昇格とランク。


 

 普通の昇級なら端末操作で済むんだけど、高ランクになると面接とか試験とか、色々と面倒な手続きが増えるらしい。


「わぁ、おめでとうございます! カルボルトさんのランクってどのくらい何ですか?」

 

「めっちゃ高そう」

 

「まぁ、そう、だなぁ。一応、傭兵のランクがどんな感じで扱われるのかを先に教えてやるよ」


 カルボルトさんの授業だと、まずランクゼロが見習い。仮登録だ。


 次にランク一、駆け出しのピカピカ初心者。


 ランク二から三。傭兵の仕事にある程度慣れて、そこそこ稼げる様になって来た段階。一人前のちょっと手前くらい。


 ランク四から五。一定の実績と経験を持った、一人前の傭兵。傭兵で一番層が厚いのはこのランクだそうだ。


 そしてランク六。ベテラン。結構凄い。一目置かれる。どんな仕事に着いても、まず蔑ろにはされない。


 ベテラン超えてランク七。超ベテラン。一流の傭兵。此処ここまで来ると同業からは尊敬を集める存在だ。ラッキーパンチの仕事でちょっと大金稼いだくらいじゃまず辿り着けない領域。超大金を安定してガンガン稼ぎ出す傭兵の中の傭兵。


 更に上がってランク八。もう傭兵の現人神あらひとがみ的な存在。まず仕事をミスるなんて事は有り得ず、顧客に百の成果を要求されたら最低でも五割増しの一五○は叩き付け、調子が良ければ二倍でも三倍でも成果を出して遣り遂げる、超スーパーウルトラグレートなエリート傭兵。このレベルになると国の方が気を使い始める超戦力にして超資産家だ。


 最後に傭兵の頂点、ランク九。神。現人神どころじゃなくて、ハッキリと傭兵の神。物凄い傭兵で、説明不要って感じの存在。

 

 現在帝国に一人だけしか居ない、ある意味オリジンよりレアな存在で、その人の逸話の一つに『クソ難解な依頼をしたら、目の前で一本何処どこかに通信を入れただけで、その後彼と二時間お茶をしてたら依頼が完遂されてた』なんて話しを聞かされた。

 

 依頼人の試算だと二ヶ月は余裕で掛かる仕事だったはずで、もはや仕事の質がヤバ過ぎて逆に怖いってレベルの傭兵らしい。

 

 しかも秘匿性の高さも求めたら、どうやって依頼を完遂したのか微塵も分からないレベルで仕事内容を秘匿されてて意味不明に質の高い仕事を熟す傭兵神が、ランク九だそうだ。


「まぁ、そんな感じで傭兵のランクはゼロを抜けば九段階あるんだが、俺は今ランク六で、今日手続きして昇級が通ればランク七なんだよ」

 

「凄い!」

 

「え、普通にすげぇ。現人神の一歩手前って事じゃん」

 

「ちなみにウチの団長はランク八な」

 

「現人神じゃん」

 

「崇めなきゃ。僕も傭兵になったしご利益あるかな……?」


 つまり、カルボルトさんはもう一つランクを上げたら現人神で、カルボルトさんの所属する傭兵団の団長さんは、現在もう現人神で、ランクを上げたら完全な神になると。

 

 つまり神じゃん。


「褒めてくれんのは嬉しいけどよ、なんかコレ自分から言うの自慢してるみてぇでちょっと嫌なんだよな。坊主達が正しくランクを把握する為に超ベテランとか現人神とか説明したけどよ、自分で『俺って超ベテランなんだぜー』とか、ダセェだろ?」

 

「…………? え、いや? 実際に超ベテランなら、それってただの自己紹介なんじゃないか? 自己紹介してダセェって言われたら、引っ叩いて良いと思う」

 

「だよね。それだけの実績がある人なんだから、僕も別に良いと思う」

 

「お前ら良い奴だな」


 いや、だって、カルボルトさんはそのランクになるまで、尋常じゃ無い数の仕事を熟して来た訳だし、その経験に見合うだけの尊敬が集まるのは当然じゃないの?


「じゃぁ、僕ら邪魔しない方が……?」

 

「凄い助かったけど、そろそろ帰った方が良いか?」

 

「まぁ、俺も試験とか色々あるから時間掛かるしなぁ……。あぁ、でも待て、俺まだオリジンをちゃんと見てねぇ。帰るならせめて端末のID寄越せ。後で連絡するからオリジンに会わせろ」


 それで、後でカルボルトさんが食事を奢ってくれる事になった。

 

 連絡先を交換した僕らは、また後で会う約束をして別れる。流石に超ベテランの人をランクゼロと一のペーペーが拘束し続けるのは良くない。


「んじゃ、またな! 終わったらすぐ連絡すっから予定空けとけよ!」

 

「はーい! ありがとうございましたー!」

 

「あざしたー!」


 カルボルトさん、凄い人だったんだな。

 

 良く考えたら、管理官さんをやり込めたあの口先の滑らかさで、オークションで十五億もする超レア機体を傭兵団から任されてる人なんだから、相応に凄い人なのは気が付くべきだったかな。

 

 そうすると、ミラージュウルフに乗ってた父も、実は本当に凄い傭兵だったりしたのかな?

 

 僕は父の必勝傭兵ヴィクトリウスって二つ名、実は自称なんじゃねって疑ってたけど、もしかしたら本当にそんな二つ名を持った凄い傭兵だった可能性がちょっと出て来た。

 

 信憑性はソースはミラージュウルフのサディウス。決して父に対しての信用じゃない。

 

 僕は父を信用して無いけど、サディウスは信じても良い。て言うか息子を砂漠に置き去りにする男なんて信用出来るか。

 

 意味分かんないでしょ。最低でも暮し易い都市に置いてくならまだしも、わざわざ過酷な場所で子供を放置して戦争に行くって、随分と高度な育児放棄ネグレクトをカマしてくれる。児童虐待のプロフェッショナルか?


「さて、ラディア? まだこの地獄エレベーターに突撃しなきゃいけないんだが、覚悟は良いか?」

 

「…………忘れてた。ギルド利用するだけでこれって、過酷過ぎるでしょ傭兵業」


 父の所業を思い出してたら、目の前に傭兵業の闇が広がっていた。

 

 これってさ、傭兵と受付嬢が婚活したがってる煽りなんだよね。僕らとばっちりじゃん。


「はぁ、行こうか。地獄エレベーターを超えたら天使シリアスに会える…………、はっ? つまりシリアスは、堕天使だったッ?」

 

「おい井戸ポン。しっかりしろ」

 

「井戸ポン言うな!」


 ちくしょう。コレ一生言われる奴じゃん。

 

 しかし、良いな。堕天使シリアス、良い。絶対クールビューティだよ。

 

 そんな妄想によって僕は自分の精神を保護しつつ、むさ苦しくて汗臭い男性型有機生物の波に突撃する。

 

 タクトっ、オペレーションGだ!

 

 Gは『ゲートに張り付こうぜ』のGね!


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