マチュアの章・その12  冒険よりも楽しいです

 異世界に来て初めての調理。

 『居酒屋風カレー』を作っての販売は、兎に角売れまくった。

 この辺境都市ベルナーは、かなり美味しい料理を食べることが出来る食の都でもあるらしいが、そこの人々を釘付けに出来るほどのカレーを作れたのである。

 しかも、この世界には存在していないか、しても貴重な香辛料をふんだんに使ったカレーだ。

 調理師としては最高の感動である。

 白いご飯があれば完璧であったが、まだ『米』があるかどうか市場を確認していなかったのである。

 

「ふぁぁぁぁぁぁ」

 ゆっくりとベットから起きるマチュア。

 隊商から貰った休暇は、残りは今日と明日の二日間。

 この二日間で兎に角いろいろな料理を作ろう。

 この街から出たら、また暫くはゆっくりと料理する時間なんて取れないのだから。

 そう思って、床に並べてある調味料の入った壺を確認する。


――ブゥゥゥゥゥゥゥン


 まだ発動したままなので、一度仕入れに出るとしよう。

「さてと、結界は問題なしと。それじゃあ出かけましょうか」

 と、その時。

 ふと思い出し、無限袋から『カレーの入った寸胴』を取り出す。

 そして恐る恐る鍋の蓋を空けて中を確認する。

「よし、零れていない。温度も昨日のままだ」

 無限袋の中は時間が進んでいない。平衡感覚も時間が止まっているのでそのままになっている。

「ああ、ラノベの知識って本当に役に立つ。ありがとう向田さん」

 と祈りを捧げる。

 が、ふと考えた。


 古今東西のラノベというものが、実は本当は誰かの体験してきたことで、それを自伝のように綴ったものだったとしたら?

 事実、マチュアのいる世界の神は、他にも異世界はあると告げていた。

 もしこの仮定が正しければ、あのラノベの主人公達にいつか何処かで会えるかもしれない。

 寧ろ、それは仮定ではなく現実だろうという確信さえ、頭の中で巡っている。

 真実を知るものは、全て神のみ。

 今度じっくりと腹を割って話をしてみたいものだ。


 そんな事を考えつつ、頭を振って現実に戻ってくるマチュア。

(あーあ。この考えはこじらせすぎだ。まずは今の自分の現実からいってみようか)

