番外編 二つの名前

No.15 クリスタルフロッグ

不定形魔水類ミズタマモドキ科


この名前でどうだろう?俺は昔から『気になって調べてみたら〇〇って名前なのに全く予想外の種類だった』みたいな生物が大好きなのだ。


私欲満載であるのは百も承知だ。それに見たまんまだし…まあそこら辺は俺の権利という事で大目に見てほしい。


身長は40cm…

体重は7キロ…うん、確かに並べてみるとプチ男よりちょっと大きい。あ、こらこら喧嘩しない。


えーと…生息地は発見場所でもあるカムラ地方の奥地だな。でもスライムだからまだ確認されていないだけで他にもいるのかも知れない。


主な特徴としては…

・魔力を有している。

・クリスタルフロッグ自身の意思でカエル形態とスライム形態どちらにでも変態(変身?)ができると思われる。


うーん…他に何かあったっけ?

あと二つ目はキングさんの仮説だし書かない方がいいのかな?


まいっか、新種なんだから情報は多い方がいいだろ。


…よし、こんなもんか。


明日キングさんにこれを渡しさえすれば新種の登録申請までしてくれるらしい。


そう聞いて一瞬、キングさんは大のスライム好きなのだから自分の名前で申請を出したりしないだろうか…という口に出したりなんてしたら謝罪会見は免れなさそうな考えが頭をよぎったが、あの人はスライムの事に関しては真摯な紳士だ。きっと大丈夫だろう。


後は…あ、また喧嘩してる。


後はこいつ自身にも名前を付けてやろう。俺の元にきたのも何かの縁だからな。


そうだ!それくらいはコルリスと一緒に決めよう。この家の魔物は家族みたいなもんなんだし、家族同然のコルリスと二人で考えるべきだ。






コルリスの案が可決され、クリスタルフロッグの名前は今日からケロ太になった。


正直にいえばもうひとひねり欲しかったが、なんとなくプチ男とセットにすると統一感がある…ような気がするからこれでよかったのかもしれない。(ちなみに〝前の俺〟かと思っていたがプチ男の名付け親は実はコルリスだったらしい。ならばこのネーミングセンスも納得できる)


「いい?今日からキミの名前はケロ太君だよ〜」


テーブルの上に乗っているケロ太をコルリスがぽこぽこと軽く叩いた。俺はプチ男と喧嘩しているのを最初に見たのでてっきり荒っぽい性格なんだと勘違いしていたがこいつは例の先輩スライムとさえくっつけなければ大人しくて案外いい子なのだ。


まあ両者いがみ合うのはスライムの本能だから仕方ない。幸い怪我をするほどの攻撃は互いにしていないようなので慣れてくれるまで見守り続けようと思う。


…………


ん?何をしているかって?ケロ太を見ているんだ。違う、見守り始めたんじゃない、見ているだけだ…


…………


実をいうと、俺は先程のクリスタルフロッグのメモであえて記入しなかった事が一つだけある。


それは…こいつのカエル形態はどう考えてもおかしい、という事だ。


俺はこの形態をアマガエルに似ている、と表現したが…


〝この世界にはアマガエルはいない〟


勿論アートードのようにカエル系統の魔物はまだまだいる。しかしアマガエルも、アマガエルに近い魔物も存在しないのだ。


クリスタルフロッグはカエルに変身するだけのスライムであり、マスターではない。ならばなぜこの姿になるのか…見本となるものをどこで見たのか…


とはいえ、調べる方法はないから今は観察する事しかできないし、一応いっておくとそれのせいで思い悩んでいるワケでもない。


ただ…いつかその謎が解ける日がくるのだろうか、と考えていただけさ。

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