つぎはぎ
山田
境目
ビルが崩れていた。人が倒れている。空は赤茶色で、僕の知っている空ではなかった。僕の知っている風景ではなかった。
「見ろ。これが力だ。破壊こそが正しいのだ。」彼はそんなことを言っていた。彼がやったのだと思った。「なぁ、お前もそろそろ楽になろうぜ。闘って何になる。こっち側に来い。」
知らない誰かがガレキの下敷きになっていた。伸ばした手だけ下から飛び出ている。きっと最後に助けを求めたのだろう。誰にでもない、神かなんかにでも。なんだか胸が苦しくなった。どうでもよかったはずなのに、怒りがこみあげてきた。こんな世界どうでもよかったのだ。クズとゴミにまみれた世界なんて、めちゃくちゃに壊れればいいと思っていたんだ。そうしなきゃ誰も気づかない。でも、なんだか許せなかった。この苦しみも、怒りも、きっと正しいものじゃない。あっていいものではない。だから、もう1回拳を握りなおそう。今だけでいい。目の前にいるこいつをぶっ飛ばす。それから考えればいい。なにもかもを。
「俺をぶっ飛ばしたところで何になる? またゴミ溜めのような世界を作り上げるのか? こいつらはわかんないんだよ。自分のことしか考えてない。自分さえよければ、他がどうなろうと構わないのさ。そんな人間を守ってどうなる? またつけあがって支配だのなんだのし始めるのさ。だから壊すんだ。そしてまた作り上げる。こんなクズ共がのさばらないような、健全な世界をな。」
「お前になにができる? お前は答えを持っているのか? 中途半端な場所にいて、いったい何を成せるっていうんだ?」
「中途半端でも、なんでもいい。お前が間違っているとかも俺にはわからない。でも、俺はお前をぶっ飛ばす。それが、俺の意志だ。」
拳をもう1度強く握った。なにが正解かなんてわからない。それでも、自分には、もう嘘をつきたくなかったんだ。
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