 ということで、いつものように一階で軽く食事を摂る。

「あ、あれ? 昨日の露店のねーちゃんか。ここで泊まっていたんだ」

「あ、本当だ。昨日の『ナジミテイノカレー』とかいうの美味かったよ。今日も売るのか?」

「夕方には俺達は外から戻ってくるから、その時はまた美味いもの食べさせてくれや」

 と気軽に声を掛けてくれる3人の冒険者。

 これから城壁の外へ向かうようだ。しっかりとした装備をしている。

「多分今日も同じところで営業していますので。それでは」

 と告げて、マチュアはそのまま酒場を出た。

 目的は、昨日に引き続き市場での仕入れである。


「チキンカレーが作りたい。あとトマトが欲しいな」

 カレーにもう一味入れたいので、トマトの水煮ホールトマトを作りたい。

 ということで市場の探索である。

 まあ、流石にトマトや米といったものはなかったが、肉屋の前を通ったときにいいものを見つけてしまった。

「あ、ノッキングバードだ。すいませーん」

 カナンで初心者冒険者が受けた依頼に付き合ったときに見かけた、巨大な鳥『ノッキングバード』。

 それの肉が売っていたのである。

「へいいらっしゃい。ノッキングバードかい? 腿肉と胸肉どっちにする?」

「腿肉を、その固まり一つ分下さい」

 と大体6kgはあるだろう巨大な塊を一つ購入。

 さらに今日はチーズと牛乳、ヨーグルト、足りなくなった野菜、そして昨日の倍以上のライ麦パンを購入し、一度宿へと戻っていく。

 その途中‥‥。


――ヴヴヴヴヴヴヴヴッッッッッ


 頭の中に響く警告音。

「この音は‥‥泥棒だっ!!!」

 部屋に仕掛けてあった『広範囲セイグリッド敵対者警告エネミーアラート』が、警告音を発している。 

 急いで宿へと向かっていくと、ちょうど宿の前でなにやら喧騒が聞こえている。

「だーかーらー。あの部屋のねーちゃんに頼まれたんだってばよっ」

 20歳前後の男が、宿の主人に取り押さえられている。

 その近くでは、戦士と思わしき人物がロングソードを引き抜いて、主人の捕まえている男に向かって構えていた。

「あのお嬢ちゃんの部屋は鍵付きのいい部屋だ。それを見越して鍵開けの道具まで持っているとは、昼間っからとんでもない野郎だ」

「いま巡回騎士が来る。それまでじっとしていろ」

 と一騒動になっている。

「な、何事ですか?」

 と何も知らない風に、姿を出すマチュア。

「ああ、お嬢さん、こいつがあんたの部屋に忍び込もうとしていたんだ。この戦士が見つけてくれたおかげで何も取られていないと思うが、念のため部屋を確認してくれ」

「あ、は、はい。それでは」

 と告げて、取り敢えず部屋へと向かう。

 鍵を空けて室内に入ると、床においてある調味料の入った壺を確認。

 すでに魔法の発動は終わっていたのか、淡い光は全て消えている。

「よし、全て無事と」

 取られそうなものは床に置いてあったこの壺だけなので、数を確認して無限袋にしまい込もうとした。

 その時。


――バンッ!!


 突然扉が開き、覆面をした男の姿が現れる。

 その手にはナイフが握られており、こっちに向かって凄みを聞かせた声で呟いた。

「大きな声は出すな。その壺が異国の香辛料だな。それを全て渡してもらおうか」

 と告げて室内に入って‥‥来れない。

 まだ『広範囲・敵対者警告』の魔法は解除していないのである。

「あ、なるほどね。あっちは囮ですか」

「う、煩い。死にたいのか?」

 そう静かに呟きつつ、盗賊は見えない壁に向かってナイフを振り落とす。

 どうやらそこに結界があるとは理解しているらしい。

「うーん。香辛料が目当てとは、やっぱり昨日目を付けられていましたか。でも残念でしたっ」

 静かにモードチェンジをして『修練拳術士』にクラスを変える。

 そのままフゥーーーと呼吸を整えると、一歩踏み出す!!


――ダンッ!!


 踏み込みから、両手の掌で盗賊の胸元に素早く掌打を叩き込む。『双掌打』と呼ばれている『修練拳術士』のスキルである。

「グハッァッ」

 口から血を流し、そのまま後方に吹っ飛ぶ盗賊。

 背中から廊下の壁に吹き飛び、盗賊は壁の一部までめり込んでしまった。


――ドゴォッ!!


 そしてその音は外にいた者達にも聞こえた!!

「二階で何かあったぞ!!」

 と、気がついた客や冒険者が次々とこちらに向かってきているらしい。

 その間にも、盗賊はなんとか逃げようと起き上がる。が、呼吸が乱れているらしく、ゼイゼイ言いながら立ち上がるので精一杯だった。

「ち、畜生っ‥‥異国の香辛料さえ手に入れれば、一生遊んで暮らせるのに」

 それはマジですか?

