第58話 十六夜


満月の次の日の月が

いつもより近くにあるように見えて

なんとなく手を伸ばした

その妖艶な輝き

それでも月はどこまでも空のもので

人の心なんて知りやしない

ままならない現実に

声にならない声で叫んだ


その声は

なんて遠い


吠えても吠えても

届かない思いは溢れ

それでもやっぱり月は遠くて

あたりを照らすその光を

どうにも信じられないまま

手を伸ばすことをやめられず

なんとか月へ届こうとする

哀れな兎

報われない輝きの下で

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