第14話
僕はその場に残り、デジタルカメラで何か他に動画や他のデータがないか確かめていたが、長い動画が一本入ってるだけで、特に何も入っていなかった。
マナチも見たいと言ってきたが、ショッキングな映像が流れるがそれでも見たいのかと問いかけたら一瞬悩んだが、力強く頷いたのでデジタルカメラを渡した。
その後、泣きそうな顔をして、口を手で押さえていた。
「大丈夫か?」
「ひぅ!? だ、大丈夫、し、知らないといけないと思うから」
「強いな」
マナチはつばを飲み込むと、真剣な表情で動画を確かめていた。
「あ、あ、あの……」
ツバサから声をかけられたと思い、振り向くと小動物のように震えていた。
「あ、ごめんなさい。なんでもないです」
いや、絶対なんでもないわけないだろう。多分、動画を見たいんだろうなと思った。
「ツバサとジュリも動画を見たい、であってるか?」
僕は口下手なオタクにもやさしい。なぜなら僕はボッチだったからわかる。すると二人はうなづいた。
「マナチ、ツバサとジュリにも見せて上げてくれるか?」
「あ、ごめんなさい。私ばかり見てて、一緒に見よ……って言っても全然楽しい動画じゃないけどね」
こうして三人で動画を仲良く見る事になっていった。
「ヨーちゃん、ちょっと話があるんだけど」
僕はムッツーから誘われたので、彼女の近くの椅子に座った。
「どうした?」
「今後の事なんだが、あの光りが見える方を目指し続けるでいいのかわからなくてさ」
確かに、他の生きてる人を探して合流していけば何かわかるかもしれない。ただその場合、その中で僕は間違いなくボッチになると思った。
「私が他に生きている人を探した方がいいと思ってるのはヨーちゃんにはわかっているものな、ヨーちゃんは人殺しがいるかもしれないのに、生きている人を探すのは愚策だって」
「な、なに」こいつは何を言ってるんだ?
「どうしようもなく、不安になるんだ。私たちは大丈夫だろうか、って」
「大丈夫だ、まずはあの光りがある方を目指そう。僕たち七人ならいけるさ」
他に人が増えると僕がボッチになる可能性が高いしね。
「ふふっ、ありがとう。あとはどうやって瓦礫の山の中を通っていくか、いや迂回するのもありか」
ムッツーは一人で考え込みはじめていった。
僕は動画を見ている三人の方を見るとまだ視聴中なのか、ホラー映画をみるような感じで三人ともくっついて見ていた。なにあれうらやましい。僕もくっつきたい。
「ヨーちゃんはやさしいな」え、なんだっていやらしい?
「え、なんだって?」
「あの三人を気遣ってるように見えただけだ」
「そ、そうか」
僕は無表情でいたが、どうやらムッツーは何か感づいた様子だった。これ以上、見ていたら何を言われるのかわかったものじゃないので視線を外し、空を見る事した。薄暗い曇り空だった。
「もういい時間だな、そろそろ寝る準備しないとな」
「ああ、確かに」
僕はテントを出し、設営にとりかかった。
これからどうするのか、明かりがある方を目指し、目指すにしても瓦礫の山がある場所を通るのか、それとも迂回するのか、話はまとまらなかった。動画を見ていた三人も見終えたころには、寝る準備も出来、各自夕飯を食べ、その日を終えた。
+
翌朝、昨日から話がまとまらないままだった為、今後どうするのかハルミンを含めて話し合う事になった。だが、誰もがこんな不気味でよくわからない所に居たくない、怖い、といった感情の吐露へと変わっていった。
「嫌だよ、行きたくない」
ハルミンが泣きはらした顔で言った。昨日、あのあとタッツーに何されたのだろうと妄想した。もしかしたらタッツーは女王様だったのか、母性本能はどこにいったんだ。
タッツーはハルミンの背中をさすっていた。どうやら女王様ではなかった。
「不気味で怖いよね」
マナチも青白い顔をしてつぶやいていた。よしよし僕が背中をさすってあげよう。
「ヨーちゃんと私で先行して道を探すよ」
ムッツーが突然僕を名指しするので、マナチの背中をさするタイミングを逃してしまう。理由はびっくりしたからだ。もちろん、内面はびっくりしたが表には出していない。
そんな中でツバサとジュリだけは、その中でただ聞いていただけだった。僕はこの二人も何か嫌だとか言うのかなと思ったりしたが、よく考えてみれば自分から発言するってやろうと思ってもできない。
そして、午前中は指針も定まらないままで終わり、空腹になったことでいったん休憩となった。
「ツバサとジュリは、どうしたいと思ってる?」
僕は食事中に二人に話しかけることにした。みんなの前だと恥ずかしいし、言いにくいと思ったからだ。大丈夫同じボッチ仲間だよ~と思ったが、よく考えると僕は二人の事を深く知らないからボッチじゃないかもしれない。
二人は目をぱちくりし、目が合うと逸らし、おずおずとしていた。二人は僕の耳を見て、目をそらした。僕は耳にピアスをがっつりつけているのを思い出し、彼女たちはピアスをつけていない。このピアスは学校ではボッチだけど外では友だちいるぜアピールのピアスで開けたものだ。
もしかして、怖がられてるのか……?
「いや、さっきの話し合いで二人とも黙ってたから、それでちょっと気になってさ」
「う、あの……帰りたい」
「わ、わたしも」
何てことだ、これではまるで僕が恐喝してるような状態だ。この状況はよくない。
僕は二人で横並びで座ってる前に椅子を置き、目線を合わせた。上から見下すような感じでの状況は何かひどく恐喝じみている。
「なあ、もしかして帰る方法を知っていたりしないか?」
二人は僕が何を言っているのだろうと心底恐怖してる表情をしていた。そうだよね、だよね、ごめんよ僕だって何聞いてるんだろうって思った。
「いや、この不思議なアーミーナイフの使い方とか見つけたから、こういう……なんというか脱出ゲームというか、そういう事に詳しいかなって思ってさ」
僕はなんとか謝ろうにも誤解を解こうにもうまく言えずにいた。指をくちびるで触りながら、どうしたものかと視線をキョロキョロさせた。
するとジュリが普通に会話してくれた。
「あ、動画を見て、多分、他にも人が飛ばされてると思います。そ、それで多分協力し合わないといけなくて……」
「あと一人になったら大量のネズミが出てきて、倒れた人を食べたことでした。たぶん、私たちは監視されていて、一人になったりしたら狙われるのかなと思ったりしました。それで、多分協力しないとダメかなって……」
そして、ツバサが次に喋った。
二人の息がぴったりでラブラブだなと思った。
「それで、その……自衛の、武器とか、ちゃんと使えるようにならないと、多分、その死んじゃうと思ってて、でも怖くて……でも、あの大量のネズミのし、死体は、多分あの人か他の人が、その殺したんだと思う」
ジュリは、喋りながらだんだん下を向き、言っている事に自信を持てなくなってきていた。どうやって殺したのかわからないのもあり、黙ってしまったのだった。
「僕もあれは大量にいっきに殺したものだと思ってる。それで僕たちもこれをちゃんと使いこなせるようにならないといけないのかなと……」
僕は不思議なアーミーナイフを取り出し、頷いていた。そして、銃を召喚したのだった。二人はびっくりし、ひぅという声を出した。
「あ、あっ、ごめんごめん驚かせてごめん」
僕が平謝りしたものの、二人は涙目になったままだった。やっちまった。
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