第76話 サリア教皇救出戦 竜神VS怨嗟

シラユキは所変わって地底湖へと出た。


「随分と広い場所に出たものじゃ。怪しい箇所と言えば、そこの湖くらいなものじゃがのう。」


地底湖へと近づいていくシラユキ。すると、湖から触手が現われ、襲いかかってくる。


「うぉ!?竜鳴八卦!」


迫り来る触手を金棒で振り払う。さらに追い打ちとして、


「<雷光>。」


湖に雷を落とし、全体に稲妻が迸った。


「グオオオオッ!」


湖の水位が上がり、巨大な生物がその姿を現した。


「俺の名は怨嗟のゴーア。お前、美しい羽毛を持っているな。」


ゴーアは六眼の頭部、顎髭のように触手を無数に生やし、巨大な鉤爪のある手足をしていた。そんなゴーアがシラユキの尻尾の毛並みを見て、次第に妬みを募らせていく。


「妬ましいな、妬ましいな、死んでくれねぇかなぁ!そりゃあもう醜い死に方でよ!生きたままその毛を毟って剥製にしてそれからなぁぁぁ!」


触手が次々とシラユキに襲いかかる。それは、シラユキの周りを取り囲んでいった。


「最上級竜魔法<竜巻>。」


風による高速な渦巻き状の上昇気流を発生させることで、触手から身を守るシラユキ。彼女は更にそこに追い打ちを掛ける。


「<爪撃:鎌鼬かまいたち>。」


360度に斬撃を繰り出し、ゴーアの触手を切断していく。


「ノォアアア!俺の触手があァァァ。あ、あァァァんまりだァァアァ!」


ゴーアは自分の象徴と自負していた触手がカットされ、某柱の男のように号泣する。そして、


「フゥ、スッとしたZE☆!俺はヴァニタやラペシュに比べると荒っぽい性格でな!激高して怨嗟がピークになった時は泣きわめいて頭を冷静にするようにしているんだ!」


落ち着いた。


(な、何て不気味なやつなのじゃ...)


シラユキはゴーアの変化に対し、心の中でそう思った。すると、ゴーアの触手が段々と延び、再生していく。


「フィィィ。ちゃんと元通りになったけどなぁ。けどなぁ、本当に痛かったんだぜぇ!ふざけるなよなぁ!!なぁぁぁ!!許せねぇなぁぁ!!」


ゴーアは再生した触手の先端から水の弾丸を作っていき、


「<ウォータ・ビーハイブ>。」


一斉にシラユキの所へと襲いかかった。


「ふ。一瞬で消し去ってくれるわ。カァァァ。<ホワイトゴッドブレス>。」


これに対し、シラユキは白炎のブレスで、水の弾丸ごとゴーアに命中させる。


「妙じゃ。ゴーアに当たった時、水蒸気を発生させよった。彼奴の身体は水なのかえ?」


「ああ、その通りだ。俺は元々ウォータスライムだったぁ。そんな俺の所に、ラペシュがやって来たんだ。」


『どうした?どうした?可愛そうに。俺は優しいから放っておけないぜ!その命、間もなく狩られるだろう!そうだ!レベル増強剤をやるよ!お前にもだ!あの御方に認められれば、神になれる!命というのは尊いものだ。大切にしなければ!さぁ、お前は神となり、他の奴らのように俺の直属の配下、厄神様の加護を得られるかな?』


「そして今や俺は怨嗟を司る神へとなったんだ。最弱とは呼ばせねぇ。狩る者達に狩られる者の怨嗟を思い知らせる。それが、怨嗟のゴーアなんだからなあああ!」


そう言い、触手を今度は一つにまとめ、水の槍を形成するゴーア。だが、本物の神であるシラユキは断言する。


「残念じゃが、神とは、レベル90以上になりかつ全能神様が認可せねば名乗ることも許されぬもの。今のお主は到底、全能神様に認めて貰えぬし、その時点で神でも何でもないのう。」


シラユキは特別試合に見せた半竜化状態に移行する。


「ほざけ。<レベル倍化>。」


これに対応し、ゴーアも変身レベルアップする。身体は赤黒くなり、身体からは蒸気が噴き出し、水の槍は水色から黒色へと変化していく。


「ふん。<竜鳴六十四卦>。」


金棒に<ホワイトゴッドブレス>を纏わせる。シラユキVSゴーア。風水を司りし者VS怨嗟を司りし者。火の金棒VS水の槍。その戦いが今、始まる。


「ウオオオ!オレノエンサヲクラウガヨイ!<グラッジ・スピア>!」


「<先天五十・閻魔・火風帝>!」


黒水の槍と白炎の金棒が衝突し、その間で水蒸気が発生する。


「オレハ、サイジャクジャナイ。サイジャクジャナインダァァァー!」


ゴーアは黒色のオーラを更に槍に込めて、威力を上げる。


「粘るのお。じゃが、<剛力>。」


しかし、シラユキは余裕の顔で槍を押し返し、ゴーアの顔を金棒で蒸発させる。


「ダガ、オレハナンドデモヨミガエルサ!」


「分かっておるわ。お主が元々スライムならばあるじゃろう?核というものが!」


シラユキは地面に着地すると、今度は更に<雷光>もプラスして地底湖の方へと走り出す。


「グ...チカヅケハ...サセン!」


地底湖から水柱が上がり、シラユキに襲いかかるが、全てかわす。そして、


「<竜鳴六十四卦:先天五十五・鳴神・雷火砲>。」


天から白炎と雷を纏った金棒を地底湖に叩きつけると、蒸発。みるみるうちに水位が下がり、底にある赤黒い核へと辿り着く。


「これで、チェックメイトじゃ。」


核に渾身の一撃を放つと、それは粉々に砕かれていき、


「バ...バナ...ナ...。」


ゴーアは身体を保てなくなり、消えた。


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