第22話 東国と水竜
ーー 今回最後の目的地 東国(アズマコク)
アイアン王国を出ると僕らは東に向かった。
最終目的地である東国(アズマコク)に向かうためだ。
良くラベノで読んだんだが必ずと言っても良いほど日本に良く似た国が出るよね、アズマコクだよいかにもだよね。
僕はウキウキする気持ちを抑えながら
「米、味噌、醤油・・・何があるかな」
と独り言を声に出していた、するとエストレーナが
「米は分かりますがミソ?ショウシュ?とは何ですか?」
と聞きかえしたので慌てて
「何でもないさ、僕の望みを口にしただけだよ」
と誤魔化した。
この辺りから東国だと思う辺りから風景と気候が変わってきた。
雨が降り出して止まない上、道はぬかるみ蒸し蒸しした気候は不快指数がかなり高そうだ。従者を見ると流れる汗が止まらないようでバテ美味な感じがしたので、
「ここらで一度休憩しようか」
と声をかけ馬車を止めさせた。
日本で言えば季節は夏から秋くらいの気候で本来なら過ごしやすくなる頃だ、しかしここは非常に蒸し暑いのだ。
遠くを見ると水浸しの水田が見える。
稲も日照不足か実入がなく不作のように見えるがよく分からない。
本当なら田んぼからも水を抜く事時期だと思うがこの世界ではどうかわからない。
どんよりとした空にシトシトと降る雨、全くスッキリしない。
「日本の夏に似てるいるな。」
思わず声が出るが気にする者はいない。
ーー 村人発見
しばらく畦道のような道を進むと、遠くに村人らしき人影が見えて来た。
馬車でゆっくりと近づくと僕は傘を被った男性に声をかけたが、驚いたことに男の服はまるで着物だった。
「こんにちは、少しお伺いしたい事がるのですが宜しいですか?」
と、すると振り返った男の頭に丁髷のような物が。
「ん?なんだおめえ、子供がそんな立派な馬車乗って。何処ぞの国の貴族様かえ。」
と僕の事を怪しむような仕草で見ると
「何が聞きてえだ?オラがわかるのはこの辺のことだけだべ。」
と答えたので、僕は
「僕らは教会関係者で旅をしている者です。東国に向かっているのですがこの道であっていますか?」
とさらに尋ねると男は、
「教会の人かね、都ならこの道をまっすぐ行くと突き当たるからそこから右に行けば4・5日でつくべ。」
と答えてくれた。
男にお礼を言い先を急ぐと、男の言う突き当たりが見えて来てそこから道幅が広くなった。
ーー 都への道すがら
メインの街道と思われる未舗装の道を馬車で進むと、数キロ間隔で休憩所のようなものが置かれてあった。
それは、牛馬の水飲み場であったり、軽食を振る舞う出店であったりいかにもテレビで見た時代劇さながらの風景であった。
茶屋と書かれた暖簾の出店横に馬車を止めた。
皆物珍しそうに店の中やメニューを眺めていたが僕が
「団子とお茶をもらおうかな」
と言うと皆同じものでと答え、結局5人前を注文した。
出てきた団子とお茶を覗き込みながらエストレーナが
「この茶色い者は食べ物ですか?この緑の物は飲み物で?」
と不安な声で尋ねてきたので、
「甘い団子と緑茶という飲み物だよ、団子は串を持ってこう。お茶は熱いから気をつけて飲んでね」
と言いながら団子を頬張りながらお茶で流し込むと、久しぶりの感覚が心地よい。
皆甘い団子や渋味のあるお茶に「おー、」とか「へー」とか言いながら食べると、
「意外とこの取り合わせは良いですね」
とガルフが感心していた。
夕方頃になり少し大きめの街が見え始め、そこを今日の宿泊にと決め街に入ると宿を探した。
僕は、宿屋の看板を直ぐに見つけ
「あそこのようだね」
と指差すと
エストレーナが
「使徒様、よくお分かりになりますね。き来たことでもあったんですか?」
と聞いてきたが、僕は
「初めてだよ」
と否定した。
宿は木造3階建てで、畳敷の造りだったため、皆が土足で上がろうとして注意されたのはお決まりの話。
二人部屋が一つに四人部屋が一つしか空いていなかったため、部屋割りは僕とエストレーナが二人部屋に入った。
「ベットも無く床に寝ろとは、ここは安宿なのでしょうか?」
というエストレーナに僕は
「違うと思うよ、地域性じゃないかな。この畳という床も寝心地良さそうだし」
と言いながら僕はゴロゴロと畳の上で転がってみせた。
「絶対ここには転生者が居たか住んでいるね」
僕は確信を持ったが知らないふりをしながら旅を続けることにした。
ーー 都(王都)が見えてきた
そのまま何事もなく旅を続け遠くに大きな街が見え始めた。
ここまでの間、変わった事と言えば、
・水田の水が抜かれておらず、稲の生育も悪い感じがした。
・湿度が非常に高く、人々も疲れているような感じがした。
くらいで、地域性かとも思ったためそこまで気にしていなかった。
ただ、通ってきた道以外は外に出る街道がないようで、その理由はこの国を取り囲むような高い山または崖が理由のようだ。
よく見るとここは盆地のような形をしておりそのために夏は暑く冬は寒いかもしれない。
