第096話 はじめてだったのに。
桜の花びらを散らす風が、夜の公園を優しく吹き抜ける。空気の流れが見えた刹那、私は重力のしがらみから解放された。
花びらとともに風に乗り、少し肌寒い夜気に酔いを覚まされつつ、夜空を舞い踊る。
はじめてだったのに。こんなに上手く飛べた。
地上では師匠が笑みを浮かべ、私を見上げていた。
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