教え教わり悪くない

 ワシは、祟ってる奴と同じくらい深山さんと距離を近くする一環で、深山さんに料理を作らなきゃいけない。で、佐和水香さんがワシらに用立てられる仕出し料理は五葷生臭なしの精進料理のみ。なので、ワシは深山さんに、魚料理と鶏肉料理とおやつを作ることになった。

 深山さんに何食べたいか聞いたら「久しぶりに洋菓子が食べたいですわね」と言われたんだけど、社務所にはオーブンがなくて、コンロも一口しかない。それでも鶏ももの塩麹焼きとか、豆腐入りもちもちホットケーキとか、豆腐入りもちもちドーナツとか作ったんだけど(材料は佐和さんがお使いしてくれた)、四日目に「もっとバターの効いたお菓子が食べたいですわ」と言われてしまった。


『うーん、オーブンあったらクッキーとかパウンドケーキとか作れるんだけどなあ』


 ワシは腕組みして考えた。


「そのいんたーねっととか言うので、いいもの調べられませんの?」


 深山さんは、スマホもタブレットもまとめてインターネットって言う。まあ、ワシも祟ってる奴に教わらなかったらそれくらいの理解度だったと思うけど。


『調べてるけど……もう少し探してみる。ダメだったらごめん』


 しばらく探してみて、バター餅っていうのが鍋ひとつあれば作れそうとわかった。卵も砂糖もバターもあるし、後は切り餅と片栗粉があれば作れそうだ。悪いけど、また佐和さんにお使い頼もう。

 佐和さんに頼んだら「他になにかありましたら、まとめて買いますよ」と言ってくれたので、鶏ももと鮭の切身とローズマリーと胡椒もついでに頼んだ。

 いろいろ買ってきてもらって、ワシは早速バター餅を作った。餅を角切りにして、弱火にかけた鍋で水と一緒に練る。砂糖と卵黄を入れてさらに練って、なめらかになったら有塩バターの塊を入れて溶かしながら練る。片栗粉を少し入れてよく練って、片栗粉を打ったまな板の上で伸ばして、包丁で切り分けたら完成。


「あら、やれば出来るじゃありませんの」

「妾もご相伴に預かるとしよう」


 深山さんも九さんも、割と喜んで食べてくれた。ワシも食べた。甘いと言うより甘じょっぱい感じで、バターのコクと香りが効いててうまい。


「あなたは、いんたーねっととやらは割とできるんですの?」


 バター餅食べながら、深山さんに聞かれた。


『うん、まあ、調べ物したり、アニメとか動画見たりにしか使わないけど。あ、あと、SNSに料理の写真あげたり』

「そのえすえぬえすっていうのが、よくわかりませんのよ。弟子の化け狸がやりたがっているのですけれど」


 深山さんは首を傾げた。


『けっこう楽しいぞ! うちのやつは仕事でも使ってる。見るか?』

「ちょっと見せてくださいまし。よく知らないものをうちの弟子にやらせられませんわ」


 おやつの後、ワシは、組紐づくりを少し休んで、タブレットでTwitterとかMisskeyとかのやり方を深山さんに見せた。深山さんは操作方法がよくわからないみたいだったけど、驚いたり喜んだり、割と楽しそうだった。

 ワシも、令和のことを人に教えるの、割と楽しいことに気づいた。

 そっか、あいつがワシにいろいろ令和のこと教えてくれるの、あいつも割と楽しいんだ……。

 教えてくれて、ワシも助かってるしな……。これからも、知らないことあったら、あいつに教えてほしいな……。

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