第3話 カラーボール

 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。


 ボールがオレの鼻先を通り過ぎる。

 オレは伏せたまま、目だけでボールを追った。

 ボールは壁にぶつかって止まる。


 パパさんを見る。

 カメラを構えている。


 これを追えって?

 ……仕方ないなぁ。

 取ってくるだけだぞ。


 壁際で止まっていたボールを咥えて、パパさんに渡す。

 こんなんで本当に、再生回数が多い動画なんて撮れるのかね。


 ボールを渡すと、パパさんがまたすぐボールを投げる。

 いい加減にしろよ、取ってくるの大変なんだから。


 ボールを渡すと、パパさんがまたすぐボールを投げる。

 ……なんか、テンション上がってきたぞ。


 ボールを渡すと、パパさんがまたすぐボールを投げる。

 もういっちょこーい。


 何回繰り返したかろうか。

 パパさん、かなりヘバっている。

 だが、終わりにはさせん。

 早く次、投げろ。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

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