第120話 いってらっしゃいのチューは?

 夫と些細なことで喧嘩して、家を出ることにした。荷物を詰め込み玄関まで行くが夫は止めない。

 私がドアノブに手をかけると「いってらっしゃいのチューは?」と幼い娘が夫に聞いた。

「いや、チューはないよ。ママは出かけないからね」

 振り返ると夫が「ごめんな」と頭を下げた。

 私こそごめんね。

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