証言
「私は殿下に点数を改ざんするように命じられました!!」
校舎中に響き渡るよう大きな声で叫ぶ臨時教師。同時に顔を赤くしたり青くしたり、アレは忙しそうです。
「なるほど……その改ざんができていなかったので私のせいだと思った訳ですね」
「違う! コイツが嘘を言っているんだ!」
「そうですわね。殿下の命令を無視するとは思いませんがまだ怪しいです。それなら、『なぜ行方をくらましたのか』聞いてみるのはどうでしょうか。都合の悪い事を話してくれるかもしれませんよ」
――あなたにとっての……ね。
私の本意に気がつくことなく、アレは妙案を思いついたと言わんばかりに嬉々とした顔をする。
「あ、ああそうだな。おいっ! なぜ行方ををくらましていたんだ! 今度こそ嘘をつくなよ。私は第一王子である事を忘れるな!」
「殿下に命令された事を果たせなかったからです! お金を積まれましたが私にはできそうにありませんでした!」
「……お金には手を出したのですか?」
お金……民の血税ですら自分のために使いますか……。彼がそのお金に手をつけていたら少し面倒ですね。彼を救い、一方的にアレを追い詰めることができなくなります。まぁ、両方叩き落とせば良いだけの話ですが……。
「お金にも手をつけていません! ですが、王命に失敗した私は殺されてしまうと、もし運良く殺されなかったとしてもこの職にはもうつけないと思ったら逃げ、逃げるしか……逃げるしか思いつかなかったんです!」
彼の心からの叫びに周りから同情のような視線が向けられる中、1人だけ殺意に満ちた視線を放つ男が1人。
「ふ、ふざけるなよ! お前たちコイツの首を刎ねよ!」
そんな無茶苦茶な命令に誰も従わない。殿下の命令を守るべき騎士達ですら、もう誰も動かない。
「クソっ、どいつも使えない奴らめ! 私は第一王子だぞ! この場で一番偉いんだぞ! その私を……。もういい! それなら私直々に首を刎ねてやる!」
子供の癇癪のように馬鹿な事を叫びながら、腰に帯びた剣を手にとり、臨時教師に斬りかかろうとする。が、近くにいた騎士に難なく取り押さえられる。
念のためにアレの足元に落ちた殿下の剣を手に取ると違和感を感じた。
剣の先を指で触っていると、感じていた違和感の正体に気がついた。
「ローズ様なにをっ!?」
慌てるもう1人の騎士に剣を奪い取られるが、流石は騎士という事でしょう。私が気づいた違和感にすぐに気づいたみたいです。
「木刀……ですか?」
「おそらく……、誰が渡したのか、それともすり替えたのか、アレが人を直ぐに斬りかかるような愚か者だから替えたのか、それとも……」
「……団長に報告しましょうか」
このままでいいでしょう。正直にそう言いたい所ですが、これはあの馬鹿だけで収まる話ではありません。
王族を狙う者がいる。その可能性だけで危険なのです。
「……お願いします。ですが必ず口頭で、2人で話してください。それも自然な感じに……」
「分かっています。それよりもローズ様は……」
「私にも優秀な護衛がいるので心配ありません。それよりも貴方の相方は大丈夫ですか?」
「それはどういう意味で……す……」
視線の先にはこちらをものすごい形相で睨みながら殿下を絞め落とそうとしているもう1人の騎士の姿が。
殿下は顔を真っ青にしながら口から泡を吹き始めている。
「で、殿下!? お前何をやっているんだ。早く殿下を離せ!」
「うるさい! 俺が殿下を止めている間にちゃっかりとローズ様と話しをしやがって! 羨ましいぞ!」
「せめて言葉を選べ馬鹿! 周りに誤解されたらどうするつもりだ!」
そんな騎士達のやりとりを呆れながら見ていると、何者かが走り去っていくのが見えた。しかし、その者の髪はこの場に居る筈のない銀色だった。
――ティア?
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