第9話
翌日、マナチと共に目覚めテントから出る。丁度、ムッツー、タッツー、ハルミンもテントから出てきてムッツーと目が合った。何か気まずそうな表情をされたが、こちとら何もない。マナチを見て見ろ寝ぐせついてるし、僕も寝ぐせがついている。
まさか、そっちは三人で何かあったのか?
などと考えたが野暮な事だと思い、椅子に座って朝食として栄養抜群のスティック状のお菓子とココア味のプロテインジュースを召喚した。
「ヨーちゃん、朝からそれ食べるの?」
「エネルギー蓄えておこうと思って、マナチもどう?」
「わ、私はやめておく」
マナチも椅子に座り、水と豆の缶詰を召喚し、もぐもぐと食べだした。
この召喚の便利な所は、ストリーやフォークや箸なども意識すると一緒に出てくる所だ。食べ終えた後はいらないと思えば消えてくれるので、ゴミをそこらへんに捨てずに済んだ。
二人で朝飯を食べているとツバサとジュリが起きだし、テントから出てきた。二人一緒のテントでアーミーナイフについて夜遅くまで調べていたのだろうか、とても眠そうな顔をしていた。
ムッツーたちも僕らと同じように朝食をはじめ、ジュリとツバサもそれに続いた。
昨日のことを思い出し、このよくわからない場所に来る前までまともに女子と話す事もなかったというかボッチだった頃を思い出して、今がモテ期なのかなと思った。無表情クールキャラを目指していたら、気が付いたらただの社交性ゼロの何考えてるのか分からないやつという位置づけになってた。
だが、今はなんかやっていけそうだと思った。
「ねぇ、ヨーちゃん……それ本当においしいの?」
僕は新たにもう一個栄養抜群のスティック状のお菓子を召喚し、マナチに渡した。僕は正直、美味しいとは思えないがもしかしたらマナチは美味しいと感じるかもしれない。
包装を開けて、ひとかじりする時に、僕は思っている事を口にした。
「僕は正直、美味しいとは思わないけれどもしかしたらマナチは美味しいと感じるかもしれない」
「……」
口に含んだ後に、とても微妙な顔をしていた。美味しくなかったようだ。
「すまない?」
「すまないじゃないよ! うええぇ」
マナチは口に残る味を顔と声で表現し、水が入ったペットボトルを出して口の中を洗った。
「残ったこれどうしよ……」
「消えろ、って念じると消えるよ」
「えっ、ほんと? あ、ほんとだ」
僕は、マナチに惚れている。だが、非日常的な状況だからこそ、情緒がそういう風になってしまうってモテたいが為にかったモテる為のハウツー本に書いてあった。僕はその状態になっているとわかっている。でも惚れちゃった。
だが、そんなつもりじゃなかったのに案件になる可能性もある。そうなってくると今のこの状況下でボッチ以上に過酷な状況になる。それだけは避けたいとなると、やはりここはいいお友達でいるしかない。
「食べ終えたら、この瓦礫の山がどんなところか探そう。準備が出来たら荷物を片づけておくように」
ムッツーがみんなにアナウンスした。僕は食べ終えるとテントの中に戻り、着替え、防具を身に着けた。するとテントにマナチが入ってきたので驚いた。丁度、着替え終えたので僕はテントの外に出た。
「先に外で待ってるな」
「うん、ありがとう」
さすがに同じ空間にはいられない。心臓に悪い。
僕はアーミーナイフを取り出し、これに不思議な力があるのかと疑った。特に普通のアーミーナイフだし、不思議な力があるかどうか、わからない。この見知らぬ場所にどうやってきたのかわからないが、アビリティ・スキルに表示されたものを召喚できる。
召喚が出来るが、このアーミーナイフのおかげかどうかはわからない。でも、なんとなくこれを手放してはいけない気がしていた。
程なくするとマナチが着替え終え、テントから出てきた。他のみんなも準備が出来たのか、テントやテーブルなどを消していった。来た時と同じようながらんとした空き地になり、ここにキャンプしていたという痕跡が残ってない状態になった。
ここに戻ってくるかどうかなんてわからないし、何か残しておくというのはなんか危険な感じがした。よくわからないがなんとなく、そう感じたのだ。
「よし、それじゃとりあえずあの光りがある方角に向かって探索していこう」
ムッツーが取り仕切るとみんな彼女についていった。
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