In the sea of data~蒼きDEAIに焦がれて~

かなた

Prologue

 目を開けると、眼前そこには見慣れぬ白い天井が広がっていた。


 周りは何かの専門用語が飛び交っていて、看護師と思しき白衣の男が声をかけてくる。


麻樹あさぎさん、目が覚めましたか?気分はいかがです? 具合の悪い所はないですか?」


 矢継ぎ早に質問してくる看護師に、少しぼーっとした頭を押さえながら、答える。


「はい。お陰様で。手術、成功したんですか?」


「勿論です! これであなたも今日からダイバーの一員ですね!」


 ダイバー。


 その言葉にそれまでボヤけていた意識が完全に呼び覚まされ、興奮が沸き起こる。


 ――やっとだ!子供の頃から夢見たダイバーに、遂に俺もなれたんだ!!


 情報ネットワーク上の仮想空間にし、使直感的にデータにアクセスする――いわゆるバーチャルダイブが俺にも出来るようになったわけだ。


『大人になれば誰でもダイバーになれるんだよ』


 子供の頃、父がそう言って見せてくれたコネクタは、憧れの対象だった。


 成人の実感をダイバーになったという事実によって今俺は噛み締めていた。


「コネクタ、見ます?」


「見たいです!!」


 食い気味に答える俺にニコニコと看護師が大きめの鏡を持ってきた。


 襟足の下辺りにバーチャルダイブ専用のコネクタを確認すると、


「すげえ……!!」


 思わずため息が漏れる。


「麻樹成司じょうじさん、以上で本日の処置は完了です。こちらがバーチャルダイブの際の注意事項や禁止事項、よくある質問等を纏めたものになりますので、必ず目を通しておいてくださいね」


 担当の医師がやってきて脈や血圧などを確認すると、リーフレットを渡してきた。


「それでは、お気を付けてお帰りください」


 お誕生日とご成人、そしてダイバーデビューおめでとうございます、と看護師が添えてくれる。


 医師と看護師に丁重にお礼を述べ、俺は帰路に着いた。


 帰ったら早速ダイブを試してみたいが、既に今日は夕方だ。夕飯、風呂など済ませたら明日の学校の準備もせねばならない。


 成人とはいえまだ18歳の高校三年生なのだ。


 ――ちょっとだけ、アバター作るくらいならいいよな。


 そう自分に言い訳し、寝る前にでも初ダイブしてみようと目論む俺であった。

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