彼女を嫌いな理由を携える
俺を裏切った彼女に、俺は、別れの言葉を告げた。
容姿は俺の好みにピッタリ合っていて、体の相性もすこぶる合っていた彼女だったが、彼女は俺よりもイイ奴を見付けて乗り換えた。もしくは、最初から何股も掛けていて、俺をふるい落としたのだろう。
俺は、今回も、決定的な証拠をつかんで彼女に提示した。
彼女は、その証拠を前にしても「違う」と言ってのけ、その後、沈黙を貫いた。その沈黙の意味は「語るに落ちないように」と「あとは、貴方が決めなさい」というサインだ。
そんな彼女の態度に俺は打ちひしがれて、彼女に別れを切り出し、彼女はそれを受け入れるものの、後になって改心したようなことを言ってきては復縁するということを今まで何度か重ねてきた。
人を好きになる時に義理人情は不必要だが、人を嫌いになった時には、それまで付き合ってきた歴史や時間が義理人情を作り出して頭をもたげるのが普通だろう。
が、しかし、彼女はその点、普通ではない。人を好きになる時も、嫌いになった時も、その場の気持ちだけが大事であって、費やした歴史や時間もお金も惜しげもなく放棄するタイプだ。
しかし、今度という今度は、俺は彼女と別れる。
今度という今度は、彼女が何を言ってきたとしても俺は跳ねのける。復縁なんてありえない。馬鹿にするのもいい加減にしろ、だ。
そのためには、彼女の嫌いなところをきちんとまとめておくことが大切だ。
まずは、彼女は噓つきだ。 息を 吐くように嘘をつく、ところが嫌いだ。
それは、100%、自分を守るための嘘であり、俺を傷つけないようにする配慮なんてこれっぽっちもない嘘だ。
次に、彼女は自分のことしか喋らない、ところだ。
俺の話なんて「あ、そう」の返事で片付けて、自分に起こったことは、まくしたてるように話すのだ。しかも、面倒くさくなって生返事をしていると「ちゃんと、私の話、聞いてるの?」とチェックを入れてくる。ついでに、俺の話に間違いや曖昧なところがあると、睨みながら「〇〇じゃないの?」と言ってくるところも嫌いだ。
次に、仕事の様なセックス、だ。
自分がしてもらうことはNGが無いのに、俺がしてもらいたいことは全てお願いしないとしてくれない。まだ、それでも、良くなった方だ。つい最近までは、キスすら拒まれ続けた。
次に、支払いだ。
食事代から、ホテルの支払い、おやつに買うパン代から、自販機の飲み物まで全部、俺持ちだ。そして「ごちそうさま」「ありがとう」の言葉は一切ない。
次に、多過ぎるくしゃみ、だ。
音が相当でかいのに口を手でふさがないから、彼女がくしゃみをするたびに、俺はびっくりして心臓が止まりそうになる。
一日一緒に居た時に、数えてみたことがあるが、36回したところまで覚えているけれど、それ以上は数えるのをやめた。
次に…
いや、もうこれで十分だろう。
俺はそれらを携えて待ってるからな。今度という今度は全部ぶちかましてやる。
ん?待ってる?
待ってるのか?俺は?
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