狩人



「ちゃんちゃん焼き、食べてみたいです!」


 彰はつくねが投稿した写真記事にコメントした。つくねからは、「ちょうど今食べていますので、食べかけでよければおもちさんのお家に送りますね〜!」と、冗談が帰ってくるくらいに二人は打ち解けていた。つくねがこの記事を投稿したとき、ちょうど彰も新しいエッセイを投稿していた。彰と紗椰が、二人揃って不器用であることのエピソードだった。

 

 彰にはちょっとした収集癖があった。読んだ本やDVDを、たとえ後から見返さない物であってもある種のライフログとして彰はそのまま保管している。そうすると必然的に部屋の中は徐々にスペースが無くなっていき、整理が下手な彰にはどうにもできなくなってくる。

 紗椰は綺麗好きで部屋の掃除はするが、紗椰もまた整理は苦手であり、この二人が同じ屋根の下で暮らすと部屋が散らかるのである。


 多才なだけでなく物知りなつくねは、彰に整理に関するいくつかのアドバイスをコメントした。


「あと、本当に要らないものはリサイクルショップに売ってみてはどうでしょう?」


 リサイクルショップの存在は知っていたが、仮に本を売るとなると、一冊が数円から数十円程度だという。あまり乗り気にはならなかったが、仕事をしていない今だからこそ出来ることかもしれないと思い、紗椰に聞いてみた。


「少しでもお金になるんならええんちゃう? 良い機会やし、片付けのつもりでやってみようよ」


 そうして家の中にある要らないもの、尚且つ売れそうなものを集めてみた。古いゲームソフトや洋服等、掘り起こしてみると本当に沢山要らないものを溜め込んでいたのだと二人して呆れてしまった。

 大した金額にはならないだろうと期待はせずに、無料で物を捨てられるくらいの気持ちでリサイクルショップにそれらを持ち込んでみたら、意外にも高値で売れたものがあり、五千円程の小金を手に入れることができた。


 その日から、次なる小金を生成しようと企む紗椰の鋭い眼光が、彰のコレクションが並ぶ本棚に向けられる毎日が始まった。

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