第28話 プレゼントドラゴン
緩やかな昼下がりの午後の日差しの中、僕は癒しを求めてアンジェリカのおっぱいをもみもみと揉む。揉まなきゃやってられない!僕は、アンジェリカの両胸に抱きつくようにして両手でおっぱいを揉み、顔をアンジェリカの胸の間に埋める。
「ルー、ちょっと痛いです……」
見上げると、アンジェリカが困ったような表情で僕を見ていた。
「クーン……」
僕は“ごめんなさい”と鳴き、優しく労わるようにアンジェリカのおっぱいを撫でる。
普段ならアンジェリカが痛がるようなマネは絶対にしないのに……今の僕は少し冷静さを欠いているようだ。それもそのはず。今の僕は冷静じゃないと自分でも分かっている。
僕の心を掻き乱している物。それは1時間ほど前に唐突にやって来た。
◇
「ご歓談中失礼します。ルー様、姫様、アンブロジーニ宰相閣下がお見えになるそうです」
お昼ご飯も終わり、アンジェリカと一緒にお茶を楽しんでいたら、メイド長のマリアがやって来て言った。アンブロジーニって、たしかアンジェリカにガチ恋疑惑のあるおじさまだよな?アンジェリカに会いに来たのかな?
「まあ。宰相が?いったい何用でしょう?」
「それが、ルー様に御用があるようで。姫様にも臨席していただきたいとのことです」
アンジェリカにご機嫌伺いに来たのかと思ったら、どうやら宰相は僕に用があるらしい。いったい何の用だろう?正直言えば、この時点で少し嫌な予感がした。
「ルー、どうしますか?宰相に会いますか?」
「クー…」
会わないとは言えず、渋々頷いてしまう僕。アンジェリカに抱っこされて応接間に向かうと、宰相はもう応接間で待っていた。
「お待たせしました。アンブロジーニ宰相」
「いえいえ。ルー様、アンジェリカ殿下、お呼び立てしてしまい、失礼しました」
ソファーに座っていた宰相がわざわざ立ち上がって軽く礼をする。相変わらず腰の低い人だ。物腰が柔らかい。今も柔和な笑顔で僕とアンジェリカを見ている。
この人はこう見えても侯爵様で宰相様だ。すごい偉い人のはずなんだけど……そんな偉い人に様付けで呼ばれるなんて、僕の小市民魂は逆に震え上がってしまう。
「今日は、ルー様に贈り物を届けに参上致しました」
「まあ。ルーに贈り物を?」
「クー…?」
日本だと総理大臣クラスの人が、わざわざ自分で届ける贈り物って何だよ?僕の心はもう戦々恐々だ。
「まずはこちらをご覧ください」
宰相がそう言うと、宰相の後ろに控えていた女の人が大きく平たい箱をテーブルに置いた。まるでアニメや漫画の世界で見る宝箱のような、赤地に金や宝石で装飾された、いかにも高価な物が入ってますという箱だ。ヤバイ。この時点でもうヤバイ。
「気に入っていただける良いのですが……」
宰相が箱の蓋を開けると、中には見事な金細工や銀細工が整然と並んでいた。もう一目で高価と分かった。だって大きな宝石まであしらった物まで並んでいる。
「まあ!」
アンジェリカも思わず歓声を上げてしまうレベルだ。僕?僕はもう放心状態だよ。
「どれも素晴らしい細工ですね。ルーのネックレスですか?」
「はい。ルー様の詳細なサイズが分からなかったため今回はこのような形に……。問題があるようでしたら調節致しますが……そのためにはルー様の採寸が必要でして……お許し願えますか?」
「ルーはどうしますか?採寸しますか?」
僕は唯々諾々と頷くことしかできなかった。
「失礼します」
宰相の後ろに控えていた女の人が僕の体を採寸していく。首回りや手足、尻尾に至るまでメジャーで計られていく。僕はされるがままだ。
アンジェリカは、箱の中から1つのネックレスを取り出すと、僕の首に着ける。黄金に輝く蜘蛛の巣を半分にしたような形をした物だ。
「よく似合ってますよ。良かったですね、ルー。こんな素敵な物を贈ってもらえるなんて、羨ましいほどです」
「クークー!」
僕は“羨ましいならあげるよ”と、ネックレスを外すとアンジェリカに差し出す。こんな高価な物、畏れ多くて貰えない。アンジェリカには小さいネックレスだけど、調節してくれるらしいし、このままブレスレットとして使ってもいい。それに、こういう物は、お姫様であるアンジェリカにこそ相応しいという思いもあった。
アンジェリカはそんな僕を見て、困った様な表情を浮かべる。
「羨ましいなんて言ってしまったからかしら……。ルー、その気持ちはありがたいですけど、受け取ることはできません」
「ルー?」
「それは宰相があなたにと贈った物です。少なくとも1度は自分で身に着けなければなりません。人に贈るのはその後になります」
この国では、お裾分けにもルールがあるらしい。でも、たしかに言われてみればその通りだなと思った。僕の行動は、この国ではマナー違反だったようだ。しかも、それを贈った本人である宰相の前でやっちゃうんだから僕の気の動転具合が分かる。
自分の贈った物を即、他の人に贈ろうとしたらあまり良い気はしないだろう。恐る恐る宰相の顔色を確認すると、ニコニコの笑顔だった。逆に怖い。
その宰相が口を開く。
「実は、贈り物は他にもあるのです」
まだあるの!?
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