第20話
4日目の朝、金丸は旅館にあるレンタカーを借りていた。それもそのはず、昨日の看護婦の発言が気になったり、聞いた事が無い耳鳴りがしたりと、色々と謎だらけの伊勢旅行ではあるが金丸は少しずつなにかに気づきはじめていた。仁科を置いてまで、1人で伊勢病院へ向かった。
「おはようだにゃぁ」「西郷さん!おはようございます!」仁科が振り返る。「1人かにゃ?」「えぇ、先生は今日は1人でお出かけになりました。」「デートかにゃぁ笑」「どうでしょうか笑」
金丸はスマホのナビを使って伊勢病院に到着した。玄関の前に見覚えのあるスーツ姿の男性と見たことがない女性がいる。「八神!とりあえず、聞き込みにまわる。」「はい!」「メモをしっかり取ってくれ!」金丸「あれっ!?川下警部?」「おー金丸くんか?どうしたんだ?病院なんか来て、んっ?病気か?」「いえっ!ちょっと昨日色々ありましてね…」「野暮ったいな笑」八神はメモとボールペンを用意している。
金丸はサンセット夫婦殺人事件のアリバイ調査で仁科と共に川下警部と芝井警官に事情聴取されていて、面識があった。「川下さんこそ、どうかされたんですか?」「んっ!いやぁちょっとな、うちの部下がいいもの見つけたんだよ笑」八神「そんな、大げさな」八神にとってはごくありがちな聞き込みではあった。伊勢病院の心臓外科で2ヶ月間で3人の死亡者が出ている。皆、術後、3日後に亡くなっていたのだ。日頃から川下は事件は不自然だからというフレーズを繰り返し部下に忠告している。川下「いいか!事件は自然より不自然なんだ!!」朝礼で唱えるように声を張り上げて言うのは日課である。八神は同じ死に方をした不自然な所を上司である川下に報告したのだった。
金丸「いいものですか?」「あぁ、ただ事件に繋がるかはわからん、なんせ、自然に起きていてもおかしくはないからだ!」金丸「事件ですか…」八神「警部!直接執刀医にあたりますか?」川下「うーん、だな。」川下と八神は玄関に入り受付けの前で立ち止まった。川下はおもむろにスーツの内ポケットから警察手帳を出した。「どうも、伊勢の川下です!仁村先生いる?」受付「はっ!はい、少しお待ち下さい。えーと本日はどのようなご用件でしょうか?」川下「うーん、ちょっとね、大した事ではないんですよ。ついでに寄った程度ですよ。ほらっ最近伊勢が騒がしいでしょ、そんで色々と聞き込みにまわっとるんですわ。」受付「少々お待ち下さいませ。」金丸(仁村先生って月梨さんの先生じゃないか!?)川下「八神!こっからメモ頼むわ。」「はい!」川下は話しに集中したかった。八神は警察学校を卒業後すぐに地元の伊勢警察に勤務していた。3年目だが、川下が新人の時から面倒をみている。川下は八神の仕事に取り組む姿勢をかっていた。しばらくすると受付の事務員が戻って来た。「お待たせいたしました。二階の心臓外科までお越し下さいとの事です。」「あんがとさん!」2人は二階の心臓外科まで向かっていった。
金丸も一緒に行きたかったが、それはそれとしてまずは、昨日の看護婦さんを探し始めた。看護婦A「あらっ!」金丸「あっ!」たまたま受付けの方に歩いてきた。「昨日はありがとうございました。」看護師A「ヨミちゃんのお連れさんね。どうかなさったの?」「いや、昨日話しの途中でしたので、気になって気になって昨晩から寝苦しい思いでしたので、今一度確かめに来ました。」「何を?」「えーと、看護婦さん最近変ねってお話しされていましたよね?」「あぁ、その話は内部事情よ。別に外部のあなたには関係ないのよ。」「そーなんですが、私も一応医師をしておりますものですから…まっ!大した事では無いのですねハハハ」「そうよ、ちょっとした事よ、メスが突然なくなったり、あるはずの薬が減っていたりね。」「すっごく変じゃないですか笑」「そうよね笑、私達この仕事長いからちょっとした事でも気づいちゃうのよ。でも、病院には子供もいるし。無くはないのよ、そういうことも。私達も忙しいのよ。あなたならわかるでしょ。」金丸「そうですよね。大変ですよね。僕も東京帰ったら周りなんか見る暇もないくらいになっちゃってますねアハハハ」
一方心臓外科室では…「とするとセンセ、手術の失敗は無かったゆうことでっか!?」聞き込みの際、川下の口調は若干芝原の関西弁が入る。これも川下の戦略の1つなのかもしれない。仁村「はい。」仁村は静かに聞き込みに従っていた。川下「まぁ、センセ、今、世間が騒がしいもんで、上から隅々まで調べろ言われとるんですわ。」仁村「えぇ」八神はしっかりとメモをとる姿勢を取っている。その眼差しはしっかりと仁村を見ている。美人とは言い難い八神の標準顔であるが、陸上で鍛えたしっかりとした肉づきは少し威圧感すらある。「先生来る前は藪先生やったんですよね?ここ仕切ってたん?」仁村「はい。」「センセ、藪先生の事どう思っとったんですか?」仁村「藪先生は立派な先生でした。」「ふーん、そうですか。」聞き込みは終盤に向かっていった。「ほんじゃセンセありがとうございました。他にも色々と聞き込みいかなあきませんので、私らこれで失礼致します。今日は突然ありがとうございました。」「えぇ、お疲れ様です。」2人は部屋を出た。川下「◎(にじゅうまる)や八神、二重丸付けといてくれ」「はい。しかし、なんでマーク付けるんですか?」「どうも匂うんや」
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