大怪獣バトル
「ゴアアアアアアア!!」
両腕をガッ!と上げて恐ろしげな雄叫びをあげる一つ目巨人に、チンピラ三人は揃って腰を抜かしてしまう。
「ひいっ!?」
「なんだよあの化け物はぁ!?」
「あんなの無理無理!!」
おいおい、ついさっきまでの威勢はどうしたんだよ。
「全く、先ほどまでの威勢は何だったんだ」
「呆れるニャ」
「ホントっす」
怯えるチンピラ三人に辛辣な言葉をこぼすアンナとチャオとサラ。
その一方でクラリスがこんなことを。
「だけどあの目を見るだけで、こっちが気張ってないと圧倒されそうだよ……!」
「どうやらあいつがスキルで威圧してきてるみたいね」
そんなスキルがあるのか!?
『そうね。さしずめ自分より弱い相手に恐怖を植え付ける、精神系のスキルってところかしら』
考察を念話で送ってくれるアリシアに、俺は納得がいく。
なるほど、だからこの中で一番レベルの低いチンピラ共が怯えてるのか。
ここはあいつがどれだけ強いか見てやるぜ。
鑑定したらこんな感じのが見えてくる。
個体名:なし
種族:サイクロプス
レベル:45
体力:1700/1700
筋力:3000
耐久:1200
知力:100
抵抗:800
瞬発:220
想像はついていたがこれはゴリゴリの物理アタッカーだ、物理方面が軒並み四桁いってるぜ。
『アリシア、ここは俺がなんとかする。ビビり散らかしてるチンピラ共はお前に任せた』
「え、任せるってあんた!?」
よろしく頼むぜ、アリシア。
「え、ちょっと待って。あいつデカすぎじゃない!?」
背後ですっとんきょうな声をあげるアリシア。
そういえばあいつの前で巨大化するのは初めてだったぜ。
「ドゥルルルル……!」
「ゴルルルル……!」
サイクロプスと目が合ったのもつかの間、俺がすかさず地面を蹴って突進した。
「グルウウウウン!!」
まずはこれだ!
燃え盛る牙を向いた
「グルウウ!?」
さすがは物理攻撃四桁、凄まじいパワーだ!
だけど俺には短いながらも腕がある!
すかさずスキル
瞬発が低い割には反射神経いいじゃねえか。
「ググルルル……!」
「ゴグググ……!」
力任せに押し相撲を繰り広げる俺とサイクロプス。
だけど素のパワーではサイクロプスに分があるのか、俺の足元がジリジリと押されてしまっていた。
「――
お、強化魔法サンキューだぜクラリス!
身体に光のオーラがまとわれたところで、俺は力を振り絞ってサイクロプスを押し倒した。
「ゴガガガ!?」
「グギャオオオオ!!」
これでトドメだ!
まばゆく白光り牙で、俺がサイクロプスの顔面に食らいつく。
奴も必死で抵抗はしたが、俺が頭を噛み潰した途端に奴の豪腕も崩れ落ちた。
ついでに顔面の肉を食いちぎって飲み込むと、こんなアナウンスが。
【サイクロプス撃破によりスキル
お、これがアリシアの言ってたサイクロプスのスキルって奴だな?
思った通りだ、このスキルでチンピラ共は恐怖に震え上がったってわけか。
でもこれは使えるぞ、うっとうしい雑魚もこれひとつで無力化できるってことだからな。
『ずいぶん嬉しそうね』
『お、分かるかアリシア?』
『ええ。そんなデカい図体でスキップ踏んでたら嫌でも分かるわよ』
え、俺そんなことしてたの?
ちょっと恥ずかしいかも。
気を取り直して振り返ると、クラリスが俺の足元に駆け寄ってきた。
「やっぱりすごいよダイナ! あんな強そうな魔物も簡単にやっつけちゃうんだもん!」
「ドゥルルルル」
へへっ、素直で純粋な羨望を向けるクラリスに見つめられたら俺もちょっと照れ臭いぜ。
『よく言うわ、クラリスの魔法がなかったらちょっとヤバかったのに』
『うるせえっ』
アリシアの奴、いっつも一言多いんだよ。
『それであいつらは無事か?』
『ええ。あんたが単独で相手してくれたおかげでこっちも無傷よ』
そいつは良かった。
ホッと安堵の息をついた矢先、今度は向こうからおびただしい数の反応が迫るのを
「グルル!」
「来る、ニャ!」
チャオもまた猫耳をピクピクさせて、次なる敵の襲来に感づいたようで。
「どうやらこのチンピラたちはまだ役に立たなそうね……、世話が焼けるわ」
また頼むぜアリシア。
そしてチンピラパーティーを除く全員が身構えた直後、正面からおびただしい数の大きなサソリがゾロゾロと迫るのが見えた。
外のサンドスコーピオンとは色も形も若干違う、これは要確認だぜ。
個体名:なし
種族:ヘルポイズンスコーピオン
レベル:30
体力:200/200
筋力:400
耐久:200
知力:200
抵抗:300
瞬発:350
能力もサンドスコーピオンより一回りも強くなってやがる。
それから俺の
数の多いこいつらは取り巻きってことか、それなら俺が奥の親玉を叩くぜ!
まずは手に入れたばかりのスキルだ、
念じるや否やヘルポイズンスコーピオンの足が止まって、踵を返して一斉に退却し始める。
だけどあの数だ、逃げようとするサソリたちがもみくちゃになって立ち往生してるぜ。
「グルウウ!」
後ろを振り向いた俺の目配せに、クラリスが反応してくれた。
「オーケー! ここはわたしたちに任せてよ!」
やっぱクラリスは味方として心強いぜ。
それから俺は
超特急で向かった先でドッシリ構えていた親分は、ヘルポイズンスコーピオンをそのまま十倍巨大化させたようなデカい魔物だった。
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