旅立ち

「リックこれを」

「これは?」


 アルテッサが下げていた顔をあげると、リックにチェーン付きのリングを手渡してきた。

 そのリングは見た目は指輪だが、どの指にもハマらなそうな小ささだった。


「これは、私を呼ぶためのリング……これがあれば、リック……あなたの場所も分かるから、肌身離さず持っていて」

「分かった」


 リックはリングを受け取るとチェーンが付いていたので、首にかける。


「これ、アビィは持っていないのか?」

「持ってるわよ……場所は言わずもだけど、何かあった時に呼んでもらうためにね……まぁ、使い魔だから何かあれば分かるんだけどね」

「そうなのか」


  リックはさっそくアルテッサに教えて貰った場所へと行こうとして、歩き出そうとした時、疑問に思ってる事を思い出した。


「あ……気になってたんだけど、聖域から俺をこっちに戻した時さ……すぐに俺の家に着いたのはなんでだ?」

「あぁ、あれね……あれは、行きたいと思った所に行けるのよ、あの時はあなたが無意識に自分の家を思ったから……あそこに出たんじゃないかしら」

「そうゆうことか……いきなり俺の家だったからびっくりしたよ……さて、行くとするか!」


 疑問も解決し、いよいよ出発しようとリックは歩き出す。


「あなただけが頼りよ、リック……お願いね」


 そう呟きながらアルテッサはリックの背中を見る。



 リックは出発する前に自分の家へと寄る。

 旅の準備を始めるためだ。

 お金、着替えなど旅に役にたちそうな物を最低限持ち、リュックに詰める。

 元々、あまり物が多く持ってなかったリックはほとんどの物がリュックへと仕舞われた。


「あ、あとこれもだな」


 リックが手にしたのは小さな小刀だった。

 これは亡くなった両親が守り刀として大事にしていたものだ。

 リックはその小刀を腰に引っ掛ける。

 そして……身支度が完了し、家を出る。


「行ってきます」


 この家に戻ってこれるか分からないが、リックは歩き出す。

 ここからはリックがアビィを救い出す為の旅路が始まるのだった。

 困難が待ち受けているかもしれない。

 もしかしたら、途中で呪いでリック自身何も感じなくなるかもしれない……。

 それでも、リックはアビィを助けたい一心で旅立つ。

 たとえ、どんな事が待っていようと……必ず助けると思いながら……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る