三、極上の生贄⑥
翌朝、目覚めたシェルは昨日のようにゼールの部屋へと向かった。自分が『極上の生贄』であることも、シェルはしっかりと覚えていたのだ。しかし部屋には人の気配が全くしなかった。
(まだ寝てる……?)
そんなことを考えていると、大きな部屋の扉が開いた。振り返ったシェルの前に整った顔立ちのゼール王子とその
「おはようございます」
「……、あぁ」
シェルの挨拶にもまともに返事をしないゼールは、良く見たら疲れているようにも感じられる。シェルは不思議そうにフォイの方を見た。フォイはそれほど疲れているようには見られない。一体二人に何があったというのだろうか?
シェルが疑問に思っていると、
「旅立ちは夕刻だ。俺はそれまで寝る」
ゼールはそれだけをシェルに伝えると、シェルの返事を待たずに奥の寝室へと姿を消していった。
「ゼール様、どうされたのですか?」
シェルは残っていたフォイに思わず尋ねた。フォイはシェルへと向き直ると、
「一晩中、南の町でならず者たちを捕まえていたのですよ」
ゼールは昨夜、シェルが襲われた辺りで人身売買をしていた組織の人間を見つけ出し、捕まえていたのだ。そしてその後、人身売買のルートについて拷問を行い、旅立ちに必要な情報を集めていたと言う訳だ。
「ヤツらは西の都にある港町で、さらった人間たちを闇市で売りさばいていたようです」
その後、船で獣人国のあちらこちらに人間たちを流していたのだと言う。
「シェル様には西の都への同行をお願い致します。そして、いつゼール王子のレイガーが発動しても対処できるよう、ご準備を」
「分かりました」
フォイから話を聞いたシェルは一度自室に戻り、旅支度をすることにした。それからなるべく、王子の傍にいようと改めて思うのだった。
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