第4話 ゆるふわエルフのクラリス
「ク……っ」
全身を包む激痛をこらえながら、俺はよたよたと歩く。
くそっ、痛すぎるぜ……。
個体名:なし
種族:リトルレックス
レベル:9
体力:3/34
筋力:42
耐久:21
知力:16
抵抗:12
瞬発 :22
ステータスを見てみると、体力がもうたったの3しか残ってない。
体力が0になったらどうなるんだろう。やっぱり死ぬのか……?
頭をよぎる死の恐怖を紛らわすようにひたすら歩き続ける俺だけど、ついには脚を動かすのもキツくなってしまった。
だんだん意識が遠のく中で、俺はもう限界が近づいてるのを悟り始めた。
俺、このまま死ぬのか……?
静かに意識を手放そうとしたその時だった、カツカツと軽快な足音がこっちに近づいてくるのを感じる。
何だろう、この漂ってくる優しい気配は……?
重いまぶたを再び開けると、しゃがんでこっちを見つめる少女の顔がボンヤリと見えてくる。
「――大変、ひどい怪我……! 待ってて、わたしがすぐに治してあげる!」
聞いたこともない言語のはずなのに自動で日本語に変換される言葉でそう告げた少女は、俺の小さな身体に手をかざしてこう唱えた。
「――
ヒール、それって回復魔法か……?
俺の思った通り、少女の手から放たれる優しい光を浴びて身体の痛みが少しずつ和らいでいくのを感じる。
そして彼女の手から光が収まったとき、俺の身体から痛みがきれいさっぱり消えていた。
「クケッ?」
二本の脚で立ち上がると、身体が驚くくらい軽い。
体力:34/34
おお、体力も満タンになってるぜ!
「クカカ! クカカ!」
「良かった、無事に治ったんだね~」
全快した身体でピョンピョンと跳び跳ねる俺の前で、少女は和やかに笑う。
改めてよく見るとこの女の子、かなりの美少女だ。
艶やかで腰にまで届く長い金髪をロールした感じのツインテールと、宝石みたいにキラキラとした緑色の瞳。
ヨーロッパの民族衣装みたいな服装からはち切れんばかりな二つの胸の膨らみには、俺も思わず目が釘付けになってしまう。
だけど一番目を引いたのは彼女の耳。なんと横に向かって長く尖っているのだ。
まさか、これがいわゆるエルフ耳なのか!?
「ん、どうしたの? わたしの顔に何か付いてる?」
もきゅっと頭をかしげる様子もすごく可愛い。
そんなことを感じてたら、彼女の頭上にいつものテキストが表示されていた。
クラリス・グリーン
【エルフ】
おお、本当にエルフきたーー!
そんで上にあるのは俺でいう個体名みたいなものか。
なるほど、クラリスね。可愛い名前じゃねえか。
……だけどエルフってもう少しスリムでスタイルがいいイメージがあるんだけど、目の前のクラリスはだいぶ肉付きがいい印象を受ける。
とにかく目の前のエルフ少女に興味津々な俺だけど、当のクラリスはすくっと立ち上がってスカートを翻しながら踵を返した。
「それじゃあね。森へお帰り」
そう告げてこの場を去ろうとするクラリスを、俺はその足に噛みついて引き留めようとする。
正直自分でも驚いてる、だけど身体が反射的に動いたんだ。
「んっ!? ……きみ? どうしたの……?」
振り向きながらそう問いかけるクラリスに、俺は目で訴えかけた。
こんな美少女とみすみすお別れなんていやだ!
その思いが通じたのか、向き直ったクラリスが俺を抱き上げる。
「もしかして、わたしと一緒がいいの?」
「……クカッ!」
クラリスの問いに俺は一声あげてうなづいた。
「そっかあ! それじゃあ一緒に行こっか」
そう言うが早いか、クラリスは俺の小さな身体をむぎゅーっと抱きしめる。
わぷっ!? 俺の顔を包み込むクラリスの豊満なおっぱい!!
同時に鼻腔をくすぐる清々しい香り。
これが女の子の感触なのか……!!
ほんわかと漂うお花の雰囲気も相まって俺はすっかり骨抜きになってしまう。
「えへへ、いいこいいこ~」
ああ、耳に優しい声と一緒に頭をなでられて夢心地だぜ。
「そうだ!」
何かを思い立ったのか、クラリスが俺を下ろしてこんなことを。
「一緒に連れていくんだもん、名前を付けてあげた方がいいよね」
細くきれいな指をあごに添えて少し考えたのち、クラリスがこう告げた。
「ダイナ、きみの名前だよ~。どうかな~?」
ふむ、ダイナか。ダイナソーとかダイナミックのダイナ、いいじゃねえか。
「クカッ!」
その場で小さく跳ねて肯定を示すと、クラリスはにっこり微笑む。
「決まりだねっ」
【個体名ダイナ、承認。個体名を獲得したことにより能力に補正が入ります】
次の瞬間、俺の身体に今まで感じたことのない力がみなぎってくるのを感じた。
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