第3章 盾の会~元王太子の場合

第10話 エルフの女騎士

チュンチュン。


意外にも元王太子の朝は早い。

「「姫様、おはようございます。」」

「ええ、動きやすい服に着替えをお願い。」


クソ田舎だけど、空気はうまいな。

夜更かしと寝坊は、美容と健康に悪い。やっぱり規則正しい生活が基本だな。朝の爽やかな空気を吸いながら散歩し、色とりどりの花が咲く庭園でストレッチをすることでぼーくの健康は維持される。


軽い運動・朝の入浴・バランスのよい朝食、なんて優雅な生活なんだ。王都の喧騒はぼーくにとっては騒音でしかない。小鳥のさえずりで心も澄んだ気分だ。


最近、家臣達から淑女らしくなりましたねとか、姫様って所作に優雅さと気品が出てきましたねとか褒めらるな。ぼーくの内面から滲み出る高貴さのせいだな。


ただ、この髪はいかんな。

毛先が痛んでいる。どんな手入れをしていたんだ、あのエロ釣り目は。

嫌がらせに綺麗にしてやろう。


さあ、ストレットをして体を起こそう。


ん?誰かいるな。

「あら、いつもの方かしら。おはよう。」

「これは姫様、おはようございます。騎士団所属のペタンララです。」


エルフの女騎士だ、なかなか美しいな。

体も引き締まっているな。


王都追放から、ガイル王国の西の辺境であるベルン公爵に来て1週間、ようやくここでの生活にも慣れて来た。不健康な生活だったリズムを戻すため、毎朝6時から1時間、ゆったりとした散歩を日課にしたんだけど、たまにこの見目麗しいエルフの騎士と出会うんだ。


シャーシャー。


今日も庭園の花に水やりをしてるんだな。

騎士団の制服で水やりをしているせいで、服に泥がついている。


「あなたのそれは精霊魔法なの?」

「はいそうです、一応エルフなんで精霊魔法は得意なんです。」

「わたーしも手伝うわ、水魔法得意なのよ。」


シャーシャー。


なんかいいな。

綺麗な女騎士と2人並んで朝の花への水やり。

こういう女の子とはもっと親しくなりたいな。


「じゃあ、わたーしは一足先に戻るわね。」

「手伝いありがとうございました、姫様。」


   ♦



チュンチュン。


元王太子の朝は騒がしい。


「お~、騎士落ちこぼれのペタンララは今日も水やり当番か。」

「他の女騎士みたいに動けないからな。」

「唯一の特技が精霊魔法だし。」

「水でもかぶっとけ。」


ザッパ~ン。

ギャハハハ。


「あなた達、何してるの!」

「やっべぇ、姫様だ。逃げるぞ。」


あいつら許せんな。

ぼーくの大切なペタンちゃんを虐めるとは。ペタンちゃんが水びたしじゃないか。ぼーくに泣き顔を見せないように、必死に耐えているじゃないか。意地らしいな、こんな時は慰めてあげるのが紳士だ。


「ペタンどうしたの?わたーしに言ってみなさい。あそこのベンチに行くわよ。」

「すみません、姫様。」


なるほどな、ペタンちゃんは剣と精霊魔法の腕を見込まれて騎士団に入ったのか。辺境の地で人手も少ないので、公爵領の騎士団には女騎士も多い。


だがペタンちゃんは基礎体力がなく、騎士団の基礎訓練についていけずに落ちこぼれと呼ばれ、水やり当番を毎日強要させれたあげくに虐められてたんだな。


「くしゅん。」

「これはごめんなさい、わたーしと一緒にお風呂に入るわよ。」

「でも・・・。」

「命令よ。」


クハハハ、エルフの女の子と一緒にお風呂入ることができる。まさに僥倖、男の体だとこうはいかないけど、女同士だから問題なし。体の隅々まで磨いてあげようぞ。


チャプン。


「もっと近くに寄りなさい。なんでそんな隅っこにいるの。」

「姫様の体と比べると、私の身体は貧相なので恥ずかしいです。」

「大丈夫よ、その綺麗な肌をよく見せて。」

「はい。」


しかし、この子の体シミ一つなくて綺麗だな。ぼーくの肌とはハリ・滑らかさが全然違うぞ。美の探究者としては、その秘密を解き明かさねば。


「ねえ、ちょっとあなたの肌触ってもいい?」

「ひゃい。」

「うわ~ツルツルのスベスベだわ~。教えなさい、どうしたらこうなるの。」

「多分、温泉に毎日入っているからだと思います。」

「どこの温泉?」

「このベルン公爵領は温泉で有名ですから、街の外れに公衆温泉があります。」


初耳だぞ、これはぜひ体験してみなくては。しかし今は折角のお触りタイム中だし、いろんな所をサワサワしてみなくてはいかんな・・・・。


「姫様・・その・私・・姫様の胸を触ってみてもいいですか?」

「ん?いいわよこんなもの、いくらでも触りなさい。」

「うわ~大きい~。やわらか~い。」


ハアハア。


なんかこの子、様子が変じゃないか。お風呂のせいなのか、頬も赤くて息遣いが荒くなってきてるぞ。大丈夫か?


「ちょっと、ペタン。あなた具合悪いの。」

「あっ、すみません姫様。実は私、男の人より女の人の方が好きなんです。昔からみんなに変だと言われるんです。やっぱりおかしいですよね。」


おっとこれは大チャーンス。

まさかのレズっ子だ~。

正直アリだな、女の体になったのだから経験せねばいかん。

男の相手は気持ち悪いし・・・。


「おかしくないわよ、わたーしも女の子大好きよ。決めた。今日の21時にわたーしの部屋で夜伽の相手をしなさい。メイド服で誰にもばれないようにしなさい。」


ウヘヘヘ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る