第7話 浮遊機械都市キュービック ④
リオが帰って来た時、ガリヴァーのドッグでは既にヒデとドクターが発注した商品が続々と運び込まれていた。貨物室の入口で副長がテキパキと指示をだしているのが見える。
荷物を運ぶドローン達の邪魔をしないよう注意しながら副長に近付き、話しかける機会を待ってから声を掛けた。
「資材搬入を任せても大丈夫そうだな」
「はい、必要最低限の物は全て問題なく購入できました。それから嗜好品のリストなのですが、購入すべきかどうか判断をお願いします」
「あぁー嗜好品かぁ。必要ではあるけど必需品というわけでもないからなあ。うーーん。副長の判断で可能な限り購入しておいてくれないか?」
「かしこまりました」
「ヒデさんとドクターに話があるんだけど何処にいるのかわかるか?」
「二人とも食堂にいます」
「ちょうどいいな、差し支えなければ副長も聞いておいてくれ」
「はい艦長」
そのまま貨物室から艦内に移動し、通路を歩く。前部デッキにある食堂までは歩いて行こうとすると十分ぐらいかかるので、デッキ間を移動するリフトを利用してショートカットする。
食堂に着いた時、二人はまだテーブルについていた。
「艦長じゃないか。帰ってきたんだな」
「おかえりなさいリオさん」
「あぁ。二人とも買い物の方は順調だったみたいだね」
「すげぇ技術を見てきたぜ、ホロブースて言うんだがな」
「あれ凄いですよねぇ、この艦にも導入できないかなあ」
「よくわかんないけど後で副長に聞いてみたら?」
リオも席について、軽く息を吐く。頭の中でマスターとした会話の内容を思い出しながら「さて」と呟いて話の端を切り落とす。
「さっきマスターと話してきたんだけど」
「おうマスターてのはどんな奴だったんだ?」
「マスターはこのキュービックそのもの、キュービック全体がマスターだったんだ」
「そ、それはまたスケールが大きいですね」
「俺達の旅も相当スケール大きいと思うけどな、まあそれはそれとしてだ。実はマスターから取り引きを持ちかけられてな」
「機械都市から直々に取り引きか、どんな内容なんだ?」
「この近くの小惑星帯にベクターが集まっているらしい、そいつらの殲滅を依頼された」
「ベクターの数は?」
「小型のやつが四百体らしい」
「報酬はなんなんですか?」
「二つある。まずは物資の追加補充、そしてもう一つが……俺の最上位権限だ」
――――――――――――――――――――
キュービックから二光年離れた所にある小惑星帯がセンサー範囲に入った。
ガリヴァーを近くの隕石に隠しながら広域センサーを起動する。
「敵の位置は?」
「方位一〇一三三の方向にベクターの反応があります。数は四六八」
「増えてるな」
副長が淡々と応える。どうやらまだ続々と集まってきそうだ。
いくら小型ベクターとはいえ一体一体の大きさは五十メートルを超える。それが四六八体となると数の不利がどうしようもない。あまりにも戦力差がありすぎる。
「どうやって倒すか、時間をかけると囲まれて不利になるよな」
「はい、固まっている今のうちに先制攻撃を仕掛けて、残った敵を順番に殲滅するのが良いかと」
「魔砲の準備は?」
「できています」
「どれを使うべきかな、俺達を助ける時に使ってくれたフレアブラスターはどうかな?」
「フレアブラスターですと周辺の小惑星帯そのものを消し去ってしまうかもしれません」
それは困る。何故ならこの依頼を出した理由というのが、この小惑星帯には鉱物が取れる隕石が豊富にあり、その採掘はキュービックにとって死活問題となるからだ。
フレアブラスターを使えばその鉱物がとれる隕石毎破壊してしまう恐れがある。
「代わりにこれでどうでしょうか?」
艦長席の肘掛けからウィンドウが表示され、そこに副長が代理案として出した魔砲の詳細が記されていた。
ざっと目を通したリオはそれが希望に添った魔砲である事を確認して「よしこれでいこう」と承諾する。
「方位一〇一三三、前面に光子スクリーン……シールドだったかな、を展開、速度は……ええと通常速度で。射程範囲に入ったら魔砲を放つ」
「了解、方位一〇一三三、通常速度でスクリーンシールドを貼りつつ敵に接近、魔砲を放ちます」
「速攻で終わらせるぞ、ガリヴァー発進!」
無人の操舵席が無音で操縦桿を動かす。合わせてガリヴァーが隕石の影から飛び出して真っ直ぐベクターの群れへと向かう。
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