06. 捨てる神あれば拾う神あり
「はぁあ!?何だそのクソパーティは!」
「ヒィィッ!!」
エレインの話を聞き、思わず大声を上げるホムラ。額には青筋が浮かんでいる。ホムラの大声にエレインはびくりと縮こまった。
状況的に、エレインはパーティに捨てられたのだろう。それも単身ボスの間に放り込むという冒険者にあるまじき非道な行為によって。
これまでホムラに挑んできた冒険者は、そのほとんどがパーティを組んで戦っていた。ソロではなくパーティを組むことで、戦いの幅が広がり、ホムラとしても色んな戦術を目にするのは楽しみの一つであった。
どのパーティも仲間達と信頼関係で繋がっていた。何せ70階層まで一緒に冒険してきたのだ。その絆は深いものになるはずだ。そんな冒険者に、ホムラなりに敬意を持って挑戦を受けてきた。
だが、エレインのパーティはどうだ。
仲間への配慮のかけらも無く、道具のように扱い、要らなくなったら使い捨てる。反吐が出そうだ。
「で、お前はこれからどうすんだよ」
依然としてズビズビ鼻を啜らせているエレインにホムラは尋ねた。
「ど、どうと言われましても……扱いは酷くても、アレク達のパーティだけが私の居場所だったので…うっ、どうしよう…ふぇぇぇん」
「だーー!もうメソメソ鬱陶しい奴だな!!」
「ぎゃぁぁぁ!!殺さないでぇぇぇ!!」
ホムラに怒鳴られて一層泣き喚くエレイン。ホムラの背中に隠れるアグニが迷惑そうに眉を顰めている。
「帰る家はあんのかよ」
「一応借りてる部屋はありますけど……ノコノコ生きて帰ったのがアレク達に見つかったら、今度は何をされるか…うぅぅう」
涙と鼻水を垂らすエレインを呆れた様に見下ろすホムラは、溜息を一つ落とすと、こう言った。
「はぁ、分かった。お前今日からここに住め」
「「は??」」
それに対してエレインだけでなく、アグニもポカンと口を開けている。
「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待ってくださいホムラ様!?正気ですか!?」
「いたって正気だ」
「冒険者をダンジョンに住まわせるなんて、聞いたことないですよ!!?」
「だろうなぁ、だが別に禁止されてもいねぇだろ?」
「そ、そりゃそんな突拍子もないことする魔物は居ませんから!?」
今、アグニの目の前で頭を掻いている鬼神以外には。
「エレインでしたか?あなたも何か言ってください…ってダメだ、泡吹いて倒れてます」
「はーーー、マジでぽんこつじゃねぇか」
ぶくぶく泡を吹いて白目を剥いているエレインの頬を、ホムラは鋭い爪で突く。
「こいつの話によると、そのアレク?とかいうクソ野郎が率いるパーティは、近々ここ70階層のボスの間、つまり俺に挑みに来るってことだろ?まあ軽くボッコボコにしてやるとして…こいつをどうするかだよなあ」
ホムラはうーむと顎に手を当てて首を傾げる。そしてニヤリと悪戯を思いついたように笑った。
「ろくなこと考えてないでしょ」
アグニがじっとりした目でホムラを見上げている。
「いや?パーティに捨てられるぐらい弱ぇなら、そいつらを見返せるぐらいまで俺が鍛えてやろうかと思ってな」
ホムラの目は新しいおもちゃを手にした子供のように燦々と輝いていた。
一方のアグニは、ゆるゆる首を左右に振りながら、やっぱりろくなことじゃない、と深い溜息を吐いていた。
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