SEXtasy(セクスタシー)

さら・むいみ

プロローグ

 

 それは、21世紀の中盤を過ぎた頃からだったろうか。


 人々の間で、ある「ブツ」のウワサが、まことしやかに囁かれるようになった。



「”それ”は、想像を絶するほどの快楽をもたらしてくれる」

「一度”それ”にハマったらもう抜けられない。”それ”の奴隷と化してしまう」

「”それ”のためなら何だってする。命すら捧げてもいいと思う。それくらい、危険なブツなんだ」



 そういったウワサは、制御も無く拡大し、情報を垂れ流していくばかりのネットクークで、たちまちのうちに「拡散」されていき。そして人々は、真偽の定かでない”それ”を追い求め、”それ”を探し当てることに、躍起になっていった。その流れを押し留めることは、もはや不可能だった。



 かつてない快楽をもたらしてくれる、禁断の麻薬。

SEXtasyセクスタシー】と呼ばれる、その「ブツ」のために。


 世界の秩序は、徐々に徐々に、崩壊へと向かっていた。


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