第68話 サプライズ

 ……は?


 これどういう状況?


 さっきまでスタジアムにいたんだけど……。


 なんか殺風景な白い部屋にいた。


「ここは……どこです?」


 あ、審判もいる。


 良かった。


 俺一人じゃないようだ。


 てか、ダンも倒れてるし。


 もしかしてこれ……なんかのサプライズか?


 ふっふっふ、俺は気づいてしまったぜ。


 きっと「新人戦おめでと~!」みたいな感じで祝福されるやつだ。


 手の込んだことをやりおるな。


 でも俺、ドッキリってちょっと苦手なんだよね。


 どう反応すればいいかわからんから。


 ちょっと目薬の用意を……って、目薬ないんだった。


 前世では常備してたのに。


――プシュー。


「うわおっ」


 部屋の中央から白い煙が吹き出してきた。


 おっ、サプライズが来るか?


 ばっちこーい!


「な、なんですか!?」


 審判が焦ったような顔をする。


 でも、俺は知ってるんだからな。


 これはサプライズなんだろ?


 審判の焦った表情も演技なんだろ?


 ついでに俺もなにか言っとこ。


「くっ、なにが起こってる!?」


 いかにも焦ってますよーって雰囲気を出す。


 やっぱりこういうのって、サプライズされる側のリアクションって大事だよな。


 ちょっと棒読みになったけど、まあ許容範囲内だ。


「うぐ……あぁぁぁぁ」


 ん?


 なんかヘンな声が聞こえてくるんだけど……。


「……ッ」


 審判の息を呑む音が耳に入った。


 煙が晴れる。


 顔がただれた男が部屋の中央で佇んでいた。


 えっと……これはなんかの見間違い?


「ああァァァァァァァ!」


 うわ~、見間違いじゃないよ。


 これがサプライズなの?


 ちょっと斬新すぎだろ!


 ハロウィンじゃないんだから。


 てか、こっちの世界にはハロウィンないし。


 もしかしてこれ、サプライズじゃないの?


「なんですか、あの化け物は……」


 審判の緊張が伝わってくる。


 目に魔力を集中させて男を見る。


 全身が真っ黒な魔力で包まれていた。


 こっわ。


「えっと……一応聞きますが、これドッキリじゃないですよね?」


「何を呑気なこと言ってるんですか」


「……すみません」


 怒られてしまった。


「アラン選手。ここは私に任せてください。私、こうみえても強いですから」


 おおー!


 審判さんカッコいいこというねー。


 んじゃ、任せた!


 まあ対抗戦の審判やるくらいだし、きっと強いんだろうな!


 審判が男に突っ込んでいく。


 そして次の瞬間。


「……ごべぱっ」


 審判が華麗に吹き飛んだ。


「……」


 ……え?


 審判がダンの横で、仲良くおねんねしてる。


 昼寝してんじゃねーよ!


 こうみえても強いって言ったじゃねーか。


 なんだよ、ごべぱって。


 瞬殺されとるやん!


「――――」


 男が俺を睨みつけてきた。


 こんなやつと二人っきりにさせなんよ!


 二人っきりになるなら、美少女とが良いんだけど!


「え~と、まずは話し合いをしません? 平和的に」


「……殺ず……あらん、ふぉーじょ……ごろじでやる……」


 え……? いま俺の名前呼んでなかった?


 俺ってそんなに憎まれてたの?


 てか、こいつ誰かに似てる気がする……。


 あっ、思い出した!


 サイモンだ!


「サイモン先生ですよね?」


「……」


 無言は肯定ってやつだ。


「お互い色々ありましたが、昔のことは水に流して――って、うわっ!?」


 俺が話してる最中に、サイモンが居合い切りをしかけてきた。


「……ッ」


 上体を反らす。


 鼻の先を剣が通り過ぎていった。


 ……あっぶねェ。


 あと少し遅ければ、首と胴体が離れてたわ。


 てか、人の話は最後までちゃんと聞こうよ。


 そう学校で習わなかったのかい?


 むしろ君、学校で教える立場だったよね?


 はあ……こんなのが教育者やってるとか世も末だな。


「ふうぅぅ……」


 サイモンが大きく息を吐き、剣を上段に構え、俺を見据えてきた。


 どうやら話し合いが通じる相手ではないようだ。

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