貴族の矜持
仲村 嘉高
プロローグ?
王立学園高等部。
基本は貴族が通う学園であるが、優秀な平民にも門扉が開かれている。
そしてその為に、建前では学園内は平等を謳っていた。
実際は平民が馴々しく貴族に話し掛けることは出来ないし、将来仕える事になるであろう高位貴族に下位貴族が逆らう事は無い。
勿論、高位貴族でも理不尽な事をすれば罰せられるのは、学園内といえども変わらない。
ただし、偶に、本当にごく稀にではあるが、何かを勘違いした生徒は入学する。
例えば、今、筆頭公爵家令嬢に文句を言っている男爵令嬢とか。
その隣で男爵令嬢の腰を抱いている侯爵子息とか。
男爵令嬢は、ほんの一月前までは平民だった。
元娼婦だった母親が亡くなった為、父親の男爵に引き取られたのだ。
母親は高級娼婦と一般娼婦の間のような立場で、身元の確かな男性向けの娼婦だった。
だが高級娼婦になれるほどの学はなく、最終的に男爵に囲われる事で娼婦を引退した。
妾にはなれず、あくまでも愛人であったが、母親が亡くなった事で男爵が妻に泣きついて令嬢を引き取っていた。
男爵家では貴族としての教育を受けたが、結局入学に間に合うほどの成果は出なかったようだ。
元々が、この学園に通う平民のように優秀なわけではない。
男爵令嬢になったから通うようになれた、中身は本来入学資格の無い平民なのだ。
貴族の常識がないから、立場による態度など守るはずもない。
高位貴族にも平気で話し掛け、触れる。
特に見目良い男子には必要以上に距離が近い。
それが実の母による教育だと知る者は、ここには誰も居ない。
もし男爵が見たら、令嬢の実母にそっくりな行動だと気付いたかもしれない。
そして学園に通わせるのを止めたかもしれない。
「かもしれない」は、絶対に起こる事がないのだ。
残念な事に。
そのせいで、学園存続の危機が訪れるなど、まだ誰も知らない。
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