第12話 庶務と会長
最近休憩を、生徒会室で過ごす事が多い。
作業が無くても、部屋を使う事は出来るので、静かに本を読むのには丁度いい。
教室だと周りがうるさくて、落ち着けない。
そんな訳で、今日も生徒会室に来て本を読んでいたんだが……
「ミー君~、そこの書類取って~」
「はいはいっと、これか?」
「うん、ありがと」
確か、仕事は無いって聞いていたんだが……
「柑條、仕事は無いんじゃなかったか?」
「うん、会議は無いけど、雑務はあるよ」
そう言うと、先程渡した書類を見せてきた。
よく見るとそれは、使用許可書と書かれた紙だった。
「他にも、備品申請書とかもあるよ」
「それは分かったが、何で昼休憩にしているんだ?」
わざわざ休憩時間にしなくても、放課後にすればいいのに。
「そもそも、雑務って事は俺の仕事だろ」
「そうかも知れないけど、私たちの仕事とも言えるんだよ。ま、そんなに気にするのなら、手伝ってよ」
「休憩時間は、休む時間だろ。頼まれたら、別だがな」
俺の基本スタンスは、最低限やり切るか頼まれたらやる。
頼まれた場合、最後までキッチリとやり切る。
まぁ、よほどの事が無い限り、頼まれると言う事も無いが。
「それじゃあ、昼休憩の内に終わらなかったら、放課後に手伝ってよ」
「まぁ、それは良いが、そこまで無いだろ?」
見た限りでは、殆ど終わっている気がするが。
「申請書が終わったら、今度は生徒会室の掃除をしておかないと。来週にはまた会議が在るからね。こういう時に、しておかないとする暇が無いからね」
と言うと、最後の一枚に手を付けた。
ほんと、柑條って昔からよく働くよな。
こう何て言うか、みんな中心になって、みんなのために何かする………人のために何かが出来る人って言うのかな。
「俺には、出来ないな………」
思わず、小さな声でそんな事を言ってしまった。
「ミー君は、ミー君のままでいいよ。知っているよ、ミー君が陰から人を支えていること」
すると、最後の一枚を終え、柑條は此方を見ながら諭すように言ってきた。
「前にも話した事があったよね」
「そうだったかな」
「そうだよ。周りからは目立たない仕事、けれどそれが出来ていないと上手くいかない事もある。そんな目立たない仕事は、誰もやりたがらない。だって、評価される事は殆ど無いのだもの」
だろうな。そりゃあ、誰も見ようとはしない、と言うか気にも留めない様な事が殆どだろうから。
「でもミー君は、そういう陰から支ええる仕事を進んでやっている。だから私は、いや私たちは、安心して進めることが出来るんだよ」
「そんな大層な事は、していないよ。自分が気に為ったからやったとか、そんな感じだ」
「例えそうであっても、少なくとも私は感謝しているんだよ。だから、気にする事なく、ミー君が出来る事をすればいいんだよ」
昔から、人の事をよく見ている奴だな。
こんな奴だから信頼されて、着いて行く奴いるんだろうな。
ま、今では俺もその一人って事か。
「雑務は終わったんだろ?だったら、掃除は俺がしておくよ」
「私もするよ。一人より、二人の方が早く終わるでしょ?」
「そうかい。じゃ、放課後にな」
「うん、放課後にね。あ、ミー君。いつかは昔みたいに美玖って呼んでよ」
そう言うと、柑條は教室に戻っていった。
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