第18話 かくれんぼ
ある昼休み、昼食を取り終えいつも通り本を読もうとした時に奴は来た。
「失礼します。古詠先輩は居ますか?」
「古詠君なら、席で本を読んでいると思うよ。呼んできてあげようか?」
「はい‼お願いします!」
クラスメイトと奴のやり取りが聞えてきた。
何でわざわざ昼休憩に来るんだ。
奴に絡まれたら、ゆっくり本も読んでいられない。
ここは気付かれない様に、反対側の扉から逃げよう。
「古詠君~可愛らしい後輩のお客さんだよ~……って居ないや。おかしいな~?ごめんね、さっきまで席で、本を読んでいた筈なんだけど」
「そうですか。いえ、大丈夫です。行きそうな所には、心当たりがあるんで」
と言う事で、奴から逃げるために俺は図書室、の隣にある司書室にやってきた。
ここに来れば役員以外は立ち入り禁止だし、基本的には委員長と副委員長しか使用できない事になっている。
委員長である鷺ノ宮さんは、今日は放課後の当番なのでここにはいない。
まぁそんな訳で、今度こそゆっくり本が読めるはず。
「お仕事中すみません。此処に図書委員会の副委員長さんは来ませんでしたか?」
いざ本を読もうとした瞬間、隣の図書室からそんな声が聞えた。
おそらくカウンターに居た役員に話しかけたのだろう。
……ん?と言うか、俺を探しているって事は奴が来たと言う事かよ。
まさか、行き先を読まれたのか?
やばいな。早く別の場所に移動しなければ……
話が聞こえて一分もしない間に決めると、またしても気づかれる事のないように司書室に鍵をかけ、移動を開始するのであった。
「副委員長は図書室には殆ど来ないよ?でも司書室にはよく居るから、確かめてあげようか?」
「はい、お願いします」
そう言うと、図書委員の子はもう一人の役員の子にその場を任せて、隣にある司書室に向かった。
「副委員長居ますか?」
ノックをして返事を待つが、もちろんそこには誰も居ないので返事は無い。
彼女は扉に手をかけ開けようとするが、鍵がかかっているのであきはしない。
その事を確認すると、カウンターに戻りそこで待っていた子に話しかけた。
「今日は来ていないみたいだよ」
「そうですか、分かりました。お手数をお掛けしました」
「で、彼女から逃げる為にここに来たと。ミー君、逃げる必要は在ったのかな、それ?」
「いや、だってよ、ゆっくりと本が読めないじゃん」
昼休憩も残りわずか。
そんな訳で最後に逃げ込んだのはお馴染みの、生徒会室。
生徒会室では、柑條と歌風さんが話をしていた。
「先輩は何から逃げていたんですか?」
「柑條、悪いが説明頼む。俺は本を読みたいから」
「全く、そのくらい自分ですればいいのに。えーっとね、前に入学式の準備の話をした時に、オープンスクールでミー君が大変だった、と言ったのは覚えてる?」
「はい、新一年生の中に恐らくですけど知り合いが言ったって、話ですよね」
何から逃げていたかの話を柑條に任せて、席に着き本を読み始めた。
「うん、その話。その子、昔引越ししちゃったんだけど、オープンスクールの時に偶々再開したんだよ。再会したその子は昔同様に、ミー君にとっても懐いていたらしくて、まぁそんな感じで色々あったんだよ」
「はぁ…何か凄そうな子ですね。それで夜海先輩は逃げ回っていたんですね」
「うん、それさえなければ接しやすい、いい子なんだけどね~」
そんな話していると、コンコンと部屋をノックする音が聞えた。
まさかな…
「誰だろう?誰かが訪ねて来るなんて、珍しいね」
「さっき話していた、子なんじゃないんですか?」
「まさかね、無いでしょそんな事は」
そう言いつつ柑條は扉へと近づき、「今開けます」と言い扉を開けた。
「休憩中すみません。お兄さんが此方に来ていませんか?」
聞こえてきたのは、例の子の声だった。
あ~、もう諦めるしかないか。
「ミー君、観念したらどうかな?この子に付きあって上げなよ」
「そうだな。俺の負けだ。と言うかよく行く先が分かったな、聖」
「お兄さんの行きそうな所ぐらい、分かるよ。だって、小さい頃からお兄さんの後を付いて回っていたんだよ。分かるに決まってるよ」
そう言えば昔から、お兄ちゃんって言いながら付いて来ていたな。
「っと、そう言えば歌風さんは、初めて会うよな?」
「はい、先輩。この子ですか?」
「あぁ、名前は…」
「
「はい、こちらこそよろしくね、聖ちゃん」
「挨拶はその辺にして、聖。結局何の用だ?」
訪ねると聖は此方を向いて、真剣な表情で言った。
「夏休みにサマーフェスティバルがあったよね?一緒に回りたいなーって思って、誘いに来たんだよ」
「あーあれか。別に構わないよ。ずっと一緒って訳には行かないけど、それでもいいか?」
「いいけど……何か用事があるの?」
「いや、生徒会で見回りやらと色々とやる事があるから、ずっと一緒って訳に行かないだけだ」
本当なのかと言う顔で聖は柑條を見た。
すると柑條は、肯定するように頷いて見せた。
「それでも良いよ。じゃあ今日は教室に戻るね」
そう言うと聖は生徒会室を後にした。
結局これだけの事のために、時間を潰したのか……
今思えば、踊らされて逃げ場がない所に追い詰められたわけだ。
「ミー君、図らずも遊んであげていたみたいだね」
「そうですね、先輩の性格や行動を熟知しているから、聖ちゃんからしたら遊んで貰っていた感覚何でしょうね」
やっぱりそうか……
下手するとこりゃあ、要らない嫉妬やらを買いそうで怖いな。
まぁ約束は約束だし、可愛い妹分のために守ってやるか。
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