第13話


 急に増えた冒険の仲間は朝からよく食べてよくしゃべる。

「なあ、どこいくんだ最初は!?」

 朝ごはんを大量に平らげたかと思えば、今度はこれからでる旅のことしか考えていないらしい。

「それは、リーダーである日向がお決めになることだ」

 俺がそう言うと、大河は日向に興味津々に聞く。

「おお!リーダー!どこへ行くんだ!」

「ふふん、まずはモアイですよ、仲間よ。モアイのいる島で冒険をするためのエネルギーを貰いに行くのだ!」

 そして、日向は得意げに大河に言うではないか。

「おおおおーーーさすがリーダー!」

 昨日は再会と同時にすぐ喧嘩していたくせに、同じ目的があると案外仲間になれるものなのだろうか。子供の心は複雑そうで案外単純だ。

 昨日はあの後みんなで夕食を食べて、俺は大河と同じ部屋で就寝した。強そうに見えてやっぱり小学三年生なのだろう、夜中にトイレに行きたくなった大河は「怖い、一人無理かも」と俺を頼ってきた。

 ちなみに大河はちゃんと服や生活用品はリュックに詰めてきたらしい。きちんとたたまれたパジャマまで昨日は出てきて相当おじいちゃんが協力していることが分かった。


 そして、日向と大河は冒険へと出かける為、今は準備中だ。

「日向、それはなんだ」

「水鉄砲とビー玉。あとスーパーボールもいる」

「なんでだよ」

「おい、冒険にアイテムは必須だろななしぃ」

「そ、そうか」

 俺的にはよくわからないが、冒険のアイテムを自分たちのリュックに詰めてモアイ像がたくさんある施設へ行くらしい。大河や日向にしかわからない世界が今は広がっていた。


 俺は夏美さんに借りた車で二人を乗せて走ること三十分ちょい。

 目的の冒険のスタート地点へと辿り着く。


 着いた途端日向と大河は楽しそうにモアイ像のそばまで駆け下りていき、大人の俺にはよくわからない謎の呪文や遊びを繰り返していた。


「俺はとくに要らないってか……」

 どうやら冒険メンバーに俺はいないらしい。

 もしかして、俺はもう倒されたことになっているのか?

 初日にもはや日向に潰されているし。

そんなことを考えながら特に何も言われないので安堵しながら日陰で座り休んでいると、俺のところへ、なにやら真剣な顔で二人が走ってきて言った。

「おい、モンスター!仲間になったんだから協力くらいしろ!!」

「え、やっぱ俺仲間なんじゃん……」

 正直こんなくそ暑い中で俺には冒険とやらは出来そうにないのだが。

「日向が初日に倒したから仲間のモンスターになったはずなのに!サボってる!」

「いや、俺は君たちみたいな勇者ではないから休む権利がある」

「あ、ずるい!一人だけ!」

「倒したら仲間は強制的だよ!!」


「なんだそれ……」


 辛いことに、俺は灼熱のような太陽が降り注ぐ中、一日中日向と大河の冒険に付き合わされて、家に帰った時には真っ赤に日焼けして、へとへとになっていた。

 日向と大河はどうやら冒険の仲間として友情が芽生えたらしい。

 帰ってからも七星旅館で楽しそうに過ごしていた。


「ま、いっか。二人が楽しそうだし」


 子供の体力や気力って無限で単純すぎる。


 複雑だと思っていた日向の世界もその周りの世界も案外向き合ってみれば単純なのかもしれない。

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