MJ、日本へ


 MJの故郷はフィリピンで、現在はシンガポールの企業に就職し年上のルームメイトと共に暮らしている。

 フィリピンでは主要な公用語としてタガログ語と英語があり、シンガポールで暮らすMJは英語を常用していた。SNS上ではMJが日本語を、彰が英語を学びたいという条件が結び付き、二人がお互いの先生であり生徒である関係となった。二人はSNSの翻訳機能を使い、時には真面目にお互いの言語について教え合いながら(それがこのSNSの本来の使い方であるが)、メッセージのやり取りを楽しんだ。


 MJは日本の文化に興味を持っていて、彰に日本のことを沢山聞いた。彰はフィリピン出身のボクサーについて熱く語ろうとしたが、MJにとってそれはどうでもよく、彼女の日本愛にただただ圧倒された。日本のアニメについて語る彼女は特に楽しそうで、日本人である彰も知らないような作品もMJはよく知っていた。

 お互いの仕事についてもよく話した。待遇面の不満や上司の愚痴など、文化に違いはあれど似たようなストレスを抱えているのだと彰は妙に感心した。


 メッセージのやり取りをするようになって二ヶ月ほど経ったある日、MJは一ヶ月後に日本へ旅行する計画があると言った。大阪にも来ると言うので、彰達は会う約束をした。MJから大阪を案内してほしいと言われ、英語が話せない彰は自信がないことを伝えると、MJはこう答えた。


「大丈夫! 大阪にはもう一人友達がいるから。彼女に通訳をしてもらえばいいよ」


 

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