帝国内乱~決戦の長い1日~
第一話
その日は、いわゆる秋雨が一日中降ったあとで、とても陰鬱で肌寒い夜になっていました。時刻はおおよそ読者さんの時の言い方でいう午後7時くらい。機動兵器や大砲、それに槍や弓等で完全武装した兵士たちが、次々とクラ城を出て、闇夜に消えていきます。
「ほら、とっとと行くにゃ!!!」
「聞こえません!!!」
「とっとと行くにゃ!!!!!」
「わかりました!!!」
当時クラ城は、いわゆる帝国西軍の全線司令部でした。それというのも、クラ城が水路、陸路両方において交通の要地であったために、迎撃するにも籠城するにも便利であったからです。ルッグは元々のクラ城主を口説いて城を借りてたわけです。
クラ城は今でこそ鉄筋コンクリートのゴツい作りですが、帝国内乱当時は優美な白いお城でした。
決戦の地はここから西に16キロくらい。闇をついて進む先頭はルッグ率いる6000ほどの部隊。それを30000くらいの味方が追いかけます。彼らの目的は
「どうやら敵は、クラ城 をスルーして帝都へと直接向かって、大義をえようとしている」
との情報が入り、密かに迎撃しようというのでした。
さて、そもそも承知のかたもいるでしょうが、帝国内乱の原因は帝国の柱石であるカンタールの死後、次代の覇者になろうとした天京院春見と、それを防がんとするカンタールの部下ルッグの対立であります(これは帝国内における
ルッグは機先を制して春見の勢力を抑えようとしましたが、あべこべに
そのために、彼はまずワカツ領主との連携を考えます。
「うん、OKOK」
(この領主さん、軽いんだけど、信用するしかないなあ)
ルッグは春見を挟み撃ちにせんと計り、クラ城まで進軍しました。
そのために、じっくり作戦を立てたルッグは、3ヶ月前ついに動きだしました。
すなわち、ワカツへの遠征のスキをついての挙兵でした。
なお、この挟み撃ちが意図的であるという俗説がありますが、すくなくとも遠征以前の音信は存在しません。
が、『わたしたちも油断なく仕度しています。帝都のも有力な味方がいますので、安心してください。あなたの主君にも別の文書でお伝えするので、よしなのお取り次ぎくださりませ』と、ワカツ領主の補佐役続次郎への書簡が残っているため、挙兵後のは交渉があったようです。
さて、このように書くとさも予定通りに進んでいるようですが、この時点でほころびがすでにでていました。
と、いうのも天京院方(後に東帝国軍と呼称されることになりますので、以下のそれ
でわたしたちも呼ぶことにしましょう)の戦力を削るために、人質を取ろうとしましたが、まずそれが破綻したのです。
あるものは2重底にした樽に隠れて、あるものは重臣の仮病で出入りを行ったり来たりしてる中に紛れ込んで脱出しました。
最終的に人質作戦を中止した理由が、ある武将の妻が
「わたしは人質になんかなりません!!!」
と、言い放つや屋敷に火をかけて自害してしまったという事件です。これによって、混乱をさけるために、人質作戦は中止されることになりました。
さて、天京院春見討伐のためにルッグたちはかれへの弾劾した檄文を公表しました。いくつか内容をあげると
『ワカツ領主に何の咎もないのに、出兵した』
『褒美をあたえるのは合議によって決めるとやっているのに、独断で褒美をあたえている』
『カンタール夫人を追い出して、そのあとに自分で使っている』
『私心のないルッグ氏を追いつめるようなことをした』
『勝手に縁組をしている』
『若い衆をせんどうして、徒党を組ましている』
と、いったものでした。
かつてそれを抗議された春見は
「ああ忘れてた、注意するよ」
と、適当に受け答えしました。
さて、檄文に応じて集まった兵は95000くらいです。
ある武将がこう進言します。
「これだけ兵がいるんだから、待つのではなく、機先を制しましょう」
そんなわけで、クラ城を占拠することになりました。
その間に、天京院方のバルレフェルドの凄絶な戦死や、希代の文化人でもあったがゆえに生き延びたイルハムの話もありますが、それは別に語るとして、それに対して別働隊と戦っていた春見率いる東帝国軍が戻ってきたというわけです。
そしてマラテダラン川の戦いが発生します。
そのときルッグの部下のサコンが敵陣まじかのところに放火しました。その挑発に乗った東帝国軍の1部を銃撃が浴びせられ、バタバタと兵たちが倒れます。
それを見た春見は、撤退を命じます。
さて、西帝国軍は前哨戦のマラテダラン川の戦いで勝利したものの、その後は東帝国軍の動きに手をこまねいていました。
それというのも、ルッグ自身がテモワン等の友人しか信用出来なかったというのもあります。
本来、西帝国軍の指揮者であった小早川元隆は帝都で傍観していますし、トラノスケを初めとしたルッグを嫌う面々は東帝国軍にいました。
また、この西帝国軍に合力する帝近臣の珠洲島、柏木といった面々も天京院に内通しているという風説があるといわれているが、そうおもわれてもしかたないと語っています。
つまるところ、これはルッグが西帝国軍をはじめとした帝国首脳陣にとっては、あくまでもカンタールの陪臣、官僚であって領主や帝近臣の風下に立つ立場だということで、それは彼の立場で常に問題となっていました。
不安要素が山積みながらも、西帝国軍は進撃します。
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