黒蠟濡の森
泥船太子
事件
第1話 プロローグ
城塞都市『ニエルティ』は比較的治安が良く、凶悪な事件などは滅多に起きない。
最近のもので言えば、貴族の令嬢が強姦された事件と木こりが失踪した事件が市民に注目されたが、これはとても稀な事だ。
ちなみに、木こりの失踪などはほんの五日ほど前の出来事で、ちょうど都市の役人と衛兵が協力して捜索に乗り出そうとしていた。
だが、捜索が行われる前にさらに別の事件が起き、その後なぜか失踪事件に関してはうやむやになって捜索は打ち切られた。
それで、別の事件とは一体何か?
裁判院の役人『トーテンタス』が殺害されのだ。
司法局の捜査官の調べによると、深夜の『執政区』で何者かに背後から襲われたらしい。死因は頸部を刃物で切り裂かれたことによるもの。
トーテンタスの家族や親しい友人に聞いても、他人から恨まれるような心当たりは無く、ただただ驚き悲しむばかり。直近で誰かと諍いを起こしていたという事も無く、犯人の動機は不明。
担当捜査官や衛兵達の努力も虚しく、犯人が見つかることは無かった。
ただ、こんな証言があった。
夜の見回りをしていた衛兵二人が言うには。
「毎晩のように広場を通って城門へ歩いていく人物がいた」
「その人物は貴族の令嬢だったように見えた」
余談だが、この衛兵二人は後に別の都市に左遷されたらしい。
一向に犯人の手がかりが掴めぬまま数日が経ち、都市では再び事件が起ころうとしていた……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます