だって可愛い。



 タクト達が暮らしてる場所に到着。


 コックピットからは聞こえないが、シリアスに限らずバイオマシンが歩く音は中々騒がしい。どう言う原理なのか距離を開けると途端に聞こえなくなるのだけど、五○メートル程ではまだ普通に聞こえる。

 

 そんな音を鳴らしながら現れるシリアスはスラムでも目立ち、当然ながらタクトグループにもすぐ気付かれる。シリアスに気が付いたメンバーがゾロゾロとバラック風テントから出て来る。

 

 しかし良く見ると、グループの拠点へ残ってるメンバー数が明らか変だ。少ないのでは無く、逆。多い。


「あれー? この時間はシノギに出掛けてるのが大半だろうから、こんなに残ってるのはおかしいな?」

 

『推測。旅団の仕事で収入が上がった事が何かしらの理由に成っていると予想する』

 

「なるほど」


 外部スピーカーで出て来たメンバーに聞いてみると、その通りらしかった。

 

 タクトが旅団から仕事を貰い、ある程度のメンバーを連れて仕事を熟す。それから稼ぎで安い端末を買い、新しく徒歩傭兵ウォーカー登録をしたメンバーで更に仕事を受ける。

 

 その循環で収入は驚く程に上がって、今ではシフトを組んで仕事をしてるらしい。なるほどね。


「タクトは?」

 

『今は寝てるぞ。夜勤明けなんだ』

 

「夜勤とか有るんだ?」

 

『おう。傭兵は二四時間営業だから、夜に仕事をする人の補給作業の手伝いとか、雑用とか、色々有るんだよ』


 なるほどねぇ。

 

 僕は取り敢えずその場にシリアスを駐機して、コックピットから出る。

 

 乗降のギミックがカッコイイので、その様子を見たメンバーの男の子達はキラキラした目でシリアスを見つつ、僕を見てちょっとガッカリしてた。なにゆえ?


「今日は、女の子じゃないのか……」

 

「本格的に僕の女装へドハマりするの止めてッ!? 僕が男なの知ってるでしょッ!?」

 

「いや、だって可愛いんだもん……」


 ぶっ潰すぞコノヤロウ!

 

 なんか、グループの拠点に遊びに来る可愛い女の子的な、タクトグループのアイドル的なポジションにされて不満が募る。

 

 確かにさ、僕はタクト争奪戦に参加してないから、見た目とパラメータで言えば『タクトに持って行かれてない貴重な女の子』かも知れない。けど、その実態は君達も良く知ってる男だからね。止めてよホント。


「今日はどうしたんだ?」

 

「いや、ほら、シリアスに乗せるって皆と約束したじゃん? それでタクトとか、暇なメンバーを砂漠に連れて行こうかなって」

 

「マジか!? え、じゃあ俺行く! タクト寝てるし、別に良いだろ!?」

 

「それはタクトに聞いてくれる? メンバーを勝手に動かす権利は僕に無いし」


 名前も知らないけど顔見知りでは有る男の子は、「ちぇー、リーダーに聞いたら俺ら後回しじゃんか」と言って不満ぷーぷーだった。

 

 でも、所属外の僕が勝手にメンバー連れてったら問題でしょ。親しき仲にも礼儀ありだよ。

 

 僕はタクトに迷惑なんて掛けたくないし。ぶっちゃけ君達の事どうでも良いからね。名前すら覚えてないからね。

 

 スラム孤児は「ねぇ」とか「お前」とか「君」でやり取りに問題が出ないので、名前を覚えないたちの僕でもやって行けてしまうのだ。


「補助席入れると二人乗せられるから、タクトが確定でももう一人連れてけるよ。聞いてみたら?」

 

「マジかよ先に言えよ! ちょ、リーダー叩き起してくる!」

 

「あ、ちょ--……」


 行ってしまった。叩き起すのは止めて欲しかったのだけど。


「ラディアくん! 今日は男の子なんだね!」

 

「ああ、…………えっと、そう! プリカ!」

 

「………………名前忘れてたねー?」


 タクトを起こしにテントへ突撃した男の子を見送ると、代わりにプリカがやって来た。ごめんね、君の帽子の方がインパクト強いんだ。ホント、ディアストーカー似合ってるよね。羨ましい。

 

 僕もシリアスにお願いしてディアストーカーのコーディネートして貰おう。


「仕事は順調?」

 

「うん! これも、きっかけをくれたラディアくんのお陰だね! 有難う!」

 

「僕はタクトに恩返ししてるだけだから、気にしないでよ。お礼はタクトへどうぞ」

 

「そうする! ねぇ見て、私も自分の端末持てたの! 嬉しい!」


 分かる。自分の端末って嬉しいよね。人に必須のツールだから、やっと人に成れた気がしてさ。

 

 せっかくなのでプリカと連絡先を交換してると、テントからタクトが目を擦りながら出て来た。寝起きである。


「…………寝みぃ」

 

「えと、アポ無しでごめんね? 良く考えたら通信入れてから来れば良かった……」

 

「いや、寝てたし。通信要求来ても無視してたかも知んねぇし、仕方ねぇよ。…………おはよ、ラディア」

 

「うん、おはようタクト」


 それから要件を伝え、タクトを乗せて砂漠に行きつつ、操作の基礎を教えながら狩りをするって言えば、タクトは眠い目をかっ開いて興奮する。


「マジかマジかマジか! すぐ用意する!」

 

「タクトの他にも、もう一人だけ連れて行けるよ。折り畳みの補助席も一つだけ有るから」

 

「オッケ分かった。すぐ選出するわ」


 結果、最初に僕の対応をしてくれた男の子は落選。端末のクジ引きアプリは残酷な乱数を押し付けて来る。

 

 初回はタクト確定で、次回からはタクトもランダム要因になる。つまりタクトだけは毎回抽選に参加出来る。あくまでタクトに対する恩返しだからね。他の子はついでだからね。

 

 タクト以外の一度シリアスに乗れた人は次回から抽選に参加出来ず、希望者が一周した所でひとまず約束は終わりって感じに決まった。


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