 とも一瞬考えたが、そんな物体無いことはしない。

 何より遊んで暮らすという感覚は、申し訳ないが無い。

 やがて駆けつけた他の冒険者たちによって、目の前の盗賊は取り押さえられたのである。


「おとなしくしろ。いま巡回騎士に突き出してやるっ!!」

 と盗賊はそのまま連れ出されてしまった。

 マチュアもその後ろについていって外に出ると、そこには巡回騎士が3人その場にいたのである。

「貴方が被害者でしたか。こいつらは、このベルナーでは結講有名な盗賊でして。被害はなかったですか?」

「特に盗まれたものはありませんし。大丈夫ですね。それでは処分はお任せしますので」

 と告げると、巡回騎士は盗賊たちを連れていった。

「しかし、お嬢ちゃんが昨日噂になっていた異国の料理人とはなぁ。うちの酒場でも評判だったぞ」

 と酒場の主人が話しかけてくる。

「ええ、まあ。あ、そうだ、皆さんのお陰で何も取られなかったのですから、せめてお礼を」

 と話しかけて、一度酒場へと戻っていく。

 そしてテーブルの上に先日仕込んだ寸胴のカレーを取り出すと、木製の皿を借りてそれに注いだ。

 遅れて戻ってきた主人や盗賊を取り押さえてくれた冒険者たちにも、木皿のカレーを差し出すと。

「宜しかったらどうぞ」

 と一言。

「そうか。それではせっかくなので」

 と主人はスプーンでカレーを一口。

「むっ、こ、この味は!!」

 と何か言いたげだが、あえて無視。

「昨日噂を聞いて食べに行ったんですけれど、もう店が閉まっていたんですよ」

「この匂い、いままで食べていた煮込みは一体何だったんだという感じですね。肉も柔らかく煮込まれていますし、最高です!!」

 ガツガツと食べているのを見ている、この匂いにつられて酒場を覗いている者達がいるのに気がついた。

「あとはまた露店で売りますので、それでは失礼します。本当にありがとうございました」

 と礼を告げて、マチュアは露店の場所へと向かっていった。



 ○ ○ ○ ○ ○ 

 


 本日のメニューは、ヨーグルトとチーズをふんだんに使った『ノッキングバードのチキンカレー』と、昨日と同じ、『ワイルドボアのスタンダードカレー』である。

 手順は昨日と全く同じ、違うのは途中で寸胴と木皿などを多めに買ってきて、時間を掛けて仕込んでいるという所。

 実質、昨日の仕込みの倍量を作っているのだが、それぞれ2つめの寸胴までは昼前に仕込みが終わっていた。残りの二つずつもあとは煮込んでお終いである。

 どうやらスペシャルアビリティの『調理師』は『GMレベル』に設定されているので、全ての作業をより効率化してくれているらしい。

 一瞬でジャガイモの皮むきを終えるなど、漫画やアニメ以外のなにものでもない。

 正午になると、噂を聞きつけてきたのかかなりの人が列をなして並んでいた。

 その中には、『ギャロップ商会』の従業員や、責任者のマルチも並んでいた。

 次々とカレーを盛り込んでは、代金と引き換えに渡す。

 そしてマルチの番になって。

「あ、あれ? 異国の料理人ってマチュアかい」

 と笑いながら話しかける。

「そうですよ。この前話したじゃないですか。料理は得意だって」

 と告げてチキンカレーを注いだ木皿を渡した。

「これなら、うちの隊商の食事も美味しいものが食べられそうだねぇ」

「仕込みに3時間かかりますよ。そのあいだは動けなくなりますけれど、それでもよろしいのでしたら」

 とこちらも笑って返答する。

「それは無理だなあ、それじゃあごちそうになりますか」

 と代金を支払って、マルチたちも近くの木陰へと移動した。


「ねーちゃん、なんか楽しそうだなぁ」

 と隣の露天の、リザードマンのおじさんが笑いながら話しかけてきた。

「これがいいのですよ。時間をかけてじっくりと仕込んだ渾身の料理が売れていくのが、それを美味しそうに食べているのを見ているのがね」

 そう呟きつつ、寸胴二つが空になった時点で昼食の分は売り切れとした。

 そのまま『簡易設備オープンキッチン』はそのままに、機材や調味料、午後の分のカレーの入った寸胴などは無限袋に収納して昼休みとした。

 自分の作ったものもいいけれど、たまには別のものも食べたいし。

 午後の仕込みに使う食材も仕入れないといけない。

「しっかし、冒険しているときよりも、いまのほうが生き生きとしているなんて、本当にワーカーホリックだよなぁ」

 と笑いながら市場へと向かうと、午後の分の仕入れを行いまた戻って仕込みを行う。

 マチュアにとっては、現実世界と同じ日常が戻ってきていたのである。

 


 ○ ○ ○ ○ ○



 翌日も、前日と同じペースで朝一番に市場へと向かう。

 明日の正午にはこの街を出発するため、いつもより大量の食材を仕入れると、次々と無限袋に放り込む。

 調味料を入れる壺もさらに大きいものを仕入れ、魔力を余剰に注ぎ込んでいつもより大量の調味料を仕込んでおいた。いつ何処でも調理できるようにと、必要な準備は全て終わらせておいたのである。

 そしていつもの場所で露店を開くために、公園へと向かって行った。

「あ、おはようさん。今日も元気そうですね」

 とマチュアの隣でアクセサリーを売っている獣人・リザードマンのおじさんがタバコらしきものを吹かしながら話しかけてきた。

「ええ。おかげさまで。食事は取りました?」

「いや、まだだよ」

 という言葉と同時に、マチュアは無限袋から予め仕込んでおいたカレーを取り出すと、それを木皿に入れて手渡した。いつでも食べられるように、寸胴一つずつはストックとして作っておくようにしたのである。

 お陰で、何時でも何処でもカレーが食べられる。

 毎日、寸胴一つずつストックを追加しているので、その気になれば隊商の途中でみんなに振る舞うぐらいの量はある。が、それは緊急事態用だ。

「朝食どうぞ」

「あ、済まないねぇ。で、今日はカレーじゃないんだ?」

 

 仕込みを開始した私の方をみて、リザードマンが問いかけた。

 今日は大量のヨーグルトを買ってきたので、タンドリーチキンを作ろうと思う。

 ライ麦パンも大量に買ってきてあるので、いつもの寸胴カレーは3つずつ仕込んで販売は二つだけ、あとはタンドリーチキンを挟んだサンドイッチ『タンドリーサンド』を作ろうと思っている。

 エッグサンドも造りたかったのだが、タマゴの鮮度がいまいちなのでそれはパスした。

 昨日の夜に予めヨーグルトと香辛料に漬け込んでおいたノッキングバードを、適当な大きさに切って焼く。

 その間に、今日追加したヨーグルトに香辛料を合わせた漬け込みベースのタレを作り、次々とノッキングバードを漬け込んでいく。午後には味が染み込むので、夕方には焼けるだろう。


――ジュウウウウウウッ


 と『簡易設備オープンキッチン』に付属している炉から、鶏肉の焼ける香りがしてくる。

 と、まだ昼でもないのに、フラフラと人が集まり始める。

「今日は鳥料理かぁ、一つ貰えるかな?」

 と話しかけてくる客もいる。

「すいませーん。昼の鐘がなったときからの販売ですので〜」

 と謝りつつ、仕込みを続ける。

「そう言えば、今日、お嬢ちゃんが来るちょっと前に『マリア・ベルナー家』の侍女みたいな娘がカレーを買いに来ていたなぁ。今日はまだ来てないよって話しておいたから、また後からくるんじゃないかな?」

「はっはっはー。とうとうここのお貴族様までカレーの噂を聞きつけてしまいましたか」

 ドヤ顔でそう呟くマチュア。

「お嬢ちゃん、なんか物凄い悪いこと考えている顔になっとるぞ」

 というリザードマンのおっちゃんに突っ込まれて、我に帰るマチュア。

 そのまま昼になって『チキンカレー』と『タンドリーチキンサンド』の販売を開始した。


………

……


 そして夕方。

「此方が異国の料理人の露店でしょうか?」

 と、ゴシックメイドの格好をした女性が、露店に姿を現した。

 ちょうど注文も一段落していたため、対応はすぐにできたのである。

「はい。本日は『ノッキングバードのカレー』と『タンドリーチキンサンド』となっています。ご注文は幾つですか?」

 と問いかける。

「当家の当主様は、カレーというものを所望しています。この寸胴一つ分頂けますか」

 おおっと買い占められた。

 まあ午後の分も余裕を持って作ってあるし、無限袋には作り置きしたストックもあるので、寸胴一つ分買い占められても問題はないが。

「それではこちらを。寸胴は戻さなくて結講ですので」

 と値段を告げると、金貨で代金を支払われた。

 そして後ろで控えていた従者が、二人がかりでカレーの入った寸胴を持って立ち去っていくのを見送った。

「今日は貴族のパーティーかな?」

「さあねぇ。お嬢ちゃん、タンドリーサンド一つおくれ」

 と近くの露店の人が晩ごはん代わりにサンドイッチを買いに来る。

 そのまま日も暮れ始めた頃、ちょうど本日分のカレーとライ麦パンが切れたので、いつもより早く閉店となった。

 明日の昼には、この街から出るのである。

「宿に戻って、タンドリーサンドでも大量に作り置きしておこうかな。焼き置きしたタンドリーチキンもまだ一杯残っているし」

 ということで、帰宅途中にパン屋に立ち寄り残っているライ麦パンを全て買い占めると、宿に戻ってタンドリーサンドを大量に作り置きする。

 そして使用した調味料を魔法で補充すると、今日はゆっくりと休むことにした。

 


 ○ ○ ○ ○ ○  



 翌日の午前中。

 作り置きした調味料を無限袋にしまい込み、この町で買えそうな様々な食材を仕入れてから、マチュアは商人ギルドに向かっていく。

 露天の割符を返しに行くためである。

「おはようございます。割符を戻しに来ました」

 と受付で割符とギルドカードを提示する。

 いつもの元気のいい受付嬢が、割符とギルドカードを確認した。

「はいお疲れ様でした。それで一つお尋ねしていいでしょうか?」

「はい?」

「マチュアさんは異国の料理人ですよね? この街に定住とかはしないのですか?」

 と問われるが。

「まだ隊商の仕事も残っていますし。また仕事の途中でこの街に来ることはあると思いますけれど、定住は考えてはいませんねぇ。どうしてですか?」

 と問い返す。

「えぇっと。街の噂で、マチュアさんの露店のサンドイッチとかいう料理がすごく美味しいと聞いていまして‥‥」

 ああ、食べたいのか。

 ということでしたら、ごちそうしましょう。

「食いしん坊ですねぇー」

 と笑いつつ、無限袋から『作り置き』しておいたタンドリーサンドを二つ取り出す。

「はい、お昼にでも食べて下さいね」

「あ、ありがとうございます」

 と真っ赤な顔でそう笑う受付嬢。

 そして昼近くなって、隊商の待機している停車場へと向かう。

 途中でこっそりと『高位司祭』にモードチェンジするのも忘れずに。

「お、マチュアも来たか。これで全員揃ったな。それじゃあちょっと早いが出発するとしよう‥‥」

 とマルチが叫ぶ。

 その声と同時に、全員が定位置についた。

 護衛士と冒険者の不足分は、この町でさらに補充したらしい。

 時折こっちを見て笑っている冒険者もいるが、マルチが一言。

「この街でマチュアの料理を食べたやつに告げる。この隊商の食事当番にマチュアは加算されていない。あの料理は時間がかかる。ということであの異国の味わいを求めないように、以上だ!!」


――エ〜〜〜ッ

 という嘆きの声が彼方此方から聞こえる。

「マチュアさん、料理作っていたのですか?」

 とアンジェラに問いかけられる。

「あー、アンジェラは食べに来ていなかったよねぇ」

 ちなみに二日目には、ギャロップ商会に雇われていた殆どの冒険者たちはカレーを食べに来ていた。

 なのでアンジェラにも一つタンドリーサンドを上げることにした。

「はい、これが私の作った料理だよ。神聖教会の教義とかで食べられないものとかはある?」

「大丈夫です。これはどうやって食べるのですか? 皿とナイフが無いと」

 タンドリーサンドを受け取ったものの、どうしていいか分からないらしい。

 なので、もう一つ無限袋から取り出して素手で掴んだままガブリと食べる。

「ムグッモグッ‥‥んぐっ、こう食べるのさ」

「素手でですか!!」

 と驚くアンジェラだが、美味しそうに食べているマチュアを見て我慢できなくなり、マチュアを真似して食べ始めた。

 なお、一口食べた途端に表情が変わり、幸せそうに食べていたとだけ、伝えておこう。

 回りで羨ましそうに見ている冒険者は、この際無視ということで。

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