第37話 追試に向けて

「と言う訳で先輩、追試に向けての勉強会を始めましょう」


「これまた唐突だな」


夏休みに入る直前の頃、長期休暇に入る事もあり日々忙しくあったのだが、珍しく生徒会の会議も仕事も無かった放課後。

なぜか後輩である美音と、図書室で勉強をする事になっていた。


「知らないとでも思ったんですか?先輩が英語のテストで赤点を取っていた事」


「いや、逆に何で知ってるの?誰にも教えてない筈なんだけど……」


「雪乃先輩から聞きました。先輩は成績は全体的に平均または50点台前後が多く、中でも英語は30点台の赤点ギリギリだと。だから鎌をかけてみたのですが……本当に赤点だったんですね」


うっわ、はめられた。ってか雪姫さん、何で知ってんの。雪姫さんにも話した覚えはないのに……

まぁこうなった以上仕方ない。やる事は一つ。話を長引かせて、時間を削る。


「……まぁそうだよ。赤点だったよ。けど何で歌風さんに教えて貰う事に?後輩だよね?何で後輩なのに教える側?」


「単純な話です。私は高校レベルの英語であれば、何の問題もありません。この通り」


そう言って学期末の英語のテストを差し出してきた。受け取って確認するとそこには、100点と記されている。

去年の自分は確か……うんギリギリ合格だった。

後日柑條から聞いた話なのだが、歌風さんは学年主席の学力だそうです。

…やっぱ生徒会って、賢い人や何かしらの才能がある人が集まるんだなぁ……


「と言う訳で教えることに問題はありません。先輩は生徒会役員なのですから、余裕をもって追試をクリアーしてもらう必要があります」


「いや~、前にも言った事あると思うんだが、俺が生徒会に居ること自体が場違いだと思うんだよね~。ご覧の通り賢いわけじゃないし」


「役員になった以上、生徒の模範となるべきです。なので先輩の言い訳は関係ありません。今から頑張ればいいんですよ」


「あ~、はいはい。ま、その意見は分からんではないけどね。物事も勉強も理解してモノにするまで、かなり時間がかかるんだよ。……俺は凡人以下だから」


そう、自分には何のとりえもない。今の自分に出来る事を精一杯、全力で行う。分かるようになるまで何度も読み返す。ただ真面目にそれらを繰り返すのみ。

そんな自分が生徒会役員なのは、今でも信じられない。中身のない真面目とでも言えばいいのだろうか。ただ当たり前のことを行う。そこに意味はなく、意義を感じる事もない。だから……


「なーんか、小難しい事を考えていませんか?」


「え?」


「そう言う所は残念ですが、でもそれが先輩ですから。先輩らしくやって行けばいいんですよ」


……何で後輩に諭されているんだろ。ってか何で、こんなダメな先輩なのに期待されているんだろ?

でもまぁ、期待されてるんだし……


「じゃあまぁ……大人しく教わる事にするか」


そう言うと歌風さんは、微笑みを浮かべて返事をした。


「はい!そうされてください‼」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る