第17話

 ツバサとジュリの方を見ると、二人してもじもじとしていたが、気にせず話しかける事にしようと思ったが大分暗くなってきたのもあって、今日はもう休む流れになった。

 

 特に明日の予定とかも決めずに、とりあえず休もうという形で今日は解散した。

 

 僕はテントに入り、着るものは毎日召喚で取り替えているものの、シャワーやお風呂に入りたいと思った。ペットボトルの水を下着にしみこませて、身体を拭いたりしているものの、さっぱりした感じがしない。簡易シャワーとか召喚できたりしないかなとふと思った。

 

 アビリティ・スキルの生活のところを見て、都合がいいようなものはないかと探した。

 

「ヨーちゃん、入ってもいい?」

「ん、いいよ」

 マナチは無警戒でまたテントの中に入ってきた。ようこそ、狼の家へ歓迎します。何もしませんけどね。

 

「何していたの?」

「簡易シャワーとかないかなぁと思って」

「え、あるよ?」

 なんだって?

「ちょっと狭くて最初は慣れなかったけれど、別に服を脱いだりするのも意識するとパパッと出来ちゃうし、髪を乾かすのはできないからあれだけどね。さっぱりするよ」

「ちょっとシャワー浴びてくる」

「いってらしゃーい、あ、私ここに居てもいい?」

「ん、何もないけれどどうぞ」

「やったー、ありがとう」

 

 僕はテントから出て、砂利の丘を登り、簡易トイレとかなく、テントから影になってる場所に向かった。そして、アビリティ・スキルの生活から簡易シャワーと意識すると発見し、すぐさま召喚した。

 服を着たまま、中に入り、カギをかけて服を消した。そして、シャワーを出し、温かさを感じたら全身をくまなく浴びて、石鹸やシャンプーなどあることに気づき身体を洗った。

 

 なぜ、こんなにせかせかしてるかって?

 身体を綺麗にすれば、そういう体験がしやすいからだ。清潔感というのはとても大事だ。

 

 僕は念入りに洗い、タオルもあるだろうと意識するとタオルも召喚され、身体を拭き髪の毛も綺麗に拭いた。多少湿ってはいるが、長髪じゃないのでタオルである程度乾いた。

 

 服を召喚しようと思い、ふと身体にそのまま召喚できるかもしれないと思い試してみると一瞬で着替える事に成功した。よし、これなら最中に何かあってもすぐに着替えられるから何も無かった事にも出来るから、慌てて服を着るという事をしなくてもいいじゃないかと歓喜した。

 

 さっぱりした状態でテントに戻ると、マナチは寝袋に入ってもうすでに寝ていた。

 

 入るときに反応が無かったから、そういう事だろうなと思っていた。そしたらその通りだったので、僕はそんなつもりじゃなかった案件だから、自分よ落ち着けと再度言い聞かせた。

 

 寝袋を召喚し、僕も寝ようと準備をしようとしたら、遠くで大きな爆発音が聞こえた。最初はそれが花火だと思ったが、ここは今までいた場所じゃない事を思い出し、すぐに外に出た。

 瓦礫の山の方が赤く光っており、僕は、砂利の丘を登り瓦礫の山の方がどうなっているのか確かめる事にした。ムッツーも同じ事を考えていたのか、僕の後に続いて砂利の丘を登ってきた。丘の上から瓦礫の山の方を見ると、そこは至る所に炎が見え、昼間のような明るさがあった。

 

「ムッツー、瓦礫って燃えたっけ」

「いや、燃えないと思う」

「だよな」

 

 僕は瓦礫が燃えているのを目にし、この砂利の砂漠なら大丈夫だよなと思ってしまった。さらにまた爆発が起こり、炎も一緒に段々と広がっていった。燃えるとは思っていなかった瓦礫も燃え、火の勢いが増していった。

 

「何、あれ……なんで火が……?」

 

 気が付いたら横にマナチがいた。周りを見るとタッツーやハルミン、ジュリとツバサも一緒に爆発と炎を見ていた。

 

「何が起きてるの」

 タッツーが不安げにムッツーに訪ねていた。爆発がいろんな場所で起きて、瓦礫が燃えているなんて見ればわかるが信じたくない光景だからつい聞いてしまったのだろう。

 

「あ、あれ見て!あれ!」

 ハルミンが指をさした方向は、爆発で瓦礫の山が崩れたのか、今まで見えてなかった大きな川といくつか橋が見えていた。その方角は光りがある方角だった。

 

「川があったのか……それに橋も……」

 ムッツーがつぶやくとまた爆発が起きた。光りがある方向とは反対側の方で爆発と炎が勢いよく起きていた。僕は何か嫌な予感がし、ムッツーに何か言おうとした。

 

「ムッツー、見て!砂利が燃えてる!」

 タッツーが瓦礫の山と砂利の砂漠の堺あたりで火の手が砂利の砂漠の方に回っていたのを発見した。ただの砂利に火が燃え移っていて、砂利の砂漠が火の砂漠になるのであろう勢いで回っていた。

 

「嘘でしょ」

 マナチが口を押えながらたじろいだ。

「やばい、このままだと火にやられる。逃げよう!」

 ムッツーが叫ぶ。

「まて、どこに逃げるんだ? あの橋がある方か?」

 僕が橋がある方を指でさす。

「ああ、今、他に逃げれるような場所はない。もし仮に……火がここまで来たら、私たちは死んでしまう。それに光りがあるあの場所に、何か手がかりがあると思ってる」

「……たしかにそうだな」

 僕はムッツーが言ったことに対して頷き、丘から降りて逃げる準備を始めた。すると他の人たちも丘から降りて火の手から逃げる準備をし、燃えていない方に向かって歩き出した。

 

「なにがなんだか、わからないよ……」

 ハルミンは歩きながら爆発があった方向から空が赤くなっているのを見て言葉が自然を口から出ていた。

「とりあえず火の手が回ってこなさそうなところまで行きましょう」

 タッツーがハルミンの手を引くことで、安心させようとしていた。

「大丈夫、きっと大丈夫」

 タッツーが自分自身に言い聞かせるようにハルミンに言っていた。

 

「ヨーちゃん、私たちが先導しよう」

「わかった」

 

 ムッツーとタッツー、そしてハルミンの三人が前を歩いていたが、僕が呼ばれたことでムッツーと二人で先導する事になった。

 僕はクリスベクターカスタムを召喚し、ムッツーに頷いた。しかし、彼女は銃を召喚しなかった。何かあったら戦うのは僕の仕事だと腹をくくった。

 

 これからあの燃え盛る瓦礫の山で起きる事が、銃を手にして自衛する必要なことが起きるのではないかという予感がしていた。心臓がドキドキし、正直怖いと思う反面、ワクワクしていた。


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