YouTuber犬『みたらし』の日常

雪月風花

第1話 吾輩はYouTuber犬である

 オレは普段、自分を吾輩などとは言わない。

 初回ということで、夏目なんたらいう、昔の文豪を真似てみただけだ。

 深い意味は無い。


 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。

 名前はパパさんにつけてもらった。

 色がそれっぽいからという、単純な理由だ。


 カメラがオレに向く。

 どうやら今日の撮影時間らしい。

 撮影者はパパさんだ。

 ママさんはこの時間、仕事だ。


 パパさんは、YouTubeで一発当てることを夢見て、先月仕事を辞めた。

 オレの日常を撮影して、それで再生回数が稼げるのか、甚だ疑問だ。

 ママさんが働いてるから収入は確保出来るらしいが。


 今日の撮影報酬をもらった。

 ササミだ。

 うまい。


 ササミを食べながら、パパさんから昨日公開した動画の再生回数を聞いた。

 七回だってさ。


 まぁいい。

 オレには関係ない。

 エサさえ貰えるなら、なんでもいい。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

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