五十六話 ドラゴンだったもの

No.218 ドラゴンゾンビ

不定形魔鳥類ハネツキクンピラ科


体長 4.5〜5m

体重 2〜2.5t


能力値

『力』2100〜2500

『魔力』1200〜1500

『機動力』0〜2000


討伐依頼受諾可能最低ランク

C


・ザキ地方を主として色々な地方で発見される(数は少ないようだが)……ちなみに、現在その中でも特に強力な個体が一匹、ザキ地方の魔王城付近にいるようだ。

・ついさっき発見。


これは名前からも何となく分かるかもしれないが一応言っておくと、※『アンデッド』となってしまったドラゴンの魔物である。


つまり……コイツは厳密に言えばアンデッドであるのだが、その強さと元々がドラゴンであったがための物々しい姿から人々にはアレとはまた別物として認知されており、今では『ドラゴンのアンデッド=ドラゴンゾンビ』というような呼ばれ方をされている。


よって俺もそれに倣いアンデッドとはまた別の魔物として、コイツの紹介をさせて頂こう。


コイツはもう分かると思うが、ドラゴンが死に、遺骸がある程度の日数放置されると誕生する魔物だ。


そして、ドラゴンは高い魔力を持つ個体が多くいるためか、死亡するとドラゴンゾンビ化してしまうものは少なくないようである。


その上強力なアンデッドの中に稀にいると言う『生前の意識を保持しているもの』も、ドラゴンゾンビの中には比較的多く存在しているようで……


実際に〝自分であったもの〟が自らの意思とは関係無しに人々や他の魔物を死に追いやる場面を見、嘆き悲しんだり、心を痛めたりしているような行動をするドラゴンゾンビがよくいるんだそうだ……


ちなみに、これは魔力も勿論だが、生前の知能が高いためとされている。


皮肉なものだな……

知能が高いせいで、死後こんなに苦しむ事になるなんて……


しかし、同情ばかりしてはいられない。


コイツはその見た目から生前の姿がすぐに分かるので事前にある程度の対策が立てられるものの、個体によってはむしろ〝そうしなければ勝つ事が難しい〟程に強い魔物である場合が多いんだからな。


まだそうなったばかりで空を飛べるようなドラゴンゾンビは当然ながら、肉体が腐食し、動けなくなっている個体にも決して油断してはならないぞ。


その状態のものですら、討伐に適したランク以下の者、魔物程度ならば、一撃で沈められるくらい強いんだからな……


最後に余談として、『何故ドラゴンゾンビの数は少ないのか?』をお話ししよう。


これは先程言った、『ドラゴンが知能、魔力の高い魔物』である事が起因している。


彼等は群れの仲間が亡くなると、その遺骸を自らの発する炎によって火葬するのだ。


そしてドラゴンがアンデッド化した他の個体を発見した場合にも、それとわざわざ戦闘を行い、倒して地に帰そうとする事があるらしい。


しかもそれだけでなく、何と自らの死を悟った個体の中には、自死を選ぶものもいるのだと言う。(これには流石に俺も驚かされた)


……そう、これらの理由により、ドラゴンゾンビの数は少ないのだ。


恐らく、彼等はドラゴンゾンビが『後の自分達の姿』だと知っているのだろう……本当に利口な魔物である。



…………しかし、逆に言えば。


今この世界に存在するドラゴンゾンビは皆、『孤独に生き続けて来た個体』か『何らかの理由によりドラゴン自身がそうなる事を選んだ。もしくは死を拒み続けた個体』である事が分かるだろう?(実際そうであるらしいぞ)


だから……現存するドラゴンゾンビは物凄く凶暴だったり、生前果たせなかった物事等に執着していたり、かつ戦闘経験が豊富で実力があったりして一匹一匹がとても強力、凶悪な魔物となってしまっているんだそうだ。


注釈


※ アンデッド 『本編第二章 クボタのザキ地方メモ』にて紹介




簡単なあらすじ『ドラゴンゾンビとの戦闘前に、なんと自称神様が現れました』




「クボタさん……!待ってください!それは……その約束は!僕が果たさなければならないものです!」


サチエが倒れた直後、そう言って現れたのは自称神様だった。


今前にしているドラゴンゾンビが俺に願いを言った時もそうだったが、こちらもまた嘘をついているようには見えない。


つまり……間違いなく、〝あれ〟が約束をした相手はこの光る球体となのであろう。


それは一体いつ?何処で?

そのような考えが次々と俺の頭に浮かぶ。


……が、今は呑気に質問などしている場合ではない。


奴はいつまた暴走を始めるか分からず、サチエまで気絶しているのだ。


後者の方は多分、自称神様のせいだが……

恐らく人前に姿を晒す事を嫌って、また何かしたのであろう。ジェリアにそうした時のように。


とにかく、今は動かなければならない。


そのどちらを優先するかは悩まなかった。

俺はまずサチエを安全な場所へと送り届けるために彼を担ぎ上げ、自称神様へとこう言った。


「……じゃあ任せて良いんだな!?なら俺はサチエを安全な所に」


「いえ!貴方にはいてもらわないと困るんです!それに、その人が気を失ったのは僕のせい……だからその人の事は任せてください!」


自称神様はそう言う。

俺が何故この場に必要なのだろう?


それよりも……サチエの介抱を自称神様がやるなら、アイツが一度ここから離脱しなければならないはずだ。


そうなるとやはり、〝あの約束〟は俺が果たさなければいけなくなる……一体コイツはどうしようと言うのだろうか?


「お願い……この人を安全な所へ!」


などと考えていると、いきなり自称神様が叫んだ。


その声の響きからすると、彼は何故かそれを虚空へと向けて発したようである。


するとその瞬間、俺の目の前を何かが通り抜けたかのように風が頬を撫でたかと思えば、突然身体が軽くなっていた。


気が付けば、肩に担ぎ上げていたサチエがいなくなっていたのだ。


「え、え!?サ、サチエは!?おい!お前が何かしたのか!?」


俺は再び動揺し、声を荒らげて自称神様にそう言う。


「あの人は大丈夫!さあクボタさん時間がありません!覚悟は良いですか!?


すみませんけど…………〝入りますよ!〟」



しかし、俺の質問を無視した自称神様は……


俺の肉体……それも心臓付近目掛けて、一直線に飛び込んで来た。

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