクさんによると大丈夫らしい。流石に戦闘の邪魔をしたら命に関わるから、その辺は気を使われてるそうだ。

 

 最大でも気が散るだけで、視界に影響が無いように調整されてるらしい。


「いや、気が散るだけでも危ないのでは?」

 

「それはもう、その程度の集中力ならコックピットにアクセサリーとか乗せるなって話しじゃない? ほら、商品の注意書きにも書いてあるし」

 

「なになに…………·、エフェクトを散らす商品ですので、気が散らされても仕様通り…………、って煩いわ! 別に上手くないからなッ!?」

 

「おほぉ〜、ラディアくんツッコむねぇ〜」

 

「セルクさんも、わざとこの手の商品を選んでません?」


 それから、セルクさんの案内で店内を回る。

 

 恐ろしいのは、店内で見掛ける商品の実に三割がエフェクトランチャーを出してるメーカーだった事だ。

 

 …………シェア三割とか超大手じゃん。こわっ。


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