不止家盛統記~ある地方貴族と守り役の御話~
@yamada0310
第1話 貴族戦争の火種はどの家にもある分家争いだった
貴族が力を握るこの世界。慶暦(けいれき)812年7月9日、嶋暦(とうれき)家は人上宮(ひじょうのみや)家とそれに与する貴族たちの連合軍と戦い、敗れ、滅亡した。世界の覇権を握る一門の座が人上宮家へ譲られたのである。そして同時にこの日は正暦1年1月1日になったのである。
そして正暦195年2月2日の今に至る。
不止家(ふし)領 巌見(いわみ)
「また、フラれた~。俺にゃ魅力がないのかねー。」
14歳の未来の当主が彼女にフラれたことをぼやきながら砂利の道をトボトボと歩いている。
「相手の方に見る目がなかっただけですよ、まだまだこれからです!」
私、新田寺起位守義忠(にったじのきいのかみよしただ)は起位(きい、不止家領南西部の土地)の長官も務めさせてもらいながら弱冠14歳の不止家第八分家(不止家初代当主の不止麿正(ふしまろまさ)の6男である不止安秀(ふしやすひで)が家を新たに建てたことから始まる300ある分家のうちの一つ)、通称第八不止家の嫡子、不止第八一郎鹿目親(ふしだいはちかずろうかめちか)さまに仕えさせてもらっている。
「名門の人間と分からなければ俺に対する態度もこんなもんなのさ、所詮。」
すっかり一郎さまはふて腐れてしまっている‥。何とか機嫌を直して頂かなければ、私はそう思って色々言った。
「あなた様はご尊顔が端正でしかも分家の中でも上位の9龍(麿正の息子たちが開祖の9家の分家)の次期当主、これ以上の要素がどこにあるでしょう!」
自分の考えうる全てのことを語りつくしたつもりである。が、一郎さまの機嫌はなおらない。
「だから、それがないから女にフラれたんだろが、しかも俺は父上に嫌われておる。俺が家立の学校に通わせてもらえずわざわざ素性を隠して庶民の学校に通っているのもそのためであろうが。実弟の忠清代(ただきよ、無孤次郎むこじろう)も外に出された、俺は廃嫡されるかもしれぬ!」
私もそれは知っている、御当主様(不止知地政(ちぢまさ、五徳君ごとくくん))が後妻の由里ゆりとその間に産まれた中児ちゅうじを可愛がり、一郎さまを疎んじていることは。そして、私はつい引き金を引いてしまった。
「私が何としても一郎さまを当主にしてみせます!」
と。
「ふーん‥。」
一郎さまの目が怪しく光った。私は三秒前の自分の発言に後悔した。
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