翠佳

旅の始まり

「旅」とは一体なんなのだろうか。


 家から何km離れたら、とか何日家に帰らなかったら、とかいう具体的なものはあるのだろうか。勿論、辞書に答えを求めたものの、初めから哲学的に考えていた私にはつまらないものだった。読者諸賢にもここで一度あの重みを感じながら調べてみて欲しい。各々の思う「旅」はそこにあっただろうか。


「大学生になったら遊び放題だね」


 なんて祖父母や近所の人は言っていたが、いざ大学生になってみるとお金がない。至極単純なことであったものの、甘い言葉を目にすると人というのは視野が狭まるらしい。バイトをすればいい話ではある。そう思って1年生の頃に始めてみたが、自分には向いていないと思い知らされた。


 別に遅刻常習犯や皿を永遠に割ったり、オーダーミスを多発したり、なんてしていたわけではない。店長からすればただただ仕事をこなすバイト、といった印象だったと思う。しかし、働いている私はというと暇で暇で仕方がなかった。働いていると言っても、ダミー人形でも置こうかと思うくらいの静かなホールをひたすらと眺め、掃除の時間になれば道具を持って綺麗にするだけ。元からある程度綺麗なのだが。

 そうかと思えば祭りなどで超人気チェーン店のように人がごった返す時には、働き甲斐を多少は感じつつも、「過労死しそうだ」と一刻も早く帰りたいと願うばかりであった。それを何回か過ごすうちに気づいた。「ちょうどいい忙しさ」を求めているのではない。そもそも「働きたくない」のだと。

 結果、遊ぶならゲームでもいいじゃないかと家の中で友人とゲームをし続け、遊び放題を叶えてきた。そうして気づけば3年生。あと1年もすれば卒業だ。


 とにかくそう考え始めるとなんだか焦燥感が湧き出てきた。そこで大学生らしく旅を、と思ったわけである。


 前置きが長くなってしまったが、ここからが私の旅を綴る本編だ。恐らくこれを誰かに読ませることもないだろうから、この稚拙な文と内容に辱しめを受けるのは暇の極致で思い出を振り返ろうとした自分くらい。いや、それと今この字を追いかけている読者諸賢であろう。あなたの思う「旅」を考えながら読んでもらえると面白いかもしれない。

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