都の入り口には関所のようなものが設置されていて、出てゆくものに対しては詳しく調べていたが、入る者については素通りに近い感じがした。
「映画村みたいだな」
思わずそう感想を呟くと、エストレーナが「?。」不審な顔を見せた。
宿を決め街中を見て回ることにした、エストレーナと二人で歩いていると遠くに赤い鳥居が見えた。
「あそこに行って良いかい」
と声をかけると
「何処へども」
と答えついてきたエストレーナを連れて、鳥居を目指して歩くと丁度何かの模様しものが行われていた。
狐面を被った男女が赤い提灯を持って行列を作っている。
「狐の嫁入りみたいだな」
と僕が呟くと、その言葉を拾った出店のおじさんが
「あんちゃん、嫁入りを知っているのかね」
と聞いてきたので
「昔人に聞いたことがあったんで、この辺のお話でしたか?」
と聞けば
「おおそうよ、初代の将軍さんが伝えたと言う伝説よ。」
と嬉しそうに答えた。
「将軍!・・・当たりだね」
ーー 都が抱える問題それは
鳥居の先は神社の様な建物で、中に入るとこの世界の女神(創造神)と狐が祀ってあった。
お賽銭箱の様な物にお金を投げ入れ、柏手を叩いて拝む様だ。
街中を行き交う人々の格好は、着物と丁髷に靴という出立で不思議な雰囲気を纏っていた。
露天のオヤジに話を聞いて回ると、
「今年は雨ばかりの天候で田圃の稲の生育が悪く、凶作だろう」
ということだった、理由は
「都の反対側に大きな湖がありそこに住む水竜が問題だそうだが、オヤジは知らない」
と言っていた。
その後は懐かしい日本食の様な料理を摘みながら酒を飲んだがかなり美味かった。
酒を飲んで問題ないのかって、この世界では15歳からは大人だよ。
ーー 将軍に会いました
次の日は将軍のお城、を見学に向かいました。
女神教を信仰していることが昨日分かったので、教会関係者の印を持って訪れると、直ぐに中に入れてくれた。
中に入ると日本のお城と見間違う様な作りで、石と木造建築の技術の結晶の様な見事な城でした。
何階に上がったかよくわからないまま、部屋に案内され待つことしばし。
襖を開けて入ってきた人物は西洋人がバカ殿を真似た様な格好で、思わず吹き出しそうになったのは内緒です。
「その方らがはるばるやって来た教会の者か?」
バカ殿様(将軍)が尋ねる、僕は
「はい、センターターク王国から皇教様の命で各国を回っておる者です」
と答えると
「その目的は?」
とさらに聞かれたので、
「僕の手が届く範囲で民の苦労を少しでも和らげることが出来るなら、どうにかしたいと思い旅をしております。」
と答えると
「お主の手が・・・か、分かった。その手を少しばかり貸してもらおうか。」
と言うと
バカ殿様は、困りごとの元凶の話してくれた。
「この国に大きな湖がある、そこのは初代様がいた頃以前から生きておられる水竜様が住んでいる。
最近その湖が濁り水竜様の機嫌が悪いため、雨が続き穀物の生育が悪い年が続いて困っている。
水竜様は力比べが大好きで話を聞くのも力比べで勝たなければならずその為誰も話をすることができないでいるそうだ。
どうにかできるか?」
当内容でした、僕は
「取り敢えず、会って来ます。」
と答え城を下がった。
ーー 水竜様との会合
次の日、エストレーナを連れて湖に向かう。
水竜様に会うための台が設置されており、普段ならそこで話をする様だ。
その先に広い広場の様な岩の台がありあそこが力比べの場所の様だ。
僕は湖に向かい声をかける
「ここに住む水竜よ顔を出してくれぬか」
と、すると暫くして湖の真ん中から水竜が顔を出し、こちらに向かって泳いできた。
「お前が俺を呼んだのか?・・ん?・・お前あいつに似てるな」
と言うとさらに近づき、
「何様だ」
と聞いて来たので
「この湖が濁り水流様が機嫌が悪いため、作物が育たず困ってると聞いた。
本当の話し方、また対策を聞きたい」
と答えると、水竜は
「それなら先ず、力比べだ。あそこに来い」
と広場を指したので、歩いて向かうと水竜の姿が少しずつ小さくなり人の様な姿に変わった。
どうやら変化の力があり、人の姿で力比べする様だ。
「小さき者よ、相手はお前で良いのか?そこの者でも良いぞ。」
と言う水竜に僕は
「僕に勝てたら考えても良いかな」
と答えると牙を剥いて笑った水竜が
「面白い、勝つ気と言うのか」
と言うと広場の中央に立った、僕もそれに続く。
ーー 水竜との力比べ
僕は魔力を練り上げ身体強化を発動する、水竜は基本的に頑強で剛腕なので身体強化自体はしない。
水竜が走って来た体当たりをするつもりの様だ、僕も受け止めるつもりで正面から受け止める。
「ガン!!」
物凄い音が響き渡る、突風の様な風圧が噴き上がる、
「良いな、お前!」
水竜が殴りかかる、僕はそれをいなしながら蹴りを見舞う、
「ドーン」
重い音が響き、水竜の身体が数メーター下がる、直ぐに踏み込む僕のパンチを十字で受ける水竜。
「バキ!」
骨が砕ける様な音がなる!
