第4話
「はぁ、ルシアにバレないようにするの大変だな……」
「トニー、何か言ったかしら?」
「いえ、何も言ってないです!」
危ない、思わず口に出してしまった。
最近ルシアは僕にベッタリで、僕がいないとすぐに探す始末なのだ。
「ふーん、なら良いんだけど……」
「それよりも、僕に何か用ですか?」
「用があるから来たんだけど、何でそんなに他人行儀なのかしら?」
「いや、だってここ宮廷魔導師の執務室で、今は仕事中ですよ?」
「だからよ!大体私とトニーの間柄なんだから敬語なんて使わなくていいのよ。それに、ここには私達しかいないんだし」
「それは、まぁ……」
「もう、つれないんだから。それとも何か言えない理由でもあるのかしら?例えば……私以外の女とか。」
「違いますよ!」
「なら、ちゃんと言ってみて」
「……わかりました。」
「うん!」
「ルシアさん、最近僕にくっつきすぎじゃないかなって……」
「あはは、ごめんごめん。トニーが可愛くてつい」
「勘弁して下さい……」
「はいはい、悪かったわよ。でもね、これは私の愛情表現なの。」
「知っていますよ。ただ、僕が恥ずかしいだけで」
「そういうところも好きなのよ。」
「はい、ありがとうございます…」
「本当に可愛いわ!。ねぇ、スキンシップしても……」
「ダメですよ!?」
「ちぇ、残念」
「まったく……」
「それで、話戻すけど、私がこうやって甘えれるのはトニーだけなの。他の人にはこんな風に接したりはしないの。」
「はい、わかっていますよ。」
「良かった……それでね、私ずっと思ってたの。」
「何をですか?」
「私ね、結婚相手がトニー以外考えられないの。」
「えっと、それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味よ。私ね、トニーが好きなの。愛しているの。初めて会った時から、私みたいなブサイクにも優しく接してくれて嬉しかったもの」
「そんな事無いと思いますけどね……」
「そう言ってくれて嬉しいわ!」
そう言ってまた抱きついてくる。
「ちょ、またですか?」
「嫌?」
「嫌ではないですけど……」
「ふふっ、トニー好きよ」
「はい、どうも……」
「むぅ、反応が薄いわね。もっと恥ずかしがっても良いと思うのだけど?」
「これでも十分恥ずかしいんですからね?」
「そう、でもこれからもっと恥ずかしいことするのに大丈夫?」
「……」
「あら、黙っちゃった。でも、私はそれでも続けるからね。さぁ、トニー目を瞑りなさい?」
「え?いやそれは…まだはやいよ!」
僕は慌てて逃げ出した。
いつものスキンシップも過激だが、あんな真っ直ぐ好意をぶつけられて動揺していた。
あのまま居ても仕事にならないし、パトロールの名分で散歩して落ち着こう。
そう思いながら歩いていると、そこには見覚えのある姿があった。
メアリー王女様だ。
メアリー王女は僕を見つけるとこちらに向かってきた。
「こんにちは」
王女は笑顔で挨拶をしてきた。
「はい、こんにちは」
僕も笑顔で返す。
「あなたはここで何をされてるの?」
「僕はちょっとした休憩を……メアリー王女様こそ、どうしてここに?」
「私は貴方に会えると思って…前に言ったでしょ次は逃がさないって」
「確かに言っていましたが、まさか本気だとは思わなかったもので」
「冗談に聞こえたの…?」
「いえ、あの時の顔は真剣そのものでしたので……」
「それなら良いの。それと、私の事は名前で呼んで欲しいの」
「それは……」
「お願い」
「わかりました…」
「それで良いの」
そういって僕の真横に密着してくるメアリー様。
「え、えっと……」
「何?」
「近いです…」
「えぇ、知ってるもの」
「そうですね……」
「うふふ」
「あ、そうだ。そろそろ戻らないと怒られちゃいますし戻りましょうか」
「嫌」
「いや、流石にそろそろ仕事しないと……」
「嫌、私と離れるのは許せない」
そういってメアリーの私室に連れ込まれる。
「あの、離して欲しいのですが」
「無理」
「そんなにくっつかなくても逃げませんよ?」
「信用できない」
「はぁ……」
「溜息をつくなんて酷い」
「すいません、でも今度からはもう少し加減してくれるとありがたいかなぁ…」
「善処する」
絶対嘘だと思う。だって目が笑ってるもん。
「私とも…スキンシップして」
「えっと、それは……その……」
「ほら早く」
急かすように言う。
「わかりましたよ……」
「それで良いの」
「じゃあ、失礼します……」
「んっ……」
メアリー様を膝の上に乗せる。
メアリー様は見た目どうり凄く軽くそして暖かった。
それにショートカットの髪からは良い匂いがして心地よかった。
「ねぇ、トニー」
「なんでしょうか?」
「もっと強く抱きしめて欲しいの」
「こうですか?」
「違うわ。こうよ」
そういってこちらに向きなおすように座り直し更にきつく抱きついてくる。
メアリー王女のぷにぷにとした柔らかい感触が襲い掛かってくる。
「ねぇ、トニー」
「はい」
「キスしたい」
「え?」
「ダメ?」
「それはだめだよ…」
「私、我慢出来ないの。トニーは私とするのは嫌なの?」
どうやって断ろうかと考えていると唇に柔らかい感触がした。
「ごめんねトニー。でも、こうすればきっと受け入れてくれると思ったの。」
「えっと……」
「これでわかったでしょう?。私がどれだけトニーを愛しているのか。」
「いや、それは……」
「まだ分からないの?」
「分かりますけど……」
「なら、問題ないわね。これから毎日沢山愛してあげる」
そういって首輪を僕に付けようとしてくる。
「ちょ、待って!?」
「待たないわ。」
「そんなの付けてたら外に出れないじゃないですか!」
「大丈夫、トニーが外に出る必要は無いもの。ずっとこの部屋の中で暮らして貰えばいいだけなんだから」
「え?いや、それは……」
「大丈夫よ。ちゃんとお世話は全部やってあげれるから。ね?」
メアリー王女は僕の頭を撫でながら言う。
「いや、そういう事ではなくてですね……あの、今日はこれぐらいにしておきませんか?」
「嫌よ」
「お願いします!メアリー様!」
「…仕方ないわね」
僕は必死の説得によりなんとか命を繋いだ。
「じゃあ、今回も見逃してあげるけど、何かあったらすぐに連絡して頂戴」
「わかりました」
メアリー様は心配そうな顔をしながら僕を見送った。
僕は疲労困憊で自室へと戻るのだった…
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