第46話

 街へ向かう方が生存確率が高い事がわかり、しぶしぶながら向かう中で振り返ると遠くの空は赤く染まっていた。それは未だに炎が燃え盛っているという証拠だった。爆発音はもうここまで響いておらず、あの二人がそのあとどうしたのか知る由もなかった。だが、振り返るとどこか不安になった。

 

「どうしたのヨーちゃん?」

「いや、このまま街に向かって、あの空のことを聞かれないかなと思ったんだ」

「あー、確かに……まあ、聞かれたら聞かれたで、いいんじゃない?」

「そうだね」

 

 僕たちは街へ向かっていった、遠目からだと都市だと思ったがどちらかというと廃墟に近く、近づくにつれて寂れているのがわかった。ただ、どの建物もガラス窓やドアなどがしっかりあり、今までいたような廃墟ではなかった。人が住んでいたような形跡があった。

 

「なんか廃墟だけど、街って感じがするね」

「確かに、街だね」

 マナチの方を見るといつの間にか厚ぼったい服に着替えており、僕も気を引き締めて銃を召喚して装備した。

 

 街に到着した時点での生存確率は70%だったので、割とまだ大丈夫な方かもしれないと思った。街そのものは、ビジネス街のような雰囲気があり、どの建物も五階建て以上で一軒家のようなものは見た感じ存在していなかった。網の目になった街ではないため、どこか入り組んでいるような感じがあった。

「地図とかあればな」

 ムッツーはぼやいた。

「とりあえず、警戒しながら……大通り沿いを目指しましょう」

 タッツーとみんなも賛成し、防護マスクをつけ、銃を召喚して歩き始めた。ハルミンだけは銃を持ち歩きできるような重さではない為、召喚はせず七人の中で中心の位置にいた。先頭二人はムッツーとタッツー、左右にマナチとツバサ、後方は僕とジュリだ。

 

「私も持ち歩ける銃だったらな……」

 ハルミンが不安そうに不満を言った。

「いざとなった時にハルミンの銃が一番力が強いんだから、その時になったら頼らせてもらうよ」

「そのいざって時がない方がいいけれどね」

 ムッツー、タッツーが彼女の独り言に反応していた。

 

 僕もいざっていう時がない方がいいと思った。歩きなれていた地面から前の世界でもあるアスファルトの地面に足を踏み入れ、街に入る。どの建物も鉄格子のようなシャッターが降ろされており、入れない建物ばかりだった。ガラス窓が割れている建物はほとんどなく、争ったような痕跡もなかった。

 生存確率を見つつ、歩いていくが特に変動もせず、この街に何があるのか不安がじょじょに高まり、心臓の鼓動も比例して心拍数を上げていった。

 

 大通りを探しながら、歩いていると埃を被った車が停められていた。中には誰も乗っておらず、タイヤがパンクしているのか、車と地面の隙間がないくらい車高が低かった。近くの建物は鉄格子のようなシャッターが閉められているが、外から中が見えないくらいバリケードみたいにいろいろ積まれていていた。

 

「何かこれはもしかして嫌な予感します」

 ツバサが言うと、ジュリも同じように言った。

「これはあれっぽいような感じしますよね」

「あ、わかった! ゾンビ?」

「そんな雰囲気ありますよね」

「ね!」

 マナチが言うと二人はニヤニヤとしていた。

「ゾンビ? ってあのゾンビか?」

 ムッツーは嫌な顔をしていた。

「死んでるのに、襲ってくるみたいな人ですね」

 タッツーが代わりに答える。

「気持ち悪いから嫌だなぁ」

 ムッツーはゾンビが苦手のようだった。僕もゾンビは好きじゃない、映画とかでちょっとだけ見る程度でゾンビの知識なんてないに等しい。ゾンビがアイドル活動していたり、そういう平和さがあればいいと思うけれど、この街でゾンビは嫌すぎる。

 

「ん、ゾンビだった場合……感染してゾンビになるのか?」

 ムッツーがツバサに聞いた。

「噛まれたりすると体内にゾンビ化のウイルスが入って、じょじょに意識がおかしくなりゾンビになるというのは定番ですね。あとは、注射器で何かされてゾンビにされたり、魔法的にゾンビにされたり、基本的に体外から体内に注入されてゾンビになってしまいます」

「この場合、ゾンビ化は検疫されるのかな?」

「洗脳の時と同じようにアビリティ・スキルが発動すれば、私たちはゾンビにはならないはずですね」

「よし、万が一にも接近される前に倒そう」

 ゾンビものでそういえば車の速さで走ってくるゾンビがいることを思い出し、ゾンビだったら嫌だなぁと思った。

 

 とりあえず大通りへと向かいながらあたりを警戒していたものの、ゾンビみたいな人影に出くわすわけでもなく、今までの道幅とは違った片方三車線の幅もある大通りに出た。時折、何か人の視線があるような、人の気配があるような気がし、あたりや建物を見たが見当たらなかった。

 僕は、気のせいではないと思い警戒した。それは他の人たちも感じているのか、あたりをキョロキョロしていた。

 

「やっぱなんか見られてるよね」

 マナチが言うと、みんな頷いた。

「とりあえず、無視して先に進もう」

「そうだね、相手も関わりたくないのかもしれないしね」

 

 生存確率も変動しなかったのもあり、僕たちは大通りから光りがある方へと目指していった。


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