蹴りで反撃し始める水竜、その蹴りを腕で受けながら蹴り返すと。
水竜の腹に減り込む、「うっ」くぐもった声が漏れる、その後も僕の蹴りやパンチを喰らうたびに、水竜は傷を負い次第に動きが悪くなる。
止めとばかり右アッパーを水竜の下顎に決めると
「ドン!」
と言う音と共に仰向けに倒れる水竜。
「おお、良い気持ちじゃ!」
大の字の状態で水竜がそう言いながら大きな声で笑う、僕は水竜の怪我を癒して、
「満足したかい」
と聞いてみたすると
「おお、久しぶりにこんな傷を負ったわ。スッキリした。」
と言うと立ち上がり、僕に頭を下げると
「主人殿には世話になった、俺でよければ手を貸そう」
と言うので
「この天候不良と、湖の濁りの件はどういうことだい」
と改めて聞くと
「水の濁りは、あの山から流れてくる毒が原因じゃな。なんか知らんが人が穴を掘っている様じゃ」
とある方向を指差しそう教えた
「天候は俺の気まぐれじゃ、良き相手がおらんもんでイライラしてのう、主人が時々相手してくれれば解決じゃ」
と言うので
「分かった、考えておこう」
と言うと水竜が
「早く濁りをどうかしてくれ、このままじゃ降る雨に混じって良いことない」
と教えてくれた、どうやらわざと毒の雨が降るのを防いでいた様だ。
ーー 山の中の人族、またお前たちか
水竜が教えた山に向かうと都側からは登る道がなかった、そこでライを呼び出しその背に乗って山を越えることにした。
山の頂上あたりで空堀をしている集団が目に入った、
「ん!鉱床を掘っているのはあの時の商人たちか?」
そお思いながら掘削現場に舞い降りる僕とエストレーナを見て、慌てる数人の商人の姿、
「おいお前ら、ここに来なさい」
僕は強い口調で呼びつける、震えながら僕の目に座る男らはあの時の商人に間違いなかった。
「また同じことをして、今度は水竜が怒っておるぞ、食われたいのか」
と威圧を込めて言うと
「とんでもないです、もうここから撤退します、命ばかりは・・・お許しください」
と言うので
「誰の許しでここを掘っているんだ?」
と聞けば
「東国の代官様で越後谷様です。」
と答えたので
「分かった、僕のこの仕事は、将軍からの依頼だ。よってここから立ち去れ、後は僕が処理しておくからすぐに職人を連れてゆけ!」
と言うと慌てて皆を連れて立ち去った。
その後僕は、浄化の魔法で毒の水を浄化し、土魔法で埋め戻すと硬化の魔法で周辺を固めた。
その後湖に戻り、水流を呼ぶと
「山は戻した、この水の浄化は僕がしたほうが良いか?」
と聞けば水竜は
「それには及びません、私が浄化しておきます。」
と言うと水に潜り姿を消した。
ーー 再度将軍と会う
将軍はすぐに面会に応じた、
「お主強いの、見ておったわ、あの水竜を負かすなど思ってもおらんかった。」
と上機嫌でその後水竜はなんと言ったのか知りたそうだったので、
「その前にひとつ教えてください、あの山の上を掘っている様ですがどなたが何のために掘っておるのですか?」
と聞くと、将軍はそばの男に目き出せするとその男が
「恐れながら、あの山には良き鉄鉱石が掘れると、あの辺りを管轄する越後谷代官が掘っていると記憶しております。」
と答えるのを聞き僕は
「実は、あの山の掘り出した穴に有毒な水が溜まっており、それが湖に流れ込んでいた様です、水竜様はそれがここの民に降り注がない様にこの様な天候にしていた様です」
と説明すると将軍は
「なんと、それは真か。すぐにやめさせなければ。」
と慌てるのでそれを手で制し
「それについてはもう手を打ち大丈夫です。湖の濁りも水竜が解決すると言っていたので大丈夫でしょう。」
と伝えると、ホッとしていた。
僕はその日から10日ほど都に滞在していたが、日毎に水が綺麗になり、今ではとてもスッキリした状態で、天候自体も秋晴れのカラッとした晴れの日が続き始め、稲などの穀物が異常な速さで成長し大きく実り出した。
これも水竜の力なんだろうと僕は納得し旅を続けることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます