王太子は悪役令嬢

どこでもジャージ

第1章 婚約破棄は・・・

第1話 雷鳴 side悪役令嬢

「ガイル王国王太子フューネルはここに宣言する。レイアーズ公爵令嬢との婚約を破棄す・・・・・・・・」


ピカッ。

ゴロゴロバッシャーーーーーーーーーーン。

ドーーーーン。

パリーーン。

ビューーー。

ザーザー。


「「「キャーーー。」」」

「なんだ?」

「雷が落ちたぞ!」

「ガラス窓まで割れたぞ。」

「騎士団を呼べ。」

「怪我人はいないか。」

「王太子殿下、大丈夫ですか。」


ビビったぁ・・今の雷はかなり近くに落ちたわね。

折角いい所だったのに。

ようやくあのナヨチンバカ王太子のフューネルから婚約破棄を言い渡されて、自由の身になる場面だったのよ。

宣言後に、泣き崩れて(ウソ泣きだけど)王太子に縋りつくまでの私の演技プランが台無しじゃない。


その後、バカ王太子のフューネルとエロボケ子爵令嬢のアンナから断罪される場面が無いじゃない。


まず、王太子のフューネルが言うのよ。

『聞きたいか? なぜこの先輩方のこの卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されるのか、その理由を。』


エロボケ子爵令嬢のアンナは王太子の後ろから目に涙を浮かべて、甘ったるい声で会場中に聞こえるように私に言うの。

『どうしてレイアーズ様は、私に意地悪ばかりされるのですか? 平民出身の私がお嫌いなのですか。』


更に、王太子の側近の宰相の侯爵子息でクソメガネのアレクがメガネをクイッとしながら見下したように断罪するの。

『多くの令嬢方からレイアーズ嬢の悪行の証言を得ている。アンナ嬢の悪口を流布し、数々の嫌がらせを命じたという証言を。』


トドメは義弟でムッツリ出歯亀のクレスなの。あいつ公爵邸で私とすれ違う時や晩餐で私の豊満なわがままボディーをチラチラ見て来るの、見たいなら見たいってはっきり言えばいいのに。

『義姉さんは、アンナ嬢を噴水や階段から突き落としたよね。義姉さんの傲慢さや嫉妬深さはぼくが一番知ってるよ。』


まあ確かにエロボケのアンナには王太子の婚約者として色々厳しく言ったわよ。だってムカつくじゃない、婚約者でもないのにたくさんの殿方にベタベタするんだもの。でも、噴水や階段から突き落としてはないわ。あの娘、自分からダイブしたのよ。ダイバーよダイバー。


もういいの。

この王立学園の2年間で呆れ果てたわ。

ナヨチンバカもエロボケもクソメガネも出歯亀も今日でサヨナラよ。

公爵のお父様にもお母様にも根回し済よ、やっぱりホウ・レン・ソウよね。

明日から王立学園を自主退学して、公爵領でのんびりスローライフよ。


でも意外だったのは、筋肉アホの騎士団長子息のギルと宮廷魔術師長子息のロリヲタのマルスが中立の立場だったことよ。

あの2人コミュ症なのかしら、それとも私に惚れてるのかしら。


自分で言うのもなんだけど、私って目つきがちょっとアレだけど、赤髪・赤眼の美少女じゃない。しかも長身でわがままボディーよ、色気ムンムンなの。髪型はドリルじゃないわよ。


独り言が多くなったわね。

そろそろパーティー会場も落ち着いて来たみたいね。

さあ、婚約破棄と断罪の茶番劇の続きを始めましょう。


そろそろ起き上がってと・・・


「あれ?」


なんで私があそこに寝てんの?

なんか目線が違うわよ。

ここ階段上の王太子の場所じゃない。

あっ、私が起き上がった、私がキョロキョロしてる。

私は誰?

ここはどこ?

誰かが右腕を掴んでるわね。

ギョエーッ、エロボケのアンナじゃない。


「ねえ、フューネル様ぁ~。さっきの続きをしましょうよ~。早くう~。」


気色悪、上目遣いでこっち見んな。

ムニって胸を押し当ててんじゃないわよ、貧粗な胸よね。近くであんまり顔見たことなかったけど、金髪・青眼なだけでたいして可愛くないわ。チビで貧乳でガリガリじゃない、こんな女のどこがいいのかしら。


クソメガネも出歯亀も早く言えみたいな雰囲気で見るな。


スーハー、スーハー。

落ち着くのよ私、状況を把握しなきゃ。

え~っと、私の足は白いズボンね、上着はギラギラの王太子ルックね。

後ろに鏡があったはず、何気に鏡で自分の顔を確認すると・・・・


「・・・・。」


ん?

んんん?

ナヨチンバカで王太子のフューネルになってるじゃない。


考えろ、考えるのよ私、この場をなんとか収めなきゃ。


「あ~諸君、雷鳴で先輩方の卒業パーティーが一時混乱したようだが、怪我人もないようだし、このままパーティーを継続しようと思う、いかがかな?」


パチパチパチパチ。


「私とレイアーズ公爵令嬢は、雷鳴で一時気を失っていたようなので、婚約者同士別室にて一時中座するが、諸君はそのままパーティーを楽しみ給え。」


「さすがは王太子殿下、その心配り流石でございます。」

「え~続きは~。」

「ぼくは義姉上を別室に連れて行きます。」


グッジョブ、クソメガネ。

エロボケ、黙れ。

出歯亀、私の身体に触んじゃねえぞ。


しかし、どうしてこうなった!





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