第2話 蒼玉の噂を調査せよ!
昨晩の、アクシオとの出会いの翌日のこと。エピカとストノスは、探偵アクシオのことを話していた。
「昨日は危なかったわね……。まさか探偵がいるなんて。」
「本当だよ……。お前が来なかったらヤバかった……。ありがとな。」
「フフッ、もっと感謝してもいいのよ?」
エピカは得意げな顔をする。
「はいはい……。」
「でも、彼……。追いかけて来なかったわよね。足でも捻ったのかしら……?」
(いやいや、そんな感じじゃなかったと思うが……。)
ストノスは心の中で呟く。
「まあ、何にせよ。しばらくは、大人しくしておくしかないか……。」
「ええ……。」
「そうだ!今日は、街に行ってみないか?何か情報が得られるかもしれないし……。」
「ええ、行きましょ!」
二人は、街へ『探偵アクシオ』の情報を探りに行くことにした。
***
「探偵って、普段は何してるんだろうな。」
「迷子探しとかじゃない?」
「そうなると、誰に聞けばいいんだ……?」
「さぁ……?あっ!あの人なんか、どう?ほら、そこのパン屋の店員さん!」
「ああ!なるほど!」
二人はそのパン屋に入っていく。
「こんにちは!ちょっと聞きたいことがあるんだけど……。」
「はい!なんでしょう!」
「突然すみません、『探偵アクシオ』ってご存知ですか……?」
エピカが尋ねると、店員は「あぁ!」という顔をした。
「『名探偵アクシオ』のことかい?彼は、この辺りでは有名人だよ!」
「『名探偵アクシオ』……!?」
二人は驚く。
「彼は、この街の事件を解決してくれているんだよ!本当に助かっているんだ!」
「そ、その……!詳しく聞かせてもらえないでしょうか!?」
「もちろん、いいよ!中へ来るといい。」
「ありがとうございます!!」
***
エピカとストノスは、店員に勧められたパンを買って、食べながら話を聞いた。
「……それで、その探偵さんはどういった事件を解決しているんですか?」
「彼は、行方不明者の捜索から、殺人事件まで、幅広く解決してくれるんだよ!」
「すごいですね……。」
「それに、彼、とても強いらしいよ!どんな犯人にも負けないとか。」
「へぇ~……。」
「若いのに、たいしたもんだよ。確か、高校生の頃から活躍してるんじゃなかったかな。」
「「高校!?」」
二人の声が重なる。
「うん。そうだけど……。どうかしたのかい?」
「いえ……。なんでもありません……。」
エピカとストノスは、顔を見合わせる。
((そんなに前から活動していたのか……!!))
「今や、彼に解決できない事件はない なんて言われているくらいさ。」
「そうなんですね……。ありがとうございました!パン、美味しかったです!」
「ありがとうございました。」
「いやいや、こちらこそ。ぜひまた来てくれ!」
二人は、店員にお礼を言って店を出た。
***
「『彼に解決できない事件はない』、か……。これはマズいことになったんじゃないか……?」
ストノスは、深刻そうな顔をしている。
「えっ、どうして?確かに凄いけど、私達には関係ないでしょ……?」
エピカは不思議そうだ。
「お前なぁ……。いくら俺達が怪盗だからって、警察に目をつけられたら終わりだぞ……。」
「大丈夫よ!あのカラコンがあれば、私たちの正体がバレることはないわ!」
「そうだといいんだが……。まぁ、心配しすぎなのか……。」
「それより、早く行きましょうよ!」
「はいはい……。」
***
エピカとストノスは、街の中心にある噴水広場に着いた。
「ここなら、色んな人がいて情報が集まりそうだわ!」
「そうだな……。早速聞いてみるか。」
「ええ!」
二人は、街の人に話しかけることにした。
「すみません!『名探偵アクシオ』について聞きたいことがあるんですが……。」
エピカは、近くの主婦に声をかける。
「あら!あなたたち、アクシオのファンなの?いいわねぇ!」
「ファン……?まぁ、そんな感じです……。」
(ファンがいるのか……。)
ストノスは心の中で呟く。
「私は、彼の活躍を見るために、よくこの噴水広場に来ているのよ!」
「そうなんですか!彼は、よくここに来るんですか……?」
「ええ。この近くに探偵事務所があって、手帳を見ながらここのベンチに座っているのよ。」
その主婦は、嬉々として語る。
(げっ、この近くに事務所があるのかよ!)
ストノスは少し動揺しているが、エピカは冷静だった。
「お話、ありがとうございます!私たちはこれで失礼しますね。」
二人はその場を離れると、小声で話し始めた。
「ストノス、探偵事務所に行ってみるわよ。」
「……!?マジかよ!話聞いてなかったのか?やめといた方がいいって!!」
ストノスは焦っている。
「大丈夫よ!今は『エピカ』と『ストノス』なんだから!」
「でもよぉ……。」
「それに、このままじゃ何も始まらないでしょ?」
「……わかった。行くか!」
「ええ!」
二人は、探偵事務所に向かった。
***
探偵事務所に向かった二人だったが、そこには誰もいなかった。
(エピカには悪いけど、助かった……。)
ストノスは内心ホッとしていた。
「いなかったわね……。依頼にでも行っているのかしら?」
「……まぁ、そんなところじゃないか?それより、もう帰ろうぜ……。」
「そうね……。本人から話が聞ければ良かったのだけれど、仕方ないわ。」
二人が帰ろうとした時、事務所に一人の男がやって来た。
「あれっ、もしかして、アクシオいない?」
彼は、エピカたちの姿を見て声をかけた。どうやら、彼もアクシオに用事があったようだ。
「はい……。いないみたいです。」
「そっか……。なんかすみません。……あいつ、この時間は事務所にいるはずなんだけどな。」
ストノスは、彼の話を聞いていると、アクシオとは親しい間柄のように思えた。
「……アクシオさんの、お知り合いですか?」
「あぁ、はい。あいつとは高校の同級生で。」
((同級生!!))
エピカとストノスは、衝撃を受ける。
「そうだったんですね……。あの、アクシオさんのことを、お話していただいてもよろしいですか……?」
「……ん?君たち、あいつのファンなの?俺の知ってることで良ければ……。」
「ありがとうございます!ぜひお願いします!」
エピカは笑顔で答える。
「すみません、よろしくお願いします。」
ストノスも頭を下げる。
「いやいや、気にしないでください。俺の話は、たいしたことじゃないので……。」
彼は申し訳なさそうな顔をしている。
「いえ、それでも構いません!」
エピカは、真剣な表情だ。
「わかりました。……アクシオは、高校生時代から正義感の強い奴でね。何か困ったことがあればすぐに首を突っ込むようなタイプだったんですよ。」
彼は懐かしむように話す。
「へぇー!そうだったんですね!」
エピカは目を輝かせている。
「それでいて、勉強も出来て、運動神経が良くてスポーツ万能で……。まぁ、いわゆる完璧超人ってやつですよ。」
「な、なるほど……。」
「だから、あいつが『探偵になる』なんて言い出した時は、みんな驚いたよ。」
ストノスは黙っている。
「……でも、そんな完璧な人間にも弱点があってね。」
「えっ?何でしょうか……?」
「実は、恋愛に関しては超が付くほどの鈍感野郎でさ!クラスの女の子たちは色々とアピールしてたっていうのに、全然気がつかないんだ!……ほんっと、可哀想だよ。」
「そうなんですか……。」
(なんか、想像できるな……。)
ストノスは苦笑いをしている。
「まぁ、でも最近、どうも変っていうか……。」
「変?どういうところが……?」
「う~ん……。上手く言えないんだけど、雰囲気が変わったというか……。」
「具体的にはどんな感じなんですか……?」
「そうだなぁ……。前はもっと、自信満々って感じだったんだけど……。今は、なんだか悩んでいるように見えるんだよねぇ……。」
「「悩み……?」」
エピカとストノスは、同時に呟く。
「ああ。この前、『怪盗ガーネット』と『怪盗スクリーム』が現れたって事件があっただろう?」
(……っ!?もしや、バレてるんじゃ……。)
ストノスは焦る。
「はい……。ありましたね。」
「その時に、アクシオも現場にいたみたいなんですけど、捕まえられなかったみたいで……。あの後から、なんかおかしくなったというか……。」
「そうだったんですね……。」
「それに、アクシオのやつ、『絶対に捕まえてやる』って言ってたので……。」
((………っ!!))
彼の話を聞いて、二人はドキッとする。
「そ、そうなんですねぇ~……。あ、ありがとうございました……。」
「それでは、これで……。」
「もういいんですか?それじゃあ、気をつけて。」
二人はすぐさま彼と別れると、こそこそと話を始めた。
「……どうする?やっぱり、私たちの正体がばれているのかしら?」
「……わからない。だが、可能性は高いな。」
「……このままだと、まずいわよね?」
「あぁ、かなりマズイな……。」
「……なんとかしないとね。」
***
彼らがそんな話をしながら、帰っている頃。アクシオはというと……。
「……っ!ダメだ、あの時のことが頭から離れない……っ!」
彼は、噴水広場のベンチで一人頭を抱えていた。
『貴方、綺麗な瞳をしているわね。透き通るようなサファイアブルー……。』
『その瞳が原石だったら、私が盗み出したいくらいだわ。』
それは、怪盗ガーネットがアクシオに言った言葉だ。
彼は、今までこんな風に女性から褒められたことがなかったため、動揺していたのだ。
(いやいやいやいや!!あれはただの冗談だって!!)
アクシオは必死に自分に言い聞かせるが、彼女の顔と声を思い出すと、どうしても意識してしまう。
「……あぁ、クソッ!!どうしてこんなに胸が苦しいんだ……!!怪盗ガーネットめ……っ!!」
彼は、自分の気持ちがわからず悩んでいた。
彼が、その気持ちが恋だと気づくのは、もう少し先のことである